本 「アマテラスの誕生 -古代王権の源流を探る-」
けっこう目からウロコの内容でした。
日本の文化というのは、何度か大きな外国文化の流入というインパクトを受けています。
第二次世界大戦直後の主にアメリカ文化、明治維新の欧米文化、律令国家成立の頃の中国文化。
当時の日本からすれば先進的な文化を受け入れ、それを変質させて独自の文化にしていく。
一言に日本の文化と言っても多層構造なわけですよね。
本著はアマテラスが何故天皇の始祖という地位についたかということを、古代における外国文化の流入とそのときの政治状況を踏まえて解明しています。
アマテラスという神が天皇家の始祖となったのは、「日本書紀」「古事記」を読み解くと実は天武天皇の頃と考えられるようです。
それまではタカミムスヒという名の神であったということです。
このタカミムスヒという神はもともとは北方遊牧民族の考え方に由来するということです。
つまり弥生以降に一度大きな外国文化の流入があったわけです。
それまでは日本は多神教的な文化でした(八百万の神というイメージ)。
それがタカミムスヒという太陽神をいただく王権的な考え方が流入してきました。
それがヤマト統一国家への力となったわけです。
ただしのこの統一国家は王家とその周囲が地方の豪族を支配するという構造でした。
王が国民を直接支配するという構造ではなかったのです。
壬申の乱以降天武天皇がさらに日本全国規模へ統一へ動くときに、タカミムスヒという伝来の神ではなく、日本で古くから親しみをもたれていたアマテラス(これも太陽神)を天皇の始祖とするようにしたというのが著者の考えです。
けっこう納得がいく説明でした。
日本というのは海で囲まれながらも大陸と行き来はできるという地政学的な位置の関係上、外国の文化の大きな流入が周期的にくるようです。
それが咀嚼され日本の文化となっていく。
我々が暮らしている日本の文化が実は地層のように重ね合わせてできているということを想像すると何かおもしろい気がします。
「アマテラスの誕生 -古代王権の源流を探る-」溝口睦子著 岩波書店 新書 ISBN978-4-00-431171-3
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