本 「レキオス」
先日読んだ「テンペスト」が思いのほかおもしろかったので、同じ池上永一さんの作品「レキオス」を読んでみました。
「思いのほか」というのはたいへん失礼な言い方なのですが、ずいぶん前に読んだ「シャングリ・ラ」がどうも合わなかったので、池上さんの作品はちょっと避けていたのです。
「レキオス」が単行本で出たのは2000年なので、「シャングリ・ラ」よりもずっと前ということになります。
読んでみましたが、やはり合わなかった・・・。
この方の作品のキャラクター造形が肌に合わないような感じがします。
なんというかとてもカリカチュアされたようなキャラクターが多く、どうも実在するようなリアル感がありません。
フィクションなので「実在するような」というのは変かもしれないですが、なんだか深みがないような気がします。
それを醸し出している要素はいろいろあると思いますが、自分としては台詞回しがかなり大きな比重を占めているような気がします。
「・・・なのよーっ」
「・・・くすくす」
といったような台詞回しは、アニメや漫画では違和感はないのですが、小説で書かれると、実在感のある人がしゃべっているよにどうにも思えず、安っぽい印象を感じます。
これは「シャングリ・ラ」でも感じたことでした。
「テンペスト」では多少感じつつも、違和感まではいかなかったので、最近はちょっと変わってきているのかもしれませんが。
あとストーリー展開も、いろいろな要素をかなり盛り込み、大風呂敷を広げて破綻寸前のような危うさを感じます。
解説を読むと、池上さんはあまり構成をしっかり組み立てるタイプではなく、書きながら物語を紡ぎだしていくタイプのようですね。
後者のタイプは物語に勢いが出るので、そういうものは感じますが、荒唐無稽の一歩手前でなんとか踏みとどまっているといった感じがします。
なにか作り物めいた(フィクションなので当然なのですが)感触というのが、読んでいて最後まで払拭できませんでした。
このあたりの感触がいまいち苦手なのです。
たぶんこの感触が好きな人も多いのでしょうけれど、僕はちょっと合いません。
「テンペスト」で苦手意識がなくなったのですが、また強くなってしまいました。
「レキオス」池上永一著 角川書店 文庫 ISBN4-04-364702-6
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