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2009年3月22日 (日)

「宇宙戦争」 父親としての自覚の再生

先日原作の小説も読んだし、本作主演のトム・クルーズの「ワルキューレ」を観たし、本作でトムの息子役をやっているのは先日観た「DRAGONBALL EVOLUTION」で悟空役のジャスティン・チャットウィンだし、ということで久しぶりに「宇宙戦争」を観ました。
世間的には本作はあまり評判はよろしくないようですが、僕はけっこう好きであったりします。
たぶん評価しない意見としては、「インディペンデンス・デイ」のようなカタルシスがないということ(基本的に主人公レイは逃げているだけですから)、あと異星人が微生物にやられてしまう結末が安易だというようなところではないでしょうか。
原作を先日読みましたが、100年以上も前の作品とは思えないほどにSF的センスにあふれていて驚きました。
結末については原作とまったく同じであり、そこは安易というよりは、そもそもSF小説の元祖と言える作品をベースにしているわけで、他の作品が「宇宙戦争」の影響を受けていると言ったほうが正しかろうと思います。
余談ですが、このラストは、現在未開の地に分け入ったことによるエボラやAIDSなどの未知の病原菌の脅威に面してしまうということを予言しているようにも感じます。
映画はラストの展開は原作と同じですが、小説は100以上前のイギリスを舞台にしていて、映画は現代ですので、まったく同じストーリーではありません。
けれど小説へのオマージュがある場面もいくつかあり、このあたりは原作を読んでみて再度映画を観てみるとおもしろいです。
例えば、レイが奪った車を暴徒化した逃げる人々に奪われるシーンがありますが、原作ではこの場面は馬車を奪われそうになるというものでした(拳銃で威嚇するのも同じ)。
またフェリーに乗り込むところのパニックシーンもそうですし、あと地下室で見知らぬ男と対立する場面も原作にありました。

ただ本作は異星人との戦いを描くSF映画という捉え方をしないほうがいいような気がしてます。
ここが原作と映画が違うところだと思います。
異星人襲来は本作においては、レイ親子を危機的状況に陥らせるための道具立て以上のものではないと思います。
言ってしまえば、これは異星人襲来でなくてもよく、例えば地震とか台風とかいった自然災害でも実はストーリーの骨子にそれほど影響を与えません。
なので病原菌で異星人があっけなくやられてもそれは本質的には重要なことではありません。
台風が去っていってしまうようなものですから。
この映画は、失ってしまった親としての自覚を父親が取り戻す物語だと思います。
主人公レイは離婚した元妻に子供たちを預けている男です。
時々子供たちとは週末をいっしょに過ごすことになっていますが、お互いにそれを気まずいものとしてとらえていることがわかります。
けれども思いもよらぬ異星人襲来という状況の中で、子供たちを守りながら逃げていく中で次第にレイは親としての自覚を取り戻していきます。
異星人襲来という設定により、よく比較される「インディペンデンス・デイ」は英雄物語ですが、本作の狙いはヒーローを描くことではありません。
子供を是が非でも守りたいと思う親は、人類を救うためというお題目で絶対的に強大な敵との戦いに飛び込むよりは、自分の子供を守りながら脅威から逃げまくることを考えるはずです。
彼が戦うのは子供に脅威を与える状況になった時の目の前の相手。
人類を救うといったようなある種きれいごとの目的のためでなく、我が子のために戦うというところが僕はとても共感できるのです。
だから逃げてばかりでカタルシスがないという点は、あまりこの作品を評価するポイントではないような気がしています。
子供を守るために、どんなになっても必死にがんばるという、父親の存在感が希薄化している現在ではあまりみられない、大きな存在感のある父親の姿というものを感じる映画だと思います。

原作小説「宇宙戦争」の記事はこちら→

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