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2009年3月 7日 (土)

本 「宇宙戦争」

H.G.ウェルズが生み出したSFの古典中の古典、「宇宙戦争」を読みました。
本作を原作にしたオーソン・ウェルズのラジオドラマを放送した時に、聞いた人がほんとうのことだと思ってパニックになった事件は有名な話。
またスピルバーグが数年前に映画化もしましたね。
「宇宙戦争」以降のかなりの小説・映画・漫画等は(SFは以外も)、この作品の影響を受けていると言っても言い過ぎではないでしょう。
「火星人」と言ったら、どんな姿をイメージするでしょう?
昭和生まれの人ってこんな姿をイメージしないでしょうか?
大きな頭でぎょろしとした目、胴体はなくって、たこの足のようなものが何本もうねうねと出ているようなイメージ(「ドラクエ」のホイミスライムみたいな感じ)。
これはH.G.ウェルズの「宇宙戦争」の火星人なんですよね。
その後の宇宙人イメージに大きな影響を与えたわけです。
本作読んでびっくりしたのは、今読んでも全く古びていないことです。
SF小説というのは、大概が最新の科学などを題材にしているので、十数年前の作品を読むと現在の世の中を予測しきれていないことがあり古びた印象を受けることがあります。
けれども本作はそういうことはありません。
発表されたのが1898年ですからなんと100年以上前(!)。
火星人に急襲されたロンドン市民は馬車や汽車で逃げます。
飛行機はありません。
けれども不思議と古くは感じない。
それは表面的な科学的な技術、未来予測等にフューチャーするのではなく、あくまで大災難に直面した人類というものを描いているからだと思います。
100年前ですら傲慢になりかけている人類に、ウェルズがそれを指摘しようとしているように思えます。
このテーマは現代にこそ、またふさわしいわけで、だからこそ本作が古びていない印象を与えるのだと思います。
また火星人が襲うのがイギリスだとういうのもなかなか風刺的なような気がします。
地球を襲う火星人というのは、容赦がなく人間を襲い食料にします。
主人公はそれを逃れようとしますが、彼には人類の将来は火星人の家畜になってしまうようなイメージも浮かびます。
これは世界制覇したイギリスが、侵略した地に暮らす人々へ行ったことを自らも受けてしまうということでやはりそのような行為を批判しているようにも思えます。
そういう点においても普遍的なテーマを持っているように思います。
ユダヤ人や黒人への迫害というテーマを一つのライフワークにしてきたスピルバーグが映画化しようと思ったのもここに理由があるのかもしれません。
本作を読んでみると、思いのほかスピルバーグの「宇宙戦争」が、ウェルズの作品に忠実であることがわかります。
もちろん現代に置き換えているわけで多くの設定を変えていますが、小説から浮かぶ印象的なビジュアルイメージが映画の映像に上手くなっているような気がしました。
あらためてスピルバーグの「宇宙戦争」を観直してみようかと思いました。

「宇宙戦争」H.G.ウェルズ著 東京創元社 文庫 ISBN4-488-60702-0

映画化作品「宇宙戦争」の記事はこちら→

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