本 「天狗風 霊験お初捕物控<二>」
先日読んだ「震える岩」のお初が登場する霊験お初捕物控シリーズ、第二弾「天狗風」を読みました。
主人公のお初がいいですね。
宮部みゆきさんの小説に出てくる悪人というのは、人を思いやることのできない本当の悪人が多いですが、また良い人というのは他人の気持ちを慮ることができる人物だったりします。
お初もそういう人物で(人の心を読む力がありますが、それとは別の意味で気持ちの読める人)、人の心の底にあるどろりとした怨念が原因の事件であればあるほど、この人物像によって救われる気持ちになります。
本作で扱われる事件の原因となるのは、女性が持つ美しさというものへの憧れ、執着といったものです。
今でこそ男性も外見を気にするようになり、それで評価されることも多くなってきましたが、女性は昔からずっと外見というもので評価されがちです。
それは男性がそういう目で見るからというのは大方正しいと思いますが、女性自身も外見というものを
重視することはあると思います。
人と比較したりとか。
これが良いか悪いかということではなく、そこにばかり囚われてしまうとその気持ちが執着となり、お怨念となっていってしまうわけです。
お初が「美しさは、それを見る者の心なかにだけにあるのよ!」という台詞がありますが、これは名言だと思いました。
美しさというのは絶対的な基準があるわけではありません。
「蓼喰う虫も好き好き」ということわざにあるように、その人にとっての美しさというのは、その人だけのものなのです。
万人にいつまでも「美しい」と言ってもらいたいというのは、女性の気持ちとしてはわからなくもありませんが、誰か一人でも「それでいい」と言ってくれることに満足するのが健康的なのかもしれません。
お初と右京之介の関係は青春小説のような爽やかさでなんかいいですよね。
二人のその後を知りたいのですけれど、宮部みゆきさん、本シリーズの続編書いてくれないかなあ。
人語を理解する鉄という猫が登場しますが、こちら、宮部みゆきさんのデビュー作「パーフェクト・ブルー」の人の言葉がわかる犬、マサが思い出されますね。
お初と鉄の軽妙なやりとりもなかなか読んでいて楽しかったです。
「天狗風 霊験お初捕物控<二>」宮部みゆき著 講談社 文庫 ISBN4-06-273257-2
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