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2009年3月31日 (火)

本 「アイの物語」

ヒトが衰退し、それに代わってマシンが地球を支配している未来。
ヒトは小さなコロニーを作り、マシンから食料を奪って生活をしています。
そのコロニーを巡りながら、ヒトの作った物語を収拾している青年。
彼は旅の途中で、アイビスと名乗る女性型アンドロイドに捕まります。
アイビスは、彼にヒトが作った、ロボットとヒトの物語を語り始めます。

山本弘さんが自身の短編を、インターミッションを挿入して一つの物語としてまとめた作品です。
それぞれの短編の内容も個別にとてもおもしろいですが、連結された全体としての作品としてもとても良い読み心地でした。
古くからヒトとロボットの関係というのは、SFで取り上げられていました。
当初はヒトの命令を聞く召使いというイメージでしたが、コンピューターの発達に伴いその頭脳は人間を凌駕するというような内容の物語が多くなります。
そういう中で、ロボットは反乱を起こしいつかヒトを支配するという物語(「ターミネーター」や「ブレードランナー」等)という話、逆にヒトとロボットが共存する物語(「鉄腕アトム」とか)が作られています。
なぜかヒトはロボット(特にヒトの形をしたもの)に対し、不思議な感情を持つような気がします。
それは自分に似た姿のものに対しての愛情だったりもしますし、憎悪だったりもします。
この作品に登場するロボットが語っているように、似姿の存在に対してのそのような感情は、実はロボットに、ヒト自身を投影して観ているような気がします。
ロボットは論理的であり、その点においては完璧です。
対してヒトはあまりに非論理的で、場当たり的であったりします。
人々が安心して暮らすためには戦争等しない方がいいと論理的には誰しも考えますが、世界で戦争が絶えたことはない。
それは何故か、ということをロボットたちは語ります。
似ているが異なる存在というのをヒトは嫌います。
人種であったり身分であったり、それが争いのもとでした。
それが不条理であるのは知っている。
けれど争うことは止められない。
その争いを越えることができる意識とは、異なるものを許容できるということなのでしょう。
ロボットとヒト、似ているけれども異なる存在。
互いに存在していくためには許容することが大事。
本作はSFですので、ロボットとヒトの間の許容という話になっていますが、これはヒトの間でも言えることでしょう。
悲しく淋しくもありながら、なにか希望の残る物語で、非常に読後感が良かったです。
お薦めの作品です。

山本弘さん作品「MM9」の記事はこちら→

「アイの物語」山本弘著 角川書店 ハードカバー ISBN4-04-873621-3

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