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2009年2月 8日 (日)

「ヘブンズ・ドア」 自分の死に向かい合うその時に

「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督の初実写作品です。
オリジナルはドイツ映画の「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」で、こちらは残念ながら未見です。
「鉄コン筋クリート」は大好きな作品なので、その監督がどのように実写を撮るのかとても興味がありました。
アニメも実写の両刀使いというと押井守監督、庵野秀明監督などがあげられます。
お二方ともアニメでも実写でも強烈な個性、スタイルを出しますよね。
同じようにマイケル・アリアス監督の実写作品も彼の作品の持つ空気感というものが出ていたと思います。

突然に余命数日と宣告された28歳の男、青山。
幼い頃よりずっと入院していていつ死ぬかわからない少女、春海。
本作は、死というものを間近に感じる二人が、海を目指すロードムービーです。
映画や小説等の作品で死がとりあげられることは多いですよね。
けれど普段生活としていて、自分の死というものを実感しながら生きているかというとそうではありません。
当然、知っている人の死というのはあったりするので、それが悲しいとかそういう気持ちは味わうこともあります。
けれど、自分の死というとなぜかとたんにリアリティがなくなってしまいます。
なんとなく普段の生活では自分の死というものはフィクションのような気もしてしまいます。
多くの人がそうではないでしょうか。
だから病気などで死に向かい合っている方からすると、気持ちを本当に理解してもらっているとはなかなか思えないのかもしれません。
28歳の男と14歳の少女、普通に暮らしていれば話す場面などそうあるわけではありませんし、そこに共感などもあまりないでしょう。
けれど青山と春海は、二人とも自分の死というものに向き合っている。
生へのあきらめ、死というものに対しての恐れ、そのような彼らの本当の気持ちをわかってくれるのは、やはりそれに向き合っている人たちだけなのかもしれません。
だから普通はない、シンパシーのようなものを二人はお互いに感じたのでしょう。
青山は、観ている僕たちのように毎日をいつもどおりに過ごしてきていたのに、突然、自分の死というものに直面します。
夢も潰え、人生をもうあきらめていると思っている時に、直面する自分の死。
たぶん彼は海への旅を始めたときはまだそれをリアリティのあるものとは思っていなかったのでしょう。
けれども彼の人生のゴールとも思える、海に近づいていく中で、段々とそれはリアリティを増していったのだと思います。
海の近くの自分の生家の前で青山は「死にたくねえ」と口にします。
彼はそのとき自分の死というものに初めて直面したのだと思います。
そのとき春海は「大丈夫だよ」と母親のように彼の肩を抱きます。
彼女にとってたぶん死というものはいつもそばにあるものだったのでしょう。
春海はずっと死というものをリアリティのあるものと感じていたのだと思います。
だから青山の死への恐れというものを彼女は本当にわかることができた。
それがわかったうえで、それをむかえようとする青山の心を、静かにやさしく包み込んだのです。
春海によって青山は天国のドアをくぐるときを、とても安らかな気持ちで迎えることができたのだと思います。
いつか自分も、自分の死というものに向かい合う時がくるはずです。
その時に彼らのように安らかに迎えるようになれたらいいなと思いました。

音楽を「鉄コン筋クリート」に引き続き、Plaidが担当。
これがとてもいい。
なんとも言えぬ空気感が、マイケル・アリアス監督の作風にとてもあっているような気がします。
久しぶりにサントラが欲しくなりました。

マイケル・アリアス監督作品「鉄コン筋クリート」の記事はこちら→

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コメント

ノラネコさん、こんにちは!

そうですね、外国人にありがちな異世界のような日本ではなかったですよね。
でも普通の日本の街並、田舎を映しているのですけれど、なんとなくファンタジーのような感じもしました。
リアルさみたいなものはあまり狙っていないような気がしました。
どちらかというともっとファンタジー的なもの、「鉄コン筋クリート」の宝町に通じるような世界を感じました。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年2月22日 (日) 09時40分

マイケル・アリアスは、日本人より日本的な映画を撮るなあと感心してしまいました。
ただ、やや生真面目過ぎた様な気がします。
物語が元々漫画チックな上に、映像はアニメーション並みに作りこまれて、人間までもがアニメキャラの様にステロタイプだったので浮世離れして感じてしまいました。
オリジナルはもう少しコメディ色が強く、アバウトな印象だったので、そういういい加減な所があれば、生っぽさが出たかもしれません。
ビジュアルセンスはさすがの仕上がりでした。

投稿: ノラネコ | 2009年2月20日 (金) 16時23分

マサルさん、こんにちは!

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」は評判いいですよね。
今度観てみようかな。
本作の方はか設定はオリジナルからかなりいじっています。
僕はけっこう好きでした。
機会がありましたら是非。

投稿: はらやん | 2009年2月 8日 (日) 13時19分

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」のほうは最近観ました。すっごく良くて、かなりのお気に入りです。「ヘブンズ・ドア」はそのリメイク版とのことですが、設定を見る限りはかなり元ネタとは違う感じですね。ちょっと見てみたい気になっています。

投稿: マサル | 2009年2月 8日 (日) 00時45分

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