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2009年2月22日 (日)

本 「あなたの魂に安らぎあれ」

人はなぜ存在するということを問う。
宗教も哲学もその問いへの答えを探る学問だと思います。
けれどそういう一般化された学問とまではいかなくても、自分自身について何のために存在するのかということを考えたことがない人はあまりいないでしょう。
本作の登場人物はそれぞれに自分自身のレゾンデートルについて疑問を持ち、問い続けます。
まるで別人になったかのようなリアルな夢にうなされる男。
自分がアンドロイドではないかと疑う少年。
己自身も病んでいるのではないかと思う心理カウンセラー。
普通に生活をしていれば自分自身が存在していることは、自分にとって十分にリアリティがあること。
けれどその実在に疑問が生じたとき、リアルと空想の間の境界が曖昧になっていきます。
その疑問を持っているとき、その精神はとても安定性を欠けたものになります。
だからこそそうならないように、人は自分が何のために存在するのかということを知りたいと思うのでしょう。
この実在に対する不安感というものは神林長平作品に通奏低音のように響いているもののように思います。
本作冒頭の部分はフィリップ・K・ディック原作の映画「トータル・リコール」を思い出しました。
やはり神林長平とディックは何か通じるものがあるような気がします。
神林氏の作品はディックほど破滅的な感じはしないですけれど、先に書いたような現実感に対する不安みたいなものは感じます。

神林長平作品「敵は海賊・A級の敵」の記事はこちら→
神林長平作品「ライトジーンの遺産」の記事はこちら→
神林長平作品「ルナティカン」の記事はこちら→

「あなたの魂に安らぎあれ」神林長平著 早川書房 文庫 ISBN4-15-030215-4

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