「カメレオン」 何をいまさら
藤原竜也さんが演じる主人公伍郎が、在りし日の松田優作さんが演ったらぴったりだろうなあと思って観ていたら、元々松田優作さんのために書かれていた脚本だったんですね。
どおりで・・・。
現代向けに大幅に書き直されたということですが、どうもどこかで観たようなという印象を持ってしまいます。
ディテールは直しているとしても、基本的には物語の構造は変わっていないということでしょうか。
以前はその凶暴さで恐れられた男が足を洗い静かに生きていたところで、ある日ヤバい事件に巻き込まれ、仲間や愛する人を傷つけられる。
男はその相手に怒りを爆発させ、復讐を行う。
言ってはなんですが、脚本の丸山昇一さんが書くこのストーリーというのは、彼の十八番とも言えるような筋立てです。
というよりこういうのしか書けないのかと言いたくなるほどに、ワンパターンではないかと思います。
何をいまさらという感じがしなくもありません。
構造としてはシンプルな割に主人公が「復讐」に至るまでがあまりに長く、バランスがとても悪い。
「復讐劇」はやけにあっさりしていてカタルシスが得られません。
藤原竜也さんもほとんど自分でアクションをこなしたということで、がんばっているとは思いますが、やはり松田優作さんのイメージがチラつくわけで、どうしても比べてしまいます。
早くに亡くなったこともあり強烈なイメージを残している松田優作さんの存在感というのは、なかなか現在活躍している俳優さんも真正面からは越えづらいのではないでしょうか。
阪本順治監督は初期の作品(「鉄拳」とか「王手」とか)は好きなのですが、最近はちょっとパッとしない印象があります。
もっと初期の作品は阪本監督の個性というかスタイルが出ていたと思うのですが、最近はどうにも作ることに慣れてしまったような器用さが気になります。
もっと監督の「らしさ」みたいなものが出して欲しいのですけれども。
脚本、演出について、なぜ今これを作らなければならなかったのかといったようなものを感じられない作品でした。
そういうものがない作品は、観る側にも何も伝えられないような気がします。
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