« 「アラトリステ」 スペイン版任侠もの | トップページ | 本 「テンペスト」 »

2009年1月 3日 (土)

「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」 永久の化学反応

本作はマーティン・スコセッシがディレクターを務めたザ・ローリング・ストーンズのドキュメンタリーです。
ライブが始まる前のパートはなんとなくスコセッシの香りがしましたが、あとは時折挿入されるインタビュー映像以外は、ストーンズを見せるということに特化したライブの映像で組み立てらています。
ザ・ローリング・ストーンズは超有名なバンドですから、洋楽の知識がからきしダメな僕でもさすがに知っていました(映画でよく使われますから)。
なんとなくバンドというのは「音楽の目指す方向性が違ってしまった」などといって何年か経つと解散してしまうようなイメージがあります。
けれどもストーンズが結成されたのは1962年ということですから、これは僕が生まれるよりも前!
もう46年も彼らはずっと同じバンドをやっているんですね。
そこにまず驚きます(サラリーマンだって定年まで勤めたとしても40年くらいですから)。
ロックが産声をあげた時から、その先頭を走り続けているストーンズ。
ライブの映像を見ても彼らが60歳を過ぎているなんて到底思えません。
挿入されていた過去のインタビュー映像(彼らがブレイクしたとき)で、若かりし頃のミック・ジャガーが「化学反応が起きた」という発言をしています。
これは言い得て妙だと思いました。
本作で彼らのライブ映像を観てみるとまさに「化学反応」のようです。
それはメンバー同士、ゲストのアーティストと、そして会場に来ているファンたちと、それぞれの間で「化学反応」が起き、より大きな連鎖反応を起こしているような感じがしました。
そもそもがライブというのは、アーティストと観客との一体感みたいなものが生まれる場です。
でもストーンズのライブというのは、その反応が他のアーティストよりもさらに激しいのかもしれまえん。
スコセッシはこのドキュメンタリーを撮るにあたっては小さな会場にすることにこだわったようですが、そのほうがストーンズと観客の一体感というものをより見せられるという計算があったからのような気がします。
それぞれの間にある「化学反応」は、ただ放っておくとだんだんとその反応は鈍くなっていくような気がします。
バンドメンバー同士の間でも刺激がなくなってくる。
けれどもストーンズは40年以上にも渡って活動を続けています。
彼らはその「化学反応」を劣化させないような努力をしているような気がします(本人たちが意識しているかどうかは別にして)。
メンバー同士が互いにリスペクトしつつも、刺激し合うような間柄で居続けること。
観客を常に反応させることを考えていること。
これは冒頭にスコセッシにその日のライブの曲が直前まで連絡されないということからも想像できます。
彼らはその日の自分たちの調子・ノリや、観客の雰囲気を見ながら、ギリギリまで曲を決めないのではないのでしょうか。
最も大きな「化学反応」を起こすために。
化学反応は反応する物質が枯渇すれば、反応は止まります。
ストーンズはそれを絶やさぬように常に刺激を与え続けることを考えている。
それを行い続けるからこそ、彼らはずっと最前線で活躍できているのかもしれません。
まさに永久の化学反応を続けているかのように。

マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」の記事はこちら→
マーティン・スコセッシ監督「アビエイター」の記事はこちら→

にほんブログ村 映画ブログへ

|

« 「アラトリステ」 スペイン版任侠もの | トップページ | 本 「テンペスト」 »

コメント

コブタさん、あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。

ライブ前の様子はおもしろかったですね。
予告でこの部分が流れていて、それで本作に興味がでたんですよ。
この感じでスコセッシ流にいくのかなと思ったら、思いのほかきちんとライブを見せていましたよね。
しかし、ほんとうにあの人たちは年を感じさせないくらいパワフルですよね。
んー、まだまだ自分は小僧です(笑)。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年1月 6日 (火) 22時51分

rose_chocolatさん、こんばんは!

僕もそれほど曲を知っているわけではなかったのですが、彼らのエネルギッシュなステージには魅せられました。
あれはライブであの場にいたら楽しいだろうなあ。
本作を観ながら、これはメンバー同士の化学反応だと思っていたら、ミックが同じ言葉を言っていたので、びっくりしました。
お互いに刺激し合うからこそあんなに続いているんでしょうね。
馴れ合いだとああはいきません。

投稿: はらやん(管理人) | 2009年1月 5日 (月) 23時11分

あけまして おめでとうございます!
旧年中は大変お世話になりました。
今年も宜しくお願いします!

スコセッシとストーンズの関係も面白い科学反応おこしていますよね!

ライブの様子は最高に気持ちよく面白かったのですが、

最高の物を作りだそうとするのは同じなものの、そこにむけての準備やテンションの持っていき方の異なる二者ライブ前の様子がまた面白かったです。

ストーンズもスコセッシも、年齢を感んじさせないパワーをもったアーチストですよね。
こういうの観ていると、、自分の年齢も気にならなくなってしまいますよね!

投稿: コブタです! | 2009年1月 5日 (月) 18時01分

どういうわけか、ストーンズなんて数曲しか知らない自分が観に行っても、最後には魅了されてしまう映像でした。

化学反応。。。 うまいこと言いますね^^
ビートルズなんて反応したくても触媒がない・・・ みんなもういないから。
だからステージを完璧にこなせるだけの体力と技術をフォルムを保っているだけでも、ストーンズは1人1人が十分自分たちの中で日々化学反応してそうですよね。

投稿: rose_chocolat | 2009年1月 4日 (日) 23時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」 永久の化学反応:

» 『ザ・ローリング・ストーンズシャイン・ア・ライト』(2008)/アメ... [NiceOne!!]
原題:SHINEALIGHT監督:マーティン・スコセッシ出演:ザ・ローリング・ストーンズ、クリスティーナ・アギレラ、バディ・ガイ、ジャック・ホワイト試写会場 :よみうりホール公式サイトはこちら。<Story>ザ・ローリング・ストーンズのライブを映画として撮り上げ...... [続きを読む]

受信: 2009年1月 4日 (日) 23時18分

» 「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」を観た! [とんとん・にっき]
ローリング・ストーンズについての2つの想い出を・・・。 一つは、若い頃卒業した大学の研究室の先生と一緒に「アメリカ建築視察旅行」をした時の話。1972年頃のことか?まず最初に到着したのがニューヨーク、宿泊先のホテルがマジソン・スクエア・ガーデンの真ん前。その... [続きを読む]

受信: 2009年1月 5日 (月) 08時41分

» ●ザ・ローリングストーン シャイン・ライト(SHINE A LIGHT) [コブタの視線  ]
感想は『最高に気持ちいい映画』の一言! ローリング・ストーンが好きな人はますます惚れて、知らない人はコレ観てファンになってしまうそ... [続きを読む]

受信: 2009年1月 5日 (月) 18時02分

» 「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」を観た! [とんとん・にっき]
ローリング・ストーンズについての2つの想い出を・・・。 一つは、若い頃卒業した大学の研究室の先生と一緒に「アメリカ建築視察旅行」をした時の話。1972年頃のことか?まず最初に到着したのがニューヨーク、宿泊先のホテルがマジソン・スクエア・ガーデンの真ん前。その... [続きを読む]

受信: 2009年1月10日 (土) 21時13分

» 映画 「シャイン・ア・ライト」 [ようこそMr.G]
映画 「シャイン・ア・ライト」 を観ました。 [続きを読む]

受信: 2009年1月11日 (日) 12時59分

» ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト [☆C'est joli〜ここちいい毎日を〜☆]
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト’08:米 ◆原題:SHINE A LIGHT◆監督: マーティン・スコセッシ「ディパーテッド」「ギャング・オブ・ニューヨーク」◆出演: ザ・ローリング・ストーンズ、クリスティーナ・アギレラ、バディ・ガイ、ジャック・ホワイ....... [続きを読む]

受信: 2009年1月29日 (木) 22時17分

» 『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』 [Sweet*Days**]
監督:マーティン・スコセッシ  CAST:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド、チャーリー・ワッツ 他 2006年秋... [続きを読む]

受信: 2009年1月31日 (土) 06時18分

» 『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』 [ラムの大通り]
(原題:Shine a Light) ----へぇ〜っ。これってマーティン・スコセッシが監督したんだ。 「うん。彼は音楽にも強く『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』では 助監督と編集を兼任。 ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』や 『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』などを監督している。 でも、そんな彼でもこの映画は大変だったようだ。 なにせ、ステージが始まる直前まで セット・リストが決まらず、 カメラ・ポジションもままならなかったようだ。 映画の中でも、 『順番までとは言わないから何... [続きを読む]

受信: 2009年1月31日 (土) 22時34分

» 「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」(SHINE A LIGHT) [シネマ・ワンダーランド]
名作「タクシードライバー」や、米ロック・グループ、ザ・バンドのドキュメンタリー「ラスト・ワルツ」、サスペンス「シャッター・アイランド」などで知られる米映画界の鬼才、マーティン・スコセッシがメガホンを執ったローリング・ストーンズのライブ・ドキュメンタリー「ザ・ローリングストーンズ シャイン・ア・ライト」(2008年、米、122分、パラマウント映画配給)。この映画は、平均年齢64歳という英国の伝説的ロック・バンド、ストーンズが08年にニューヨークのビーコン・シアターで行ったコンサートの模様を、...... [続きを読む]

受信: 2011年1月14日 (金) 22時53分

» 映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイ... [KINTYRE’SDIARY]
9-9.ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト■原題:ShineALight■製作年・国:2008年、アメリカ■上映時間:122分■鑑賞日:2月1日、新宿武蔵野館(新宿)■公式HP... [続きを読む]

受信: 2011年4月 1日 (金) 23時39分

» ザ・ローリング・ストーンズ:シャイン・ア・ライト [象のロケット]
半世紀近くもスーパー・バンドとして君臨してきたザ・ローリング・ストーンズ。 大規模なスタジアム公演が中心の彼らが、わずか2800席のニューヨーク、ビーコン・シアターで撮影用ライブを行った。 本番前のエピソードや過去の映像はごくわずか、ほとんどがライブそのものの、ロック音楽ドキュメンタリー。 「真実は音楽とライブ・パフォーマンスにある。」(監督)... [続きを読む]

受信: 2011年4月 2日 (土) 22時50分

« 「アラトリステ」 スペイン版任侠もの | トップページ | 本 「テンペスト」 »