「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」 永久の化学反応
本作はマーティン・スコセッシがディレクターを務めたザ・ローリング・ストーンズのドキュメンタリーです。
ライブが始まる前のパートはなんとなくスコセッシの香りがしましたが、あとは時折挿入されるインタビュー映像以外は、ストーンズを見せるということに特化したライブの映像で組み立てらています。
ザ・ローリング・ストーンズは超有名なバンドですから、洋楽の知識がからきしダメな僕でもさすがに知っていました(映画でよく使われますから)。
なんとなくバンドというのは「音楽の目指す方向性が違ってしまった」などといって何年か経つと解散してしまうようなイメージがあります。
けれどもストーンズが結成されたのは1962年ということですから、これは僕が生まれるよりも前!
もう46年も彼らはずっと同じバンドをやっているんですね。
そこにまず驚きます(サラリーマンだって定年まで勤めたとしても40年くらいですから)。
ロックが産声をあげた時から、その先頭を走り続けているストーンズ。
ライブの映像を見ても彼らが60歳を過ぎているなんて到底思えません。
挿入されていた過去のインタビュー映像(彼らがブレイクしたとき)で、若かりし頃のミック・ジャガーが「化学反応が起きた」という発言をしています。
これは言い得て妙だと思いました。
本作で彼らのライブ映像を観てみるとまさに「化学反応」のようです。
それはメンバー同士、ゲストのアーティストと、そして会場に来ているファンたちと、それぞれの間で「化学反応」が起き、より大きな連鎖反応を起こしているような感じがしました。
そもそもがライブというのは、アーティストと観客との一体感みたいなものが生まれる場です。
でもストーンズのライブというのは、その反応が他のアーティストよりもさらに激しいのかもしれまえん。
スコセッシはこのドキュメンタリーを撮るにあたっては小さな会場にすることにこだわったようですが、そのほうがストーンズと観客の一体感というものをより見せられるという計算があったからのような気がします。
それぞれの間にある「化学反応」は、ただ放っておくとだんだんとその反応は鈍くなっていくような気がします。
バンドメンバー同士の間でも刺激がなくなってくる。
けれどもストーンズは40年以上にも渡って活動を続けています。
彼らはその「化学反応」を劣化させないような努力をしているような気がします(本人たちが意識しているかどうかは別にして)。
メンバー同士が互いにリスペクトしつつも、刺激し合うような間柄で居続けること。
観客を常に反応させることを考えていること。
これは冒頭にスコセッシにその日のライブの曲が直前まで連絡されないということからも想像できます。
彼らはその日の自分たちの調子・ノリや、観客の雰囲気を見ながら、ギリギリまで曲を決めないのではないのでしょうか。
最も大きな「化学反応」を起こすために。
化学反応は反応する物質が枯渇すれば、反応は止まります。
ストーンズはそれを絶やさぬように常に刺激を与え続けることを考えている。
それを行い続けるからこそ、彼らはずっと最前線で活躍できているのかもしれません。
まさに永久の化学反応を続けているかのように。
マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」の記事はこちら→
マーティン・スコセッシ監督「アビエイター」の記事はこちら→

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(原題:Shine a Light)
----へぇ〜っ。これってマーティン・スコセッシが監督したんだ。
「うん。彼は音楽にも強く『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』では
助監督と編集を兼任。
ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』や
『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』などを監督している。
でも、そんな彼でもこの映画は大変だったようだ。
なにせ、ステージが始まる直前まで
セット・リストが決まらず、
カメラ・ポジションもままならなかったようだ。
映画の中でも、
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コメント
コブタさん、あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。
ライブ前の様子はおもしろかったですね。
予告でこの部分が流れていて、それで本作に興味がでたんですよ。
この感じでスコセッシ流にいくのかなと思ったら、思いのほかきちんとライブを見せていましたよね。
しかし、ほんとうにあの人たちは年を感じさせないくらいパワフルですよね。
んー、まだまだ自分は小僧です(笑)。
投稿: はらやん(管理人) | 2009年1月 6日 (火) 22時51分
rose_chocolatさん、こんばんは!
僕もそれほど曲を知っているわけではなかったのですが、彼らのエネルギッシュなステージには魅せられました。
あれはライブであの場にいたら楽しいだろうなあ。
本作を観ながら、これはメンバー同士の化学反応だと思っていたら、ミックが同じ言葉を言っていたので、びっくりしました。
お互いに刺激し合うからこそあんなに続いているんでしょうね。
馴れ合いだとああはいきません。
投稿: はらやん(管理人) | 2009年1月 5日 (月) 23時11分
あけまして おめでとうございます!
旧年中は大変お世話になりました。
今年も宜しくお願いします!
スコセッシとストーンズの関係も面白い科学反応おこしていますよね!
ライブの様子は最高に気持ちよく面白かったのですが、
最高の物を作りだそうとするのは同じなものの、そこにむけての準備やテンションの持っていき方の異なる二者ライブ前の様子がまた面白かったです。
ストーンズもスコセッシも、年齢を感んじさせないパワーをもったアーチストですよね。
こういうの観ていると、、自分の年齢も気にならなくなってしまいますよね!
投稿: コブタです! | 2009年1月 5日 (月) 18時01分
どういうわけか、ストーンズなんて数曲しか知らない自分が観に行っても、最後には魅了されてしまう映像でした。
化学反応。。。 うまいこと言いますね^^
ビートルズなんて反応したくても触媒がない・・・ みんなもういないから。
だからステージを完璧にこなせるだけの体力と技術をフォルムを保っているだけでも、ストーンズは1人1人が十分自分たちの中で日々化学反応してそうですよね。
投稿: rose_chocolat | 2009年1月 4日 (日) 23時23分