本 「ミラー・メイズ」
ジェイムズ・P・ホーガンのポリティカル・スリラー。
ホーガンは「星を継ぐもの」などの代表作があるSF作家なので、こういうジャンルは珍しいと思います
この作家は大学生の頃から好きで、ほとんどの作品を読みました。
その中、唯一読んでいなかったのが、本作でした。
ちょっとホーガンのポリティカル・サスペンスというところにあまり惹かれず・・・。
彼の作品はハードSFに分類されると思いますが、この作家の好きなところとはと言えば、科学に対する楽観的な姿勢でしょうか。
20世紀も最後の20年くらいからは、それまでの科学の発展に伴い、人類の繁栄がなされるといったような楽観的な見方が薄れてきました。
その頃のSF作品などをみても、サイバーパンクなどにあるようにダークな印象のある未来が描かれています。
けれどもそれよりも前の時代、例えばアーサー・C・クラークやアイザック・アシモフが活躍していた頃のSFというのは、もうすこし未来はバラ色だったように思えます。
当然科学は万能ではなく、様々な問題をはらんでいるのですが、技術ではなくそれをコントロールする人間というものの理性を信じていたような感じがあると思います。
そういう理性を信じる姿勢というのを、ホーガンは継いでいるような気がしています。
本作のテーマもまさにその通りで、理性や自由というものを信じている姿勢が出ていると思います。
けれども小説としておもしろいかというと、どうもポリティカル・サスペンスというのはホーガンにはあまり合わないような気がしました。
やはりSFのほうが彼のセンスが活きるような気がします。
それよりもこの数年彼の新作を見かけないのですけれど、邦訳されていないのですよね。
東京創元社さん、よろしくお願いします。
「ミラー・メイズ<上>」ジェイムズ・P・ホーガン著 東京創元社 文庫 ISBN4-488-66313-3
「ミラー・メイズ<下>」ジェイムズ・P・ホーガン著 東京創元社 文庫 ISBN4-488-66314-1
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