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2009年1月 3日 (土)

本 「テンペスト」

「テンペスト」と言っても、あのイギリスの文豪の作品ではありません。
こちらの作品は、池上永一さんが書かれた「テンペスト」です。
舞台はかつての琉球王国、時代は日本本土では幕末の時代。
琉球王国は清と日本の間にあるために、両国との関係性のバランスを上手くとりながら長らえてきました。
けれども清が英国に破れ、日本も欧米諸国より開国の圧力を受けているという状況の中、琉球王国自体も嵐のさなかのような時代の流れに押し流されていきます。
そのような琉球王国の宮廷が物語の主な舞台。
けれどもいわゆる歴史小説のような重さはなく、かなり気軽に読んでいけます。
どちらかというと琉球王国の宮廷を舞台にした恋愛小説といったほうがいいかもしれません。
上巻の帯にある「ベルばらの琉球版か」という宗田理さんの言葉は言い得て妙です。

タイトルのtempestというのは嵐という意味なんですね。
本作はまさに嵐のさなかのように怒濤の如く物語が進んでいきます。
作者の池上永一さんが書かれた「シャングリ・ラ」もそうでしたが、かなり情報量やアイデアが詰め込まれているにも関わらず、基本的にはコミックのような展開なので読むのはつらくありません。
読みやすさという点ではライト・ノベルに近い感覚もあります。
登場するキャラクター造形は、まさにライト・ノベルという感じで歴史小説の風格みたいなものはほとんど感じません。
どちらかというと軽い感じがするので、歴史小説と思って手に取った方は肩すかしのように感じるかもしれません。
登場人物がアニメっぽいというか、コミックっぽいところがあるので、その辺りが好きずきが分かれるポイントになるでしょうね。
僕も「シャングリ・ラ」を読んだ時はSF小説のつもりで読んでいたら、けっこう軽くて違和感を感じたものでした。
そのあたりこの作者の作風だと思ってしまえば気にならなくなるのですが、最初はとまどうかもしれません。
逆にライト・ノベルから小説を読み始めたような若い読者には取っ付きやすい歴史もののような感じもします。

池上永一作品「レキオス」の記事はこちら→

「テンペスト<上> 若夏の巻」池上永一著 角川書店 ハードカバー ISBN978-4-04-873868-2
「テンペスト<下> 花風の巻」池上永一著 角川書店 ハードカバー ISBN978-4-04-873869-9

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» テンペスト(上・下) [勝手に書評]
タイトル : テンペスト(上・下) 著者 : 池上永一 出版社 : 角川書店 出版年: 2008年 ---感想--- 日本では幕末の時代の琉球王朝の模様を描いた小説。美少女宦官真鶴の過酷で、波乱万丈な人生を描いています・・・、って言うか、美少女なんで、宦官と言うのは意味不明なんですが、とある事情で美少女である真鶴が宦官を偽らなくてはならなかったと言う事が、この本の大きな設定になっています。でも、その身分の偽りが、結構大変な事なんですけどね。 琉球王朝の事を描いているので、役人の官位などに琉球の言... [続きを読む]

受信: 2010年5月16日 (日) 21時28分

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