本 「容疑者Xの献身」
やはり東野圭吾さんは長編の方が合っているような気がします。
さらさらと読みやすい文体なので、短編だと読んだ充足感がちょっと薄いんですよね。
歯ごたえがない感じと言いましょうか。
けれども長編だとその読みやすさによってリズムよく一冊読めるので、そして読書の満足感もあるという感じがします。
こちらは今年の秋に映画化された「容疑者Xの献身」の原作になります。
映画の方はほぼ本作に忠実に映画化したようで、事件のトリックや人物の性格付けなどは変わっていません。
先に映画を観てしまったため結末を知っていたため、本作を読んで驚くことはなかったのですが、こちらの作品を始めに読んだらやはりこの結末はびっくりしたと思います。
ラストのシーンはやはり映画で石神を演じた堤真一さんの演技がどうしてもオーバーラップしてしまいます。
原作と映画が唯一違うのは草薙というキャラクターの扱い。
ドラマ・映画は内海薫という新人女性刑事が湯川と組みますが、原作は草薙が相棒になります。
やはり湯川の相手が年下の女性か、同期で友人である男性かというので、湯川のキャラクターの表現のされ方が変わりますね。
原作で印象深いのは、湯川が石神の犯罪のトリックを見破り、その事実に苦しんでいる場面です。
それを湯川が草薙に話すシーンがあります。
(湯川)「僕は友人としての君に話したわけで、刑事に話したんじゃない。この話に基づいて君が捜査を行うというなら、今後、友人関係は解消させてもらう」
<中略>
(草薙)「もしいつまで経っても花岡靖子が自首してこないのなら、俺は捜査を始めるしかない。たとえおまえとの友人関係を壊してでも」
(湯川)「そうだろうな」
ここは映画でも似たようなシーンがありましたが、やはり草薙というキャラクターだからこそこのシーンが生きていると思います。
湯川の石神に対する友情そして無念に対し、草薙は半端にそれを受け止めるのではなく、刑事として友人としてそれを真正面に真摯に受け止めています。
湯川も草薙が友情にほだされて刑事の職務を全うしないなどとは思っていません。
ああいうひねくれた言い方でないと自分の悩みを口に出せない湯川という人物を、草薙がきちんと受け止めているという気がします。
ここのシーンは原作の方が良かったですね。
ガリレオシリーズは「ガリレオの苦悩」「聖女の救済」と立て続けに単行本が年末に発売されました。
こちらの方もいずれ読んでみたいと思います。
東野圭吾、探偵ガリレオシリーズ長編第二弾「聖女の救済」の記事はこちら→
東野圭吾、探偵ガリレオシリーズ「探偵ガリレオ」の記事はこちら→
東野圭吾、探偵ガリレオシリーズ「予知夢」の記事はこちら→
映画「容疑者Xの献身」の記事はこちら→
「容疑者Xの献身」東野圭吾著 文藝春秋 文庫 ISBN978-4-16-711012-3
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受信: 2008年12月30日 (火) 21時47分
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ミステリーなので、あまり詳しく書けませんが、途中までは推理ものとしてはごくオー... [続きを読む]
受信: 2009年1月 2日 (金) 23時12分
» 『容疑者xの献身』 東野圭吾 [【徒然なるままに・・・】]
結局「探偵ガリレオ」シリーズの内、文庫で出ている作品は全部読んでしまいました。
前2作とは違って、こちらはシリーズ初の長編作品だとか。
湯川と草薙のコンビが難事件に挑むというスタイルは変りませんけれども、これまでの作品とは随分と趣が違います。オカルトじみた不可思議犯罪ではなく、容疑者に完璧なアリバイがあるという本格的なサスペンス物で、あの湯川が「天才」と認めた大学時代の友人・石神というライバルキャラクターが、二人の前に立ちはだかります。
かつては天才数学者と呼ばれながら、今はしがない高校の... [続きを読む]
受信: 2009年1月 3日 (土) 12時55分
» 容疑者Xの献身 [Akira's VOICE]
東野圭吾 著
[続きを読む]
受信: 2009年1月 3日 (土) 18時26分
» 容疑者Xの献身 (東野 圭吾) [花ごよみ]
運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。
これほど深い愛情に、
これまで出会ったことがなかった。
いやそもそも、この世に存在することすら知らなかった。
男がどこまで深く女を愛せるものか。
どれほど大きな犠牲を払えるものか――。
装丁帯より
……………………………………………………………………
「容疑者X」の究極の純愛、
天才が考え出... [続きを読む]
受信: 2009年1月 3日 (土) 19時31分
» 東野圭吾の「容疑者Xの献身」を読んだ! [とんとん・にっき]
著者の東野圭吾は、略歴によると、1958年大阪生まれ、大阪府立大学電気工学科卒業。「放課後」で江戸川乱歩賞、「秘密」で日本推理作家協会賞を受賞、とあります。作家には珍しく、工学系の出身なんですね。そう、ミステリ作家、東野圭吾の代表作?と言われている「秘密」... [続きを読む]
受信: 2009年1月 3日 (土) 23時50分
» 『容疑者Xの献身』 東野圭吾 文藝春秋 [みかんのReading Diary♪]
容疑者Xの献身
『探偵ガリレオ』『予知夢』のガリレオシリーズの3作目。
今回は初の長編となっている。
高校教師を務める石神はかつては天才数学者と噂されていた人物。その彼の住むアパートの隣人女性に想いを寄せていたがその女性親子が犯罪を犯してしまう。いち早くその事に気付いた石神は数学者の知識をフルに使い、母子の完璧なアリバイを作りあげ守ろうとする。
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受信: 2009年1月 4日 (日) 00時38分
» 「容疑者Xの献身」東野 圭吾 [デリシャスな本棚]
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受信: 2009年1月 4日 (日) 11時02分
» 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 [おいしい本箱Diary]
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受信: 2009年1月 4日 (日) 20時32分
» 容疑者Xの献身〔東野圭吾〕 [まったり読書日記]
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受信: 2009年1月 5日 (月) 19時37分
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» 東野圭吾 『容疑者Xの献身』 [映画な日々。読書な日々。]
容疑者Xの献身/東野 圭吾
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図書館の予約がなかなかまわってきそうもなかったのですが、会社の先輩が貸してくれました。
評判どおり、とてもおもしろかったです。傑作です。久しぶりに時間も忘れて一気に読みました。
昔は本を読むのが下手... [続きを読む]
受信: 2009年1月 7日 (水) 22時06分
» 容疑者Xの献身/東野圭吾 [Book] [miyukichin’mu*me*mo*]
東野圭吾:著 『容疑者Xの献身』
容疑者Xの献身文藝春秋このアイテムの詳細を見る
『白夜行』『幻夜』の読後感が好きじゃなかったこともあって、
なんとなくしばらく遠ざかっていた東野さんですが、
2005年下半期の直木賞受賞作ってことで、
読んでみました(図書館5ヵ月待ちでしたが 笑)
で、やっぱり上手いですねー。
読者を引っ張るツボを心得てるし、構成力も安定しているし。
途中でやめることができず、
最後までほぼ一気に読んでしまいました。
トリックも、すごく“らしい”です。... [続きを読む]
受信: 2010年3月16日 (火) 20時12分
» 容疑者Xの献身 / 東野圭吾 [ねこやま]
抜粋
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は、
愛した女を守るため完全犯罪を目論む…。
数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリー。
これっっっっっはよかったっっ
これぞ純愛
ひさびさにきたな。
天才数学者の石神は、頭が薄くて小...... [続きを読む]
受信: 2011年5月 5日 (木) 07時36分
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