本 「武士道シックスティーン」
同じ高校の剣道部に所属する香織と早苗。
香織は幼い頃より父に剣道を教わり、宮本武蔵の「五輪書」を愛読書とする女子高生。
昔の日本男児のような性格で、戦い方は剛。
かたや早苗はずっと日舞を習っていたけれども、中学生から剣道に転向。
いまどきの女子高生らしい性格で、その戦い方は柔。
性格も戦い方も違う二人がライバルとなりながら、成長していくという王道中の王道のスポーツ青春小説です。
ベタと言えばベタなのですが、その王道な感じが心地よく、サラサラと読めます。
とはいえおもしろくないわけではなく、対照的な二人の成長を小気味よく読ませてくれます。
二人はものの考え方やスタイルが真逆ですが、次第に相手の良さというのに気づいていきます。
そして互いに共鳴し、それぞれの戦いのスタイルも進化していきます。
本作を読んで改めて考えたのが、「中道」「中庸」という考え方。
若い頃は「中道」という考え方は「どっちつかず」な中途半端なような気がしてあまり好きではありませんでした。
白黒はっきりつけるのが正しいだろうと。
けれどいろいろと人生経験を積むにつれ、「中道」「中庸」というのが良き道なような気がしています。
僕は「中道」というのは「どっちつかず」ではなく、両極どっちの考え方も考慮した上で最もバランスのいい最適な道を選ぶことだと考えています。
「片方聞いて沙汰するな」じゃないですが、一つの考え方に凝り固まっていてはいずれ壁にぶつかります。
いろいろな意見を聞き考え、それぞれの良いところ悪いところを検討し、最も最適な道を選択する。
これが「中道」。
本作の香織も早苗も、それぞれのやり方にこだわりがありました。
けれど互いの良さに気づいて、それを取り入れることにより自分のやり方を進化させていきます。
結果的に彼女たちの戦い方は似たようなスタイルになっていきます。
それが「中道」だなという感じがしました。
本作さらさらと読める青春小説ですが、ちょっとそのような人生の考え方みたいなものも感じられたりして。
映画にも向いている作品ではないでしょうか。
本作好評だったようで続編(「武士道セブンティーン」)もあるようですね。
こちらも今度読んでみようと思います。
続編「武士道セブンティーン」の記事はこちら→
さらに続編「武士道エイティーン」の記事はこちら→
誉田哲也さん作品「ジウ」の記事はこちら→
「武士道シックスティーン」誉田哲也著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-325160-7
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コメント
Agehaさん、こんばんは!
誉田さんは最近人気ですよね〜。
僕は誉田さんの作品は本作が初めてで。
有川浩さん系かな〜と思って、「ジウ」を読んだらけっこうハードな描写もあって驚きました。
幅広い作家さんですね。
「ストロベリーナイト」は買ってはあるのですが、まだ手をつけていません〜。
今度読んでみますね。
投稿: はらやん(管理人) | 2010年2月 2日 (火) 22時48分
未見でのコメントで失礼します。
ストロベリーナイト、ソウルケイジと
警察小説が大ヒットして
去年の文庫年間ランキングベスト10にも
顔を出していた誉田さんの青春小説。
GWには映画化の予定があって
もうミニシアター系の劇場ではチラシがでてました。今月の10日ごろには
文芸春秋から文庫新刊で出ます!
ちっちゃくなったのが出たら読もうかなと・・・(こらこら)
投稿: Ageha | 2010年2月 2日 (火) 02時10分