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2008年12月13日 (土)

本 「ユービック」

タイトルにある「ユービック」というのは、作者フィリップ・K・ディックの造語です。
そもそも誰も知らない作者が作った言葉がタイトルというのは、不可思議ですが、この作品ではこの「ユービック」なるものが何なのか(それは物とは限らない)というのが、物語をドライブする力となります。
1992年(この作品が書かれたのは1969年なのでその時からすれば近未来)、予知者<プレコグ>に対抗するために、彼らの能力を相殺する力を持つ反予知者が月に送り込まれました。
しかし彼らは相手の待ち伏せにあい、全滅させられてしまいます。
その中の一人ジョーが目覚めると世の中が様変わりをしていました。
そこはあらゆるものがどんどんと古くなっていく世界となっていたのです。
何が時間逆行現象を起こしてしまったのか。
そしてジョーが行くところに表れる謎のメッセージ、そしてその中にある「ユービック」という言葉の意味は・・・?
主人公が目覚めた世界は明らかに通常の世界ではありません。
それは世界が変質してしまったのか、それともジョーは実は死んでいてその半死状態(この時代は肉体的には死んでも脳活動だけの半死状態で保存されることがある)の世界にいるからなのか。
ディックの小説にはたびたびありますが、主観の危うさというのがここにはあります。
自分が見たり感じたりしている世界が果たして真なのか偽なのか。
この作品の場合は明らかにジョーを取り巻く世界は異常です。
僕たちの暮らすこの世界は基本的にエントロピーは増加していきます。
けれどもジョーを取り巻く世界では物事は反エントロピー的な振る舞いをします。
そしてその反エントロピー的な振る舞いを抑制するのが「ユービック」なのです。
この異常な世界の謎、そして「ユービック」の謎がストーリーを引っ張っていきます。
そのためディックの他の小説よりもストーリーにはっきりと芯があるような感じで読みやすい気がします(とはいえへんてこなこの世界になじめない方も多いとは思いますが)。
しかしディックという人はこのようなへんてこで異常な世界をよく思いつき、それをへんてこな話によくぞまとめあげるものだと感心してしまいます。
そのアイデアは他にはないユニークさを持っていて、だからこそ彼の作品は映画の原案などにされるのでしょうね。
とはいえ、どれもそのまんま映像化しにくいので、ほとんどの作品はいつも大胆に改変されディックらしさは失われているのですけれど。

フィリップ・K・ディック作品「流れよわが涙、と警官は言った」の記事はこちら→

「ユービック」フィリップ・K・ディック著 早川書房 文庫 ISBN978-4-15-010314-9

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