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2008年12月 2日 (火)

本 「ライトジーンの遺産」

もともとソノラマ文庫に収録されていた作品です。
脱線になりますが、いつの間にか朝日ソノラマってなくなってしまったんですねえ。
小説を読み始めたのは、ソノラマ文庫からだったので、ちょっと残念・・・。

さてこちらの作品。
近未来、人類は体内の臓器が崩壊してしまうという現象に直面していました。
かつてライトジーン社は人工臓器を供給し、社会に大きな影響力を与えていましたが、その危険性により解体されてしまいます。
そのライトジーン社が研究のためにつくった人造人間が主人公菊月虹。
人造人間である彼は、人の心を読めたり影響を与えることができるサイファと呼ばれる者でもありました。
本作はこういう背景を持った未来社会を舞台にした連作短編集です。

僕がおもしろいと思ったのはその中の「ダーマキスの皮膚」という作品。
神林長平さんはその作品で、精神と肉体というもの、またコミュニケーションをテーマにすることが多いです。
近代以降、多くの人は精神というのは物理的なものではないと考えています。
肉体というのは手に取って調べることができるけれど、精神はそのようなことはできません。
でも自分を感じる精神は存在するわけで、それ自体を否定することもできない。
なのでなんとなく肉体と精神というのは、別の次元の話というようなことで捉えているのではないでしょうか。
肉体がハードウェア的だとしたら、精神はソフトウェア的なものとイメージできるでしょう。
では精神というのはどこにあるのでしょうか?
脳の中の情報?
けれど神林長平という作家は、精神と肉体がまったく別次元のものと捉えているのではない気がします。
しばしば彼の作品では精神の力が物理的な世界へ影響を与えることを描きますし、また肉体が電脳世界で実体を持っているようなことも書かれています。
たぶん精神と肉体というのはもっと不可分なものとして神林さんは捉えているのではないでしょうか(うまく言えないけれど)。
先ほどあげた短編では「記憶を持った皮膚」というのがでてきます。
なんだか突飛そうにも聞こえますが、肌感とかいう言葉もあるように自分が世界を見ているのは、眼だけではなくて、皮膚だったりするのです。
だって外界と最も接しているのは皮膚ですから。
そこに外界と内面の情報のやり取り、フィードバックがあり、なにかしら記憶やら精神というのがあるというのは何かわかるような気もします。
そもそも精神というのは「この器官にある」と言えるものではないですから。

本作こういった神林さん独特のモノの見方があって、またボリュームもそこそこあるので、とっつきにくいかもしれません。
ただこの方の感じ方というのは他の方にはないところがあるので、ハマれる人はハマれる作家だと思います。

神林長平作品「敵は海賊・A級の敵」の記事はこちら→
神林長平作品「ルナティカン」の記事はこちら→
神林長平作品「あなたの魂に安らぎあれ」の記事はこちら→

「ライトジーンの遺産」神林長平著 早川書房 文庫 ISBN978-4-15-030939-8

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