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2008年11月24日 (月)

「エリザベス」 私は国民と結婚しました

本作は、先日観た「ブーリン家の姉妹」の登場人物アン・ブーリンの娘でイギリス女王となったエリザベスの物語。
エリザベスの治世の間に、イングランドの国力は増しスペインの無敵艦隊を破り、世界の貿易を一手に握るようになっていきます。
けれどもエリザベスが即位した頃のイングランドは、スペインやフランスなどの強国に翻弄され、まだ国内もカトリックとプロテスタントの宗教的対立は解決されておらず安定しているとはいえない状況でした。
映画の中ではエリザベスはメアリーの後を継ぎ女王となるであろうということは予想していたように見えます。
即位したてのときに「争いは好まない」と言っていましたが、彼女の中にはなにかしら理想があったのでしょう。
けれどもいざ王位についてみても、国というのは自分の思うように動かないということをエリザベスは身にしみて理解します。
女であるということもあったでしょう。
また悪名高きアン・ブーリンの娘、妾腹であるということもあったのでしょう。
周囲の貴族たちにとって、エリザベスは女王であってもそれは他国との婚姻関係を結ぶことによって、イングランドの地位を保とうとするための駒でしかないのです。
国を含めて組織というものは大きくなればなるほど、多くの人が関わるシステムとなっていきます。
最終的な意思決定者であっても、そのシステムの中に組み込まれざるをえません。
王という地位もそれは国というシステムを動かす仕組みの一部なのです。
最高意思決定者が傀儡とか、御神輿になってしまうことがあるのはそういうためなのです。
そうならないためにはその地位にいる人間が強い意志を持たなくてはいけません。
エリザベスという女性は、その強い意志を持っていた人物でした。
けれどもそれには代償が伴います。
王という役割を果たすには、普通の女性としての生活は犠牲にせざるをえなかったのです。
強い意志をもって国を経営していくためには、その判断に私情というものが入ってはいけません。
もしかするとエリザベスの脳裏には、ある種自分勝手に政治や宗教を利用し、周りの者を不幸にした父親ヘンリーの生き方が反面教師としてあったのかもしれません。
劇中ではエリザベスはヘンリーに対して尊敬の意を持っているように見えますが、そのようなこともあったのではないかなと思いました。
ラストのシーンで、エリザベスは髪を切り、そしてその顔を真っ白に塗りたくった姿で現れます。
それは一人の女性としての存在を止め、絶対王政の最高意思決定者としての王、国家経営の「機関」として生きるという彼女の意志を表しているように思えました。
それが「国民と結婚した」という彼女の発言に現れているのでしょう。

エリザベスの母親アン・ブーリンを描いた作品「ブーリン家の姉妹」の記事はこちら→

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コメント

ノルウェーまだ〜むさん、こんにちは!

いいですねー、そういうところを実際に訪れると感慨深いでしょうね。
何百年か前にはその時代の人々が生きていたわけですから。
たしかに、歴史上の人物は同じ名前の人が多いですよね。
男性でも「ヘンリー、どの?」みたいな感じです(笑)。

投稿: はらやん(管理人) | 2010年9月11日 (土) 07時35分

はらやんさん、こんばんわ☆
この前スコットランドへ旅行して、「エリザベス」の撮影も行われたアニック城を訪れました。
「ブーリン家の姉妹」「エリザベス」そしてスコットランド女王メアリーの伝記など読んで、すっかりその時代にはまっています。
でもメアリーが多すぎて、混乱しちゃう(汗)

投稿: ノルウェーまだ~む | 2010年9月 9日 (木) 04時41分

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ゆかりの地をたずねてシリーズ、第14弾は「エリザベス」 念願のスコットランド旅行で、行くならココ!って決めていたのだ。 [続きを読む]

受信: 2010年9月 9日 (木) 04時36分

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