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2008年11月24日 (月)

本 「クライマーズ・ハイ」

今年の夏に映画にもなった「クライマーズ・ハイ」の原作本を読みました。
御巣鷹山の日航機墜落事故と、その報道の喧噪の中での北関東新聞の記者たちの様子を描くという点では原作も映画も同様です。
映画の方では「金融腐食列島<呪縛>」や「突入せよ、あさま山荘事件」などを作った原田監督らしく、悠木を主人公としながらも事故に翻弄される新聞社全体をダイナミックに描いていました。
原作は主要なエピソードは映画と変わりがありませんが、より主人公悠木という男を深く深く描いております。
日航事件の全権デスクとなった映画の悠木は、毅然と言える態度で(多少の迷いがあったとしても)事故報道に立ち向かいます。
堤真一さんの演技もあり、頼れる男のようなイメージがありましたが、その分悠木の持っている迷いというものはやや薄くなっていたような気がします。
ややもすると現代のシーンである衝立岩へのアタックの意味合いが薄く感じられたりもしました。
原作の悠木は、今までの生き方、それは記者としての生き方、親としての生き方に対して何か迷いのような苛立ちのようなものを持っています。
特に息子との関係においては、どこか不器用で愛情表現ができず、愛していてもいるが、何か扱いづらく距離をおいてしまう感じがでています。
原作では日航全権デスクとしての記者の顔、親としての家庭の顔の悠木が描かれ、それらへの自分の関わり方を見いだせない男として描写されています。
それが現代シーンの衝立岩の登攀へとオーバーラップするのです。
映画の方は悠木の二つの側面のうちの記者の顔のほうに比重を置いた描き方になっていたと思います。
映画としてはこれは正しい判断で、両方をしっかりと描こうとした場合、時間がいくらあっても足りなかったと思います。

映画にはなかった望月彩子のエピソードがよかった。
小説を読んで久しぶりに泣けました。
重い命、軽い命、それは誰が決めるのか。
答えは出ない問いなのかもしれません。
けれどそれを問い続けるのが記者という仕事なのかもしれないですね。

映画化作品「クライマーズ・ハイ」の記事はこちら→
横山秀夫さん作品「半落ち」の記事はこちら→

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫著 文藝春秋 文庫 ISBN4-16-765903-4

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コメント

くまんちゅうさん、こんばんは!

僕もこちらが初めての横山秀夫さんの作品です。
先に映画を観ていたのですが、小説はまた別の深みがありました。
くまんちゅうさんがおっしゃるように小説は悠木の不器用さというか、家族との関係を作れないところも深く描かれていましたね。
それだから衝立岩への挑戦がより意味があるものになっていた気がしました。
NHKのドラマの方はレンタルしているのかなあ。
みつけたら観てみたいと思います。

投稿: はらやん | 2008年12月 3日 (水) 23時14分

こちらにもコメントさせて下さい
この作品は映画化前から、
いや出版当初から大好きな作品でした
これから横山ファンになったので
思い入れが有る作品です。
映画化と来た時点で危惧していたんですが
映画は酷いという事もなくまあまあ仕方ない
という造り方でした
映画の感想でも言いましたが
家族の描き方が変えられていたので
衝立岩の感動が薄かったですね
ちなみにNHKがドラマ化したものは
原作通りに作ってありますのでお薦めです

投稿: くまんちゅう | 2008年12月 3日 (水) 00時03分

hitoさん、こんばんは!

僕は初めて横山秀夫さんの作品読みました。
とても文章が上手な方で驚きました。
新聞記者をされていたからかな・・・。

佐山の記事は映画でも使っていましたよね。
この文章は小説でもとても印象的でした。
横山さんはこういう文章を記者時代に新聞に載せたかったのかもしれないですね。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年11月29日 (土) 22時45分

横山作品の中で一番好きです。

実際に起こった日航機事故のことが触れてある小説には泣かされることがほとんどで、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽 御巣鷹山篇」以来の大泣きだったような気がします。

映画もとても良かったと思います~原作では出せない映像ならではの迫力や駆け引きでのドキドキした感じがとても現われていましたよね~

私は佐山の記事「若き自衛官は・・」これが一番印象的です。

投稿: hito | 2008年11月27日 (木) 11時41分

SOARさん、こんばんは!

原作小説は基本的に悠木の主観視点で書かれてたので、悠木の内面というのが描きやすかったのでしょうね。
映画は客観視点が強くなるので、あえて悠木個人の内面を原作ほどにはあえて踏み込まなかったのでしょうね。
そのぶん集団劇としての迫力は原作よりも出ていたように思います。
望月彩子のエピソードをオミットしてしまったため、映画のラストはやや唐突感はありましたよね。
息子との気持ちの行き違いみたいなところももう少し描かれていれば衝立岩の登攀と、ラストはもっと活きたかもしれませんね。

投稿: はらやん | 2008年11月24日 (月) 19時24分

こんばんは。ご無沙汰しております。
原作、TVドラマ、そして映画とそれぞれに見どころがあり、三度楽しめました。
それでもやはり一番深いのはこの原作だと思います。事故当時の悠木と現在の悠木、どちらの彼も遭遇する様々な状況に対し思い悩む中で決断を迫られます。
はらやんさんのおっしゃる望月彩子の存在と彼女の行動言動は、そんな悠木を描く上で非常に重要のはずで、映画でオミットされてしまったことが残念でなりません。
原作小説とその映像作品とを比較しての良し悪しを語るべきではないのかもしれませんが・・・。

投稿: SOAR | 2008年11月24日 (月) 18時27分

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  ☆本プロからの移行☆  2006/7/1 読了 8月12日御巣鷹山に日航機が墜落した。同僚の安西と山に登る予定だった悠木は、日航全権デスクに任命された。慌しい時間を過ごした後に安西が倒れ病院にいると聞かされた。 かつてない大きな事故に直面して、スクープ、部下、上... [続きを読む]

受信: 2008年11月27日 (木) 11時35分

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受信: 2011年8月 7日 (日) 11時31分

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