「ブロークン・アロー」 戦いを目的とする男
昨日試写会で観てきた「レッドクリフ PartⅠ」がかなり欲求不満だったので、ジョン・ウー監督作品の中でも好きな「ブロークン・アロー」を観ました。
ジョン・ウーというと「MI:2」とか「フェイス/オフ」が話題にあがりますが(もちろんこれらの作品も好き)、僕は「ブロークン・アロー」も好きなんです。
この作品の良さはやはりシナリオだと思います。
脚本家はグラハム・ヨストで、あの「スピード」の脚本を手がけた人ですね。
「スピード」は次から次へと息もつかせぬほどに危機また危機が主人公におとずれ、観ている側はハラハラしっぱなしでしたが、本作「ブロークン・アロー」でもその緊張感が味わえます。
グラハム・ヨストはいい脚本家だと思うのですが、「フラッド」以降は名前を聞いていないですね。
引退しちゃったのかな。
惜しい・・・。
本作はやや脚本や編集に荒っぽいところはあるのですが、それを差し引いてもあまりあるスピード感あふれる展開が楽しめる映画だと思います。
だいたい100分くらいの作品ですが、ジョン・ウーはこのくらいの長さが合っていると思うんですよね(「レッドクリフ」は長過ぎ、終わらないし)。
スローモーションとかズームとか、彼のややもするとあざとい演出(僕はこれが好きなのですが)は、テンポのいい作品の方が活かされると思います。
あの演出は非現実的なアクションの方が似合うんです。
最近のジョン・ウーの作品があまりおもしろくないのは、以前のような思い切りがなくなり、なんだか普通の監督になってしまったようなところにあるのかもしれません。
あと本作見所はジョン・トラボルタ演じるディーケンズというキャラクターでしょう。
トラボルタが活き活きと悪役を演じています。
彼が演じるディーケンズという男は、アメリカ空軍の核爆弾を搭載した爆撃機のパイロット。
ディーケンズはその核爆弾を盗み、アメリカ政府から金を脅し取ろうとします。
彼は自分を評価しない軍に対しての反目から、そのような行為に至ったように見えます。
けれど理由はそれだけではないのでしょう。
ディーケンズは湾岸戦争で100回も出撃したと言っています。
彼は戦うこと、その興奮の味を覚え、それを忘れられなくなったのだと思います。
湾岸戦争後、通常の軍の任務では演習はあっても本当の戦いはありません。
彼はそのような平穏な時が苦痛だったのに違いありません。
このディーケンズというキャラクターからは、別の作品のキャラクターが想起されます。
そう、グラハム・ヨストが書いた「スピード」の主人公ジャックです。
彼は犯罪者と戦っていますが、その理由は任務ということの他に、そもそもがそういう危険な場面にいることに興奮を覚える男だからなのでしょう(劇中アニーにも指摘されている)。
アドレナリン中毒ともいえる危険への指向は、ジャックはそれが犯罪者との戦いという方向に働きますが、本作のディーケンズは犯罪という方向に向かいます。
ディーケンズは作品のラストの方では、金への執着がほとんどないことがわかります。
彼を元相棒のヘイルが追いつめた時、ディーケンズの顔に浮かんだ表情は笑みでした。
彼は好敵手と戦い続けることが楽しかったのでしょう。
ディーケンズの目的は、金などではなく、戦い続けることでした。
本作おもしろいと思うんだけどな・・・。
あまり評価している人が少なくて、ちょっと寂しい。
観ていない方がいらっしゃったら、是非ご覧になってください。
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