「ブリュレ」 やりたいことはわかるけれど・・・
シネトレさんのブロガー限定試写会に行ってきました。
無料で見せていただいて心苦しいのですが、今回とても辛口です。
すみません・・・。
率直に言えば、作り手のやりたいことはわかるけれど、それを表現できるほどに完成度があがっていないという印象です。
タイトルの「ブリュレ」という言葉は、クレームブリュレなどの洋菓子でもおなじみですが、「焦がす」という意味です。
主人公の双子の姉妹日名子と水那子は幼いころに親を火事で亡くし、それぞれ叔父と祖母にひきとられ別々に育てられます。
そしてあるとき日名子のもとを突然水那子が訪れます。
日名子は放火癖を持っていて彼女の起こした火事によって、二人は逃避行を始めます。
ずっと離れていた双子の姉妹の間にある強い絆。
互いを想う焦がれるような気持ち。
火というモチーフ、そしてタイトルの「ブリュレ」にはそのような意味が込められているのだと考えられます。
けれど。
それならば二人の間にある気持ちを、もっともっと切実に、ジリジリと焦げるような狂おしさをもって表現して欲しかったです。
そこまでにならなかったのは、まず一つは演技の問題。
主演の二人の演技がそのような想いを表現するレベルまでに至っていないような気がしました。
台詞回し、場面に応じた表情などに課題が見られます。
インディーズの場合は、あまり有名ではない、俳優ですらない方を起用することは多々ありますが、その場合は演技をしない(できない)迫力というものがあります。
けれども彼女たちは芝居をしようとはしていて、それだからこそ表現しきれていないところが目についてしまいます。
もう一つは脚本。
前半に状況説明を台詞で行う箇所が多く、これによってやや興ざめしてしまいました。
台詞はその登場人物が自然に発するようなものではないと、どうしても不自然さを感じ作品世界に入るのを妨げられます。
あと元キックボクサーと日名子の幼なじみがほとんど登場人物として効いていません。
この二人は主人公姉妹の交通手段となってしまっています。
交通手段として割り切っている登場人物でもいいのですが、それぞれ意味ありの台詞を口にするので、これもまた中途半端な関わり方になっています。
あと水那子の最後の台詞もいただけなかった。
あまりに唐突感がありました。
この台詞は高校生は言わないと思います。
上に書いたように台詞は登場人物が自然に発すると考えられる言葉でないといけません。
そうでないとこれは脚本の要請によって言わされているように感じられ、それに気づいた瞬間に作品世界から引き戻されてしまうのです。
どうも脚本がコンセプチュアルに作られすぎているような気がしました。
学生の頃、サークルで自主映画作りに関わっていました。
そのときに思ったのですが、自主映画やインディーズというのは、ややもすると独りよがりになりがちです。
映画がアート(つまり自己表現の手段)なのか、エンターテインメントなのかという議論はさておき、観客が見せるからには、独りよがりはいけません。
わかるやつだけわかればいい、自分が作りたいから作るというスタンスは、僕自身はあまり好きではありません。
伝えたいから作るのだから、与えられた条件の中で伝えるために最善の策をとらなければなりません。
そういう意味で本作は、脚本などについてはもう少しやりようがあったのではないかと思うわけです。
製作費が少ないという懐事情もあるでしょう。
それもわかったうえであえて苦言を呈させていただきました。
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コメント
咲太郎さん、こんにちは!
気になるところが多くて、作品そのものに入ることができなかったという感じでした。
映像自体はそれほど悪いとは思わなかったのですけれども。
やや作り手の想いが強すぎ、それが出てしまいすぎている感じがしてしまいました。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年11月23日 (日) 06時57分
他の皆さんが仰るように、辛口ではない
と思います。
映画の感じ方は人それぞれ、正解はないと思います。
役と台詞の不自然な関係の指摘は「なるほど」と思いました。
私は脚本のそんな細かい矛盾よりも、やはり映像に魅せられた一人です。
投稿: 咲太郎 | 2008年11月20日 (木) 00時32分
maru♪さん、こんばんは!
監督の撮りたい画というのが先にあったような気もします。
試写会あとの監督のお話で、双子の姉妹の写真にインスパイアされたとおっしゃっていましたね。
maru♪さんのおっしゃるようにお風呂や教会、最後の浜のシーンはそんな感じがしますね。
みちのくキックは?だったですね。
重要なのか、そうでないのか、ちょっと中途半端でした。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年10月 9日 (木) 22時59分
あ! TBできました(笑)

『おくりびと』にも出来てました
何だろうエラーって表示されたんですけど・・・。
とりあえずTBできてよかった
辛口・・・ではないと思います。
はらやんさんの書かれていることよく分かります。
特にみちのくキックは中途半端な気がしました。
取ってつけたような理由で去ってしまうし(笑)
自分の記事にも書きましたが"映像"を見たという印象でした。
でも、それがちょっと良かったんですよね。
ちょっとどうかなぁと思うシーンもあったんですけど、
お風呂とか狙いすぎかなぁと・・・(笑)
投稿: maru♪ | 2008年10月 9日 (木) 00時48分
rose_chocolatさん、こんばんは!
ちょっと辛口でしたね、すみません。
脚本と芝居はやっぱり厳しかった気はします。
インディーズというのは知り合いの中でこじんまりとなりがちなので、逆に厳しい目にさらされくいこともあります。
なんとなく本作にはそういう空気を感じてしまったんですよね。
自主映画のとき、そういう作品作る人、多かったんですよ。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年10月 7日 (火) 21時25分
試写会お疲れ様でした。
辛口。。。 すごく難しい所ですが、はらやんさんが言わんとされていること、とってもよくわかります。
実際に映画制作に携わっておられたご経験があるからこそのご意見、なるほどと思いながら読ませていただきました。
投稿: rose_chocolat | 2008年10月 5日 (日) 23時45分