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2008年10月18日 (土)

「ヴィドック」 フランスの実相寺昭雄

「デリカテッセン」や「エイリアン4」でビジュアル・エフェクトを担当したピトフによる長編映画です。
はっきり言ってストーリーにはいろいろと言いたいところがあるのですが、映像は非常に個性的なところがあるように思えました。

タイトルにあるヴィドックというのは18世紀のパリに実際にいた人物で、彼はもともとは犯罪者でありながらパリ警視庁の基礎を作り、そして世界初の探偵事務所を設立しました。
彼の存在はその後の探偵小説の成立に影響を与えたとも言われています。
本作ではそのヴィドックが、謎の仮面の男と対決し、死んでしまうシーンから始まります。
ストーリーはヴィドックの伝記を書こうとしているエチエンヌという若い作家がこの事件の真相を探るべく、ヴィドックの足取りを追っていく様子とともに展開していきます。
作品は耽美的、退廃的な雰囲気がただよっているオカルト色の強い世界観。
そこで連続猟奇的殺人の謎が次第に明らかになり、そしてそこにはその犯人と思しき鏡の仮面の男の姿が表れてきます。
ネタばれになるので書きませんが、その犯人を解き明かすところ、そしてその正体は驚きましたが、やや安易な感じもしました。
オカルティックで幻想的な雰囲気がそこで一気に普通の事件になりさがってしまったような気もしたのです。
犯人の一連の行動は証拠隠滅のためのものであり、超常的な力を持っているように見受けられる仮面の男としてはとても現実的という感じがしたのです。
超常現象の皮をかぶった本格ミステリーにするか、あくまで超常現象をテーマにしたオカルトにするかがどうも中途半端だったような気がします。
その中途半端さがラストの犯人明かしのところに出てしまい、微妙なズレ感みたいなものをもってしまいました。

映像に関しては冒頭に書いたようにとてもこだわりを感じました。
「デリカテッセン」「エイリアン4」もあのジトジト陰々滅々とした感じが特徴的でしたが、本作でもそのような雰囲気がでています。
これは苦手な方は苦手な雰囲気でしょうね。
またこちらの作品は本格的にデジタル撮影を試みた作品ということで(その後このような作品はたくさん作られますが)、フィルムとは違った質感がでているような気がしました。
本作を観ていてイメージとして浮かんできたのは実相寺昭雄監督でした。
細部を比べれば全く違うのですが、画作りへのこだわりみたいなものにピトフと実相寺昭雄監督には共通点を感じたのです。
例えば、画面の構図などはかなり凝ったものが多い。
手前に人物を画面の半分くらいになるように置くという構図、また顔の一部分を大きく映すようなカットは実相寺昭雄監督が好んで使っていました。
引きの画にしてもデジタルで合成をやっているのだと思いますが、絵画的なレイアウトを意識しているような場所がいくつもありました。
このときの空の色などかなり作り込んでいて、フィルムとは違う幻想的な雰囲気がでていたと思います。
このあたりも実相寺昭雄監督が「帝都物語」でいろいろ試みをしていたような感じと似たものを感じました。
光と陰を極端に使うというのもピトフ、実相寺は共通しているような気がします。
アメリカの映画のようなきれいになんでも見せるというのとは、違うところを意識しているような感じがします。
本作ではヴィドックの死を追うパリの警察の刑事が出てきます。
その刑事がいつもハンカチで口の上を拭いているのです。
やや偏執的な癖なのですが、これも実相寺昭雄監督の作品に登場する人物を思い出させました。
「ウルトラセブン」の「第四惑星の悪夢」の中に登場するロボット署長です。
こちらもずっと口の中にキャンディー(?)をいれ、それをこりこりとやっているのですが、この仕草を実相寺監督は執拗に映します。
それによりこの人物の偏執狂的な感じを出しているのですが、同じようなことを「ヴィドック」でも感じました。

ピトフ監督が実相寺作品を観ているかどうかはさだかではないのですが、映像に関してのそれこそ偏執狂的なこだわりというものは二人に共通して感じました。
見比べてみてはいかがでしょうか。
(どちらの監督の作品もとても趣味的ではありますが)。

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