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2008年9月27日 (土)

本 「占星師アフサンの遠見鏡」

恐竜が主人公の小説は以前に「さらば、愛しき鈎爪」(恐竜が主人公のハードボイルド!)という作品を読んだことがありますが、そもそも珍しいですよね。
本作の著者ロバート・J・ソウヤーは好きな作家なので、こちらのブログでもしばしば紹介していますが、「さよならダイノサウルス」という恐竜(とタイムマシン)がテーマの小説を書いています。
本作では恐竜(ティラノサウルスっぽい)が知性を持った世界が舞台になっています。
その世界は僕たちの地球で言えば中世ヨーロッパくらいの文明・技術レベル。
キンタグリオ(その恐竜たちは自分たちのことをこう呼ぶ)は天空に大きな姿を見せる「神の目」を神とあがめる宗教を信じています。
恐竜が主人公というのはあまりにファンタジーな感じがするかもしれませんが、その生態や社会の成り立ち、また後半のSF的な展開はしっかりと考えられているので、読み応えがあります。

<かなりネタばれあり>

タイトルにあるアフサンというのは、若いキンタグリオで、星を観察するのが仕事です。
そして「遠見鏡」というのは、望遠鏡のこと。
彼は望遠鏡を手にし、星を観察していく中で、世界の仕組みを解き明かしていきます。
そして世界の仕組みを知っていく中で、自分たちの大地は球体であること、彼は自分たちがあがめている「神の目」は惑星の一つであること、そして自分たちの住んでいる球体は「神の目」を周回している衛星の一つであることを発見します。
それは彼らの宗教においては冒涜以外のものではなく、アフサンは僧侶たちから迫害をされます。
まさにアフサンはキンタグリオのガリレオのようです。
これだけだと歴史物語を恐竜に置き換えただけなのですが、さすがソウヤー、これにSF的要素をうまく織り込んでいきます。
アフサンはさらに他の惑星を観察しているうちにそれらがリングを持っていることに気づきます。
そしてそのリングは小さな岩でできていること、それらはもともとは衛星で惑星に近づきすぎたために壊れてしまったと類推します。
さらに自分たちの衛星も惑星に近づきすぎており、いづれは崩壊するであろうという結論に達します。
そしてキンタグリオたちが生き延びるためには、自分たちの住む星から脱出しなくてはならないと考え始めます。
作品中では説明されていませんが、描写から「神の目」は木星であり、キンタグリオたちが住む世界はその衛星の一つのように見えます。
本作は3部作の1作目だということ。
2作目以降ではキンタグリオたちの衛星脱出が描かれるのでしょうか。
また先に書いたように「神の目」が木星だとすると、僕たちの地球にかつて存在した恐竜とキンタグリオの関係も気になります。
このあとどのように展開するのでしょうか。
楽しみです。

ロバート・J・ソウヤー作品「ターミナル・エクスペリメント」の記事はこちら→
ロバート・J・ソウヤー作品「さよならダイノサウルス」の記事はこちら→
ロバート・J・ソウヤー作品「イリーガル・エイリアン」の記事はこちら→
ロバート・J・ソウヤー作品「フラッシュフォワード」の記事はこちら→
エリック・ガルシア著「さらば、愛しき鈎爪」の記事はこちら→

「占星術アフサンの遠見鏡」ロバート・J・ソウヤー著 早川書房 文庫 ISBN4-15-011053-0

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