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2008年9月27日 (土)

本 「天を衝く」

高橋克彦氏の陸奥三部作と呼ばれる「炎立つ」「火怨」に続く、「天を衝く」を読みました。
「炎立つ」はNHK大河ドラマにもなりましたが、奥州藤原氏3代を描いた作品。
「火怨」は征夷大将軍坂上田村麻呂に討伐される、蝦夷のアテルイを主人公としています。
本作「天を衝く」では、全国制覇を行おうとする秀吉軍と戦う九戸政実を取り扱っています。

これら三部作は基本的な構造はかなり似通っています。
東北の地に暮らす人々を中央の政権が支配しようと戦いを仕掛けてくる。
それに対し、戦上手で地の利もある奥州側は果敢に迎撃するが、物量に勝る中央軍に次第に追いつめられていき滅ぼされてしまう。
けれども、アテルイにしても、藤原経清にしても、九戸政実にしても、彼らの戦いで勝利できるとは考えていない。
座して滅ぼされるのではなく、東北人としての気概、武士としての誇りというものを、その戦いによって残された人々の心に刻み込むということを考えます。
その心に刻み込まれたものは何年後か、何十年後か、何百年後かに東北人として誇りの持てる国を作れるのではないかという希望を残そうとします。
おもしろいのはその東北人という魂が継承されているのが、生粋の東北人ではないこと。
「火怨」のアテルイは蝦夷出身の侍で、戦ったのは田村麻呂率いる京の中央軍。
「炎立つ」の藤原家はそもそもは、京の藤原家の系譜なんですよね。
アテルイの戦いのときは敵側であったものが、支配者として東北の地に住み付き代を重ねていくうちに次第に中央人ではなく東北人としての魂をもつようになっていったわけです。
また本作「天を衝く」の九戸政実はもともとは源氏の系譜。
源氏は奥州藤原家と戦った相手ですから、これも勝利者側が東北に住み着き、次第に東北人としての意識をもつようになったものです。
そういう意味ではアテルイから続く、奥州の魂というのは、支配する一族や人が変わっていったとしても連綿と受け続けられていったということなのでしょう。
東北人は中央との戦い自体では負けたかもしれない。
でもその魂はずっと受け継がれているわけで、それは実は東北の勝利なのかもしれないと思いました。

この3部作、それぞれの作品としてもおもしろいですが、すべてを読むとよりおもしろさが大きくなると思います。

「天を衝く1」高橋克彦著 講談社 文庫 ISBN4-06-274915-7
「天を衝く2」高橋克彦著 講談社 文庫 ISBN4-06-274916-5
「天を衝く3」高橋克彦著 講談社 文庫 ISBN4-06-274917-3

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