本 「西の魔女が死んだ」
今年映画化された「西の魔女が死んだ」の原作を読みました。
原作を読んでいた方のブログで、映画はかなり原作に雰囲気が似ているということが書いてあったのを見ましたが、確かにその通りでした。
映画を先に観たからかもしれませんが、小説を読んでいてやはりおばあちゃんはサチ・パーカーさんの顔が浮かびましたし、まいは高橋真悠さんを思い浮かべてしまいました。
やさしくまいのことを受け止め、諭し、導いてあげていく小説の中のおばあちゃんも映画で観たおばあちゃんと変わりませんでした。
文章で描写されている小説ならではで、まいが感じたこと、思ったことについては、映画よりさらに伝わってきます。
例えば、こういう描写。
もう一度目が覚めたとき、やはりママの姿がなかったので、突然またあのホームシックに襲われた。
今回のはきっかけが明らかなので、わけもわからず襲われるよりは、まだましだ。しかし、その原始的、暴力的威力は同じで、心臓をギューとわしづかみにされているような、エレベーターでどこまでも落ちていくような痛みを伴うような孤独感を感じる。
これはまいがおばあちゃんの家に来て、そしてまいのママが帰ってしまったときの気持ちを描いた箇所です。
読んでいて、とてもストレートに気持ちが伝わってくるような文章だなと思いました。
この作者の文章はとてもやさしい文体で絵本を繰るようにすらすらと読めるものなのですが、とてもまいの気持ちが素直に伝わってくる書き方をするんですよね。
他にも、まいがゲンジさんに感じる怒りや汚らわしさみたいな気持ち、おばあちゃんとわだかまりを持ったまま別れるときの気持ちなどが、自分がそう感じているかのように伝わってきます。
わりと読みやすい作品なので、子供にも読むのを薦める本としてよいかもしれません。
「認めざるをえない」
まいは小さく呻るように呟いた。この言葉は初めて使う言葉だ。まいはちょっと大人になった気がした。
「それは認めざるをえない」
まいはもう一度呟いた。これですっかりこの言葉を自分のものにできたような気がした。
こういう描写もあるのですが、ここはけっこう子供が知的満足を得る瞬間みたいなものを上手く表現しているような気がします。
この本を読んだ子もそんなことを感じてくれるのではないかな。
映画「西の魔女が死んだ」が気に入った方へ。
この本にはその後のまいについて書かれた短編も収録されています。
ちょっと強くなったまいが登場しますので、こちらも是非読んでみてください。
「西の魔女が死んだ」梨木香歩著 新潮社 ISBN978-4-10-125332-9
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