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2008年8月23日 (土)

本 「エモーショナル・デザイン」

僕はデザインに関係する仕事をずっとやってきましたが、経験的にデザインをするということについてだんだんとわかってきたことがあります。
今はその経験知を使って日々仕事をしていますが、こちらの本にそのあたりのことが整理してまとめてありました。
著者はデザインを
 ・本能レベルのデザイン
 ・行動レベルのデザイン
 ・内省レベルのデザイン
と分類しています。
良いデザインというのはこれらのバランスがうまくとられているというわけです。

本能レベルのデザインというのは、美しいと思ってもらったり、買ってみたいと思ってもらえるような魅力的なデザインということです。
そんなのあたりまえじゃないかというかもしれません。
デザインって美しいものじゃないの?と。
でもマスプロダクトではそうはいかないのです。
会社などでデザインを決めようとするとき、本能レベルのデザインというのを通すのはとても骨が折れるのです。
会社にはいろいろな人がいます。
デザインというのも、会議などで最終的には決まるわけでいろいろな人の意見を聞くうちにどんどんカドがとれて(いわゆる丸くなって)つまらないものになってしまうことがあります。
理屈抜きにこれが美しいじゃないかと言ったとしても、それはなかなか通りにくいのですよね。

行動レベルのデザインというのは、いわゆる使い勝手がいいデザインということです。
本能レベルのデザインで美しいものというのは、時折とても使いにくいものだったりもします。
飾っておくにはいいかもしれませんが、日常使いには向かないものというものがあります。
美しいからいいじゃないかというわけにはいきません。
でもこれはテストなどにより、何がよくないかを明らかにすることはしやすい。
それらの結果などにより、ある意味説明しやすいといえるかもしれません。

内省レベルのデザインというのは、デザインが製品にまつわる物語、コンセプトというものを語れるかということです。
いわゆるブランド価値をデザインが持つということです。
これをデザインで表現するには、とてもコンセプチュアルな作業が事前に必要になります。

これら3つのデザインレベルというのを、デザインするときにはうまくバランスをとってあげなくてはいけない。
特に日常使いの製品は。
技術者系の設計者というのは、比較的行動レベルのデザインを重視しがち。
逆にアーティスト系のデザイナーというのは本能レベルのデザインに重きを置くことが多い。
著者はどちらかというと技術者系のようですね。
著者はずっと行動レベル、内省レベルのデザインというのを重視してきたようですが、この本を書く前あたりから本能レベルのデザインの重要性に気づいたというようなことらしいです。
だから「エモーショナル・デザイン」というタイトルがついたのでしょう。
マスプロダクトというのは得てして行動レベルのデザイン、そしてそれ以外の要素(コストとか)に偏りがちです。
けれどもだれでもより美しかったり、楽しそうだったり、おいしそうだったりするものの方がいいに違いないのです。
それらのデザインレベルを上手くバランスとれるかというのが、デザイン・ディレクターの腕の見せ所と言えるでしょう。
こういうことを確認できた本でした。

「エモーショナル・デザイン」ドナルド・A・ノーマン著 新曜社 ハードカバー ISBN4-7885-0921-0

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