「たみおのしあわせ」 「自分空間」への侵入
予告と作品の印象がけっこう違っていました。
結婚を題材にしたコメディかと思っていたのですけれど。
予期していた印象と違っていたので、テーマとか、メッセージをつかみづらくて戸惑ってしまいました。
そんなわけで、いつもはテーマなどに触れた話を書くのですが、少々違う話を。
この作品の中では、携帯電話を登場人物の周囲の人々が使っている場面が度々あります。
喫茶店の中で、ただひたすらケータイの画面を見ながらメールしている人々。
人と食事をしているのに、電話をかけて中座してしまう人。
彼らは周りの人がいる場所、空間でも、自分のことだけしか気にしていないように見えます。
瞳さん(麻生久美子さん)の台詞で
「ケータイってなんか未練たらしいよね」
っていうものがありましたが、これは名言。
公の場所つまりは他の人と共有している空間であっても、自分の私的な関係、コネクションを未練たらしく持ち込んでしまえるのが、携帯電話なのかもしれません。
ケータイは持ち運べるということによって、「自分空間」を他の人々との共有空間にも持ち込むことを可能にしたのですね。
持ち込む方はそれは便利だし、「未練たらしく」心地よい関係に繋がっていられるので、あまり気にすることはありませんが、持ち込まれる周囲の人々はとても不快な気持ちになるもの(映画館でのケータイの操作はとても不愉快!)
なぜ不快になるかというと、それが自分が関与している空間への、無遠慮な侵入行為と感じるからだと思います。
侵入された側は、不愉快な上、なぜか居心地の悪い気分になってしまうので始末が悪いのです。
ケータイの話をつらつらと書きましたが、この映画は父親と息子の二人の世界への他者の侵入を描いた物語ということができるのかもしれません。
会社の詮索好きの同僚、よくわからん老人たち(ほんと何をしてんだかよくわからなかった)、「屋根裏の散歩者」のような叔父は、父子の生活への無遠慮な侵入者です。
そして父親の恋人である宮地さんも、さらには民男の婚約者の瞳さんでさえも、彼らにとっては彼らの世界への侵入者だったのかもしれません。
明らかに宮地さんは自分の都合で彼らの生活を浸食してますし、瞳さんもはっきりと描かれていませんが自分の事情で動いているような何か問題がありそうな人にも見えます。
伸男、民男の親子は自分たちが15年かけて作っていた居心地のいい「自分空間」を、無遠慮な人々に浸食されたように感じたのかもしれません。
いいか悪いかは別にして自分の作り上げてきたライフスタイル、「自分空間」というものは、そう簡単には変えられないものなんですよね。
結婚というものはそれをチェンジせざるをえないイベントなんですよね。
あ、書きながらやっとなんだか映画のテーマがわかったような気がします・・・。
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久しぶりに大爆笑した!でもそれは劇場でオイラだけだった。
“結婚”という二文字に、盲目的にこだわる息子とオトンの男たち親子の姿が、新鮮でこっけいだ。オダギリジョーと原田芳雄という今昔のイケメンが演じているのが、少々鼻につくが、「・・・なのに結婚できない」とくれば、男性もしくは人間的な欠点を逆に感じさせ、途中からなかなかのキャスティングではないかと思えてきた。そして、まさにダメ親子そのものだった。
... [続きを読む]
受信: 2008年9月 7日 (日) 05時48分
» 【たみおのしあわせ】 [日々のつぶやき]
監督:岩松了
出演:オダギリジョー、原田芳雄、麻生久美子、大竹しのぶ、小林薫、石田えり
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» 映画 【たみおのしあわせ】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「たみおのしあわせ」
岩松了監督・脚本による結婚狂想曲。
おはなし:父と暮らす民男(オダギリジョー)は、女性との付き合いが得意ではない青年。そんな彼が父・伸男(原田芳雄)の上司の紹介で見合いをし、見合い相手の瞳(麻生久美子)と結婚を前提にした交際を始めるが・・・・。
なんでしょうあの結末は?
ナニかあるぞとは思っていたものの、まさかああいうことになるとは!
これは三木聡監督の作品よりも手ごわいというかワケわかんないというか・・・。
まずは、なんでこの父子が今の時代にここまで結婚と... [続きを読む]
受信: 2008年12月31日 (水) 00時07分
» たみおのしあわせ(映画館) [ひるめし。]
結婚しても、しなくても、どのみち君は後悔することになる――ソクラテス [続きを読む]
受信: 2009年1月 1日 (木) 14時38分
» 『たみおのしあわせ』 2008-No60 [映画館で観ましょ♪]
たみおのしあわせはドコにあるんでしょ?
視線・・・結末はこの1枚の写真の中に。
それが解ってもちっともスッキリしない。
... [続きを読む]
受信: 2009年5月12日 (火) 15時43分
» たみおのしあわせ [レンタルだけど映画好き]
結婚しても、しなくても、どのみち君は後悔することになる──ソクラテス
2007年 日本 公開日2008/07/19 レンタル開始日2009/02/06
監督 岩松了
脚本 岩松了
出演 オダギリジョー/麻生久美子/小林薫/冨士眞奈美/川辺久造/横山通乃/藤井びん/本間しげる/光石研/... [続きを読む]
受信: 2009年6月 9日 (火) 00時31分
» たみおのしあわせ [CASA GALARINA]
★★★☆ 2007年/日本 監督/岩松了
「ラストにポカーン」 [続きを読む]
受信: 2009年7月12日 (日) 15時37分
» たみおのしあわせ [にわうたぶろぐ]
「時効警察」コンビがご出演です。そういや監督の岩松了も出ていましたね。
まあそれはこの作品と何も関係なかったわけですが、とりあえず。 [続きを読む]
受信: 2010年4月20日 (火) 23時43分
» たみおのしあわせ [本と映画、ときどき日常]
監督 若松了
出演 オダギリジョー
原田芳雄
麻生久美子
いや〜、最後にあんなすごいパロディーが待っているとは(爆笑
でもこれも愛なんですよね。
お見合いをして結婚をしようとしている2人と、それをとりまく父親やちょっと変わった人達のお話...... [続きを読む]
受信: 2013年8月 6日 (火) 02時28分
コメント
紫さん、こんばんは!
こちらの作品、観ている時はなにがテーマなんだろう?と思いながら観ていたのですが、こちらの記事を書きながらこういうことなのかな?と整理できました。
そうか、やはりあの老人たちは逢い引きしていたんですねー。
そうかなーとも思ったのですが、お灸をしてたりしてたので、何をしてるんだろと思ってしまいました。
瞳さんも罪な人ですよねー。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年8月27日 (水) 20時42分
はらやんさん、こんにちわ。
いつもTBばかりでスミマセン。
この作品のつかみどころの無さ加減を、見事にはらやんさんが文言にされており、いろいろレビューを拝見しましたが、すごく共感しました~^^
・・・あの老人は‘逢引’してたんだと思います、あそこで。世間の目があってどこでもイチャイチャ出来ないですし。
瞳さんは民男さんがキライではないですが、どうも伸男さんにも異性的な興味があったような・・・。
(私の印象です)
今回もTBさせて頂きました、では。
投稿: 紫(むらさき) | 2008年8月26日 (火) 16時59分
HIROMIさん、こんにちは!
どうもつかみどころがない映画ではありました。
ここで書いている解釈も僕の解釈なので、監督が意識したほんとのところは何かなーと思ったりします。
携帯電話は、僕も苦手なので、いちいちそうそうと頷いてしまいました。
ケータイによってみんなで共有している場にまで私的な空間が広がってしまっているような気がします。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年8月24日 (日) 12時42分
はらやんさん、こんにちわ。
最後の二人の逃走がよく分からなかったのですが、なるほど自分たちの世界を侵す他者から逃げた、と解釈できますね。
私自身携帯が苦手なので、携帯社会への批判が感じられる場面には溜飲を下げました。
投稿: HIROMI | 2008年8月24日 (日) 10時18分