「20世紀少年」 原作漫画を見事に映像化
原作漫画の作者浦沢直樹さんは大好きな作家さんです。
かなり前から(「パイナップル・アーミー」の頃)単行本が出るのを楽しみにして待っています。
その浦沢さんの作品の中でも、最も映画化しにくいだろうなと思っていたのがこの「20世紀少年」。
いや作品としては映画向きの話だと思うんですよね。
ただこれをきちんと映像化できるのかがどうかちょっと不安でありました。
不安な点は3つでした。
1つは長い長い原作を映画としてきちんと脚本に落し込めるかという点。
最近の浦沢作品の傾向としては、チャプターごとに時間軸や中心となる登場人物が変化するのですよね。
それが作品に深みを与えているのですが、これを映画でやろうとすると何かを省略したり、また話の流れをもう少しきれいにしたりしなくてはいけません。
2つめは映像のスケール感。
この作品は人類は世界の終わりのような経験をするわけですが、それをしっかりとクオリティの高い映像にできるかという不安です。
もともとの漫画がかなり映画的な構成になっているので、半端な特撮やCGで作られてしまったら興ざめしてしまいます。
最後にして最大の不安はキャストでした。
原作にはかなりの人数の登場人物がでてきます。
主人公ケンヂだけでなく彼らはそれぞれに作品の中で役割を持ち、重要な役を担っています。
またこれだけの作品となると漫画のキャラクターのイメージも強い。
それぞれ重要な役に見合ったハイクラスのキャスティング、そしてこれは原作のイメージを壊してはいけないという条件が重なるわけで、かなり苦労するのではないかと思いました。
映画を観てみて、それらの不安はかなりの部分で杞憂だったと思いました。
まず1点目の不安については、映画化作品を3部構成にしたということでかなり救われたと思います。
もともとの原作もほぼ3部のような構成になっていますから、その流れを踏襲できます。
また映画の脚本には原作者の浦沢直樹さんも参加しているのですね。
ですので、大きな物語の流れやキャラクターの個性などといったところはほぼ原作どおりのイメージを保てたと思います。
2つ目の不安点も問題なし。
最後の12/31のクライマックスがどうなるかと思いましたが、これまた原作のイメージをそのまま映画にしたような感じがしました。
暗闇に沈む東京の街を破壊していく謎のロボット。
原作でもその姿ははっきりとは描かれず、それだけに不気味な感じがでていたと思いますが、その感じがそのまま映画になっていました。
そして3つ目の不安点、キャスティング。
これは予想以上ではないでしょうか。
実は制作状況の発表の中でキャスティングが明らかになったとき、僕はこの映画は原作を大切にしているなと感じました。
それだけ原作のキャラクターのイメージを活かしたキャスティングをしています。
だいたい一人くらいはなんだか違うという配役があったりするものですが、そういうキャラクターはひとりもいませんでした。
ケンヂの唐沢寿明さん、オッチョの豊川悦司さん、ユキジの常磐貴子さん、ヨシツネの香川照之さん、マルオの石橋英彦さん、モンちゃんの宇梶剛士さん、ケロヨンの宮迫博之さん、ドンキーの生瀬勝久さん、フクベエの佐々木蔵之介さん・・・。
錚々たるメンバーです。
まったく原作と違和感ありません。
すごいキャスティングです。
中でも一番原作イメージとぴったりだったのは、万丈目の石橋蓮司さんでしょうか。
「ともだち」の右腕とも言える万丈目の怪しさがたっぷり出ていました。
あとヤン坊、マー坊の佐野史郎さんもなかなかでした(二人の子供時代の子役のキャスティングもイメージぴったり)。
1作目でそれほど活躍しないメンバー(ヨシツネとかマルオとかケロヨンとか・・・)も第2章では見せ場ありますから、それを見越した豪華なキャスティングです。
そういえば、ユキジの子供時代の役で「電王」に出ていて松元環季ちゃんがでていましたね。
また男の子を蹴ったり投げたりする役です(笑)。
監督は堤幸彦さん。
本作はどちらかというと堤ワールドというのを押さえた作りになっていると思います。
いかに原作のイメージを映像化するかということにこだわって作ったように感じました。
堤監督は、いろいろな作品をとれる懐の深い方ですからできるのかもしれません。
堤テイストは薄いですが、でも堤監督だからできる作品だと言えるのでしょう。
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