本 「DIVE!!」
今年映画化された「ダイブ!!」は期待以上に爽やかな青春スポーツドラマとして仕上がっていました。
お気に入りの映画のひとつになったのですが、原作の小説も読んでみました。
小説もかなりおもしろかったです。
そういえば青春スポーツ漫画というジャンルはあるけれど、青春スポーツ小説というのは思いのほか少ないような気がします。
若者の、スポーツマンの活き活きとした動きというのはやはり絵や映像の方が伝えやすいからでしょうか。
けれど森絵都さんのこちらの作品は、文字でありながら知季、飛沫、要一といった主人公ダイバーたちを活写します。
先に映画を観たからというのもあるとは思いますが、文章を読みながらも映像が浮かんでくるようです。
映画では知季を主人公とした構成になっていましたが、小説は4部構成で、1部が知季視点、2部が飛沫視点、3部が要一視点、そして4部が彼らがオリンピック出場をかける大会を描くという構成になっています。
飛び込み競技の大会は10回のジャンプでの得点を競うということですが、4部はそれをジャンプの回数に合わせ10章構成にし、それぞれの章を登場人物の一人称で描くという凝った構成になっています。
巻末の解説を読むと、この構成は元々予定していたわけではないらしいですが、とても洒落ています。
こういう構成がとれるのも小説ならではですね。
逆にこういう構成をとっている原作小説を、知季中心の客観視点にした映画化作品のほうは、映画という表現方法の特性をしっかりわかって作っている感じがします。
知季を主人公にしているわけで、飛沫や要一の心情については小説ほど深堀できていないのは確かですが、でもそれでも十二分に伝わってきました。
表現方法は違えども、作品を通して伝わってくる彼らの想いは小説も映画も変わらない。
映画は小説のエッセンスをとても上手く表現しているようにあらためて思いました。
同じテーマでありながら、文章と映像という異なる表現方法でどのようにすれば同じことを伝えることができるかというのが、「DIVE!!」の小説と映画化作品を読み、観ることによってわかるような気がします。
「DIVE!!<上>」森絵都著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-379103-3
「DIVE!!<下>」森絵都著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-379104-0
映画「ダイブ!!」の記事はこちら→
森絵都さん作品「カラフル」の記事はこちら→
森絵都さん作品「リズム」の記事はこちら→
森絵都さん作品「いつかパラソルの下で」の記事はこちら→
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