本「魔法ファンタジーの世界」
著者は翻訳家ということで、本への思い入れが強いと思われます。
昨今、子供たち(いや大人たちも)の本離れが言われて久しいですが、教育者でもある著者はどのようにすれば読むようになるのかということを心を砕いているようです。
僕も本を読む方なので、一般的な本離れみたいなことは気にはなりますが、どちらかというと「読むべき」というのではなく、「読めばいろいろな世界に入っていけたり、新しい発見があるのにもったいないなあ」という感じです。
ですので、「本を読め」と無理強いはしないですし、実は「この本を読め」と言われるのもあまり好きじゃない。
読むのも読まないのも自由、それが読書のような気がします。
でもたぶん本を読んだ方が絶対、自分の身になるからよいと思っています。
著者は昨今のファンタジーブームで映像化(映画化やゲーム化)が多く増えたことにより、読書の良さが失われているということを書いています。
読書は、紡がれている言葉によって世界を思い浮かべなければなりません。
特に異世界を舞台にしたファンタジーは、読み手の力が要求されます。
文字から世界の様子・状況を思い浮かべる力、台詞の前後関係からそのときの人物の心境を想像する力。
その力は読むことによって鍛えられていきます。
それに比べ映像作品は与えられたイメージが視覚的に表現されているため、そのような力はそれほど必要としません。
だから著者は安易な映像の方に流れ、想像する力が衰えていくのではと危惧しています。
ただ僕は映画も好きなので違う意見なのですが、映像作品は読むことへのきっかけ入り口になるのではないかと思っています。
本屋さんや図書館にある膨大な本の山を見たとき、読書に慣れていない人はどこから手をつけていいかわからないでしょう。
またいきなり想像力を要求される本を読み出しても、投げ出してしまうのが落ちです。
そんなとき原作がある映像作品を観た後であれば、(原作と映像作品での解釈の違いがあるにしても)よりストレスなく、本に入っていけると思います。
そしてそのような読み方を続けていくうちに読書力もつき、興味の幅も広がっていく。
僕は映像作品は、本と競合するものではなく、いっしょに発展できるものだと思っています。
いづれにしても物語を紡ぐものなのですから。
本著では「指輪物語」を書いたトールキン、「ナルニア国ものがたり」を書いたルイスの考え方の違いなども触れられて面白いです。
世界を一から構築したトールキン、さまざまな神話からのエッセンスがごった煮のように入っているルイスの作品、異世界ファンタジーの双璧たる二作品ですが、読み比べてみるのもおもしろいかもしれません。
「ナルニア国物語/第2章」を観る前にこの本を読んだので、いい予習になりました。
映画「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」の記事はこちら→
映画「ロード・オブ・ザ・リング」の記事はこちら→
映画「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」の記事はこちら→
「魔法ファンタジーの世界」脇明子著 岩波書店 新書 ISBN4-00-431020-2
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