「ダイ・ハード3」 振り回される不快感
本作「ダイ・ハード3」はあまり評判がよろしくありません。
かくいう僕もこの作品は失敗作だと思っていますが、それではどこでこの作品は失敗してしまったのでしょうか。
公開当時は「ダイ・ハード」の1作目、2作目での援護がない限定空間の中での戦いという制約を失ったためしまりがなくなったのではと思っていました。
けれども「ダイ・ハード4.0」ではその縛りはないですが、十分に「ダイ・ハード」らしさは出ていました。
なのでさきほど書いたような限定空間の中での戦いが必ずしも、「らしさ」を出しているわけではないとわかります。
「4.0」の記事で書きましたが、「ダイ・ハード」らしさを出しているのは、やはりジョン・マクレーンというキャラクターに負うところが多いと思います。
1、2、4作目のいずれにおいても、彼は組織立った敵の計画を、「現場対応」で彼自身のバイタリティで攪乱させていく。
緻密に組み上げられた犯罪計画は、マクレーンというたった一つの異物によって次第に綻びを見せていきます。
マクレーンの敵となる人物はすべて頭が良い(たぶん自分でもそう思っている)男たちです。
彼らの計画がマクレーンによって攪乱されて、彼らがどんどんとイライラしていく様子が、観ていて爽快なのではないかと思います。
今の世の中、ややもすると様々な行動が計画され組織だてられています。
日々「計画通り」仕事をしていくことが求められ、それで時々息苦しいなと思ったりする人も多いのではないでしょうか。
それは映画の中でも同様で、最近のアクションものでも、いい側(警察など)も悪い側(犯罪組織など)もかなり最近は組織立っています。
どちらでも組織はスタンドプレーを行う人物は嫌います。
マクレーンという人物は、そういう組織においてはまさに異物。
でもその異物であるたった一人の人物が、組織立った計画をどんどん狂わせていく。
一人の力でも何か変えられる、動かせるというところが見えるところが、「ダイ・ハード」というシリーズの魅力ではないでしょうか。
そう考えると、本作3でのマクレーンというのはとてもさえない。
他の作品ではマクレーンは、相手をイライラさせる役回りでした。
だから観ていて爽快。
でも本作はイライラさせられるのはマクレーンの方です。
相手サイモンはマクレーンを振り回し、ただ彼はそれに従っているのみ。
彼の活躍によってサイモンがイライラするという場面はほとんどありません。
マクレーンが感じるイライラは、すなわち彼に感情移入をしている観客のイライラになります。
僕は本作は観ていて、サイモンがうっている手がすべて後だしジャンケンになっているように見えました。
実はこれはこのためのフェイクだったという出来事が多すぎる。
脚本としては二転、三転させているというつもりなのかもしれないですが、それがフェアではないので観ていて振り回されているような不快感に繋がってしまいます。
いい加減もう止めてよという感じでした。
1、2も二転、三転しているという点では同じなのですが、そのイニシアティブは実はマクレーンがとっているのです。
だから観ていて観客が振り回れているような感じはしない。
十分についていける。
たぶんそのあたりの作品の捉え方の間違いが3の不評に繋がっているのではないでしょうか。
4.0はその点をきっちりと認識している点が、多くの観客に「ダイ・ハード」らしいと受け入れられた理由ではないでしょうか。
「ダイ・ハード」の記事はこちら→
「ダイ・ハード4.0」の記事はこちら→
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コメント
アルパウエルさん、こんばんは!
「ダイ・ハード」は次の企画もあるようですね。
個人的には1作目、2作目が好きなのですが、次はどんな感じになるのでしょうね。
投稿: はらやん | 2012年5月10日 (木) 23時00分
長々とすいませんm(_ _)m
まとめますと、ダイハード3はもっとよくできたんじゃないかと残念でなりません。せっかくオスカー俳優のジェレミー.アイアンズを出してるのに、とってつけたラスト以外には、マクレーンと直接対決がないので宝の持ち腐れ感ですし
最初はクールなサイモンに振り回されていたのに、いつの間にかマクレーンの方がサイモンを振り回して、最後はクールなマクレーンがテンパり出してマクレーンが主導権を握り奇跡の逆転…みたいな過程をシナリオに盛り込んでほしかったです。そこは致命的でした。
あとはどうしても、ニューヨークそのもねを限定空間に設定するなら、わかりやすく地理感覚やタイムリミット感を感じさせる、リアルな緊迫感や恐怖感がほしかったと思いました。
やたらめったら、実際の地理関係を無視して、無茶苦茶にクイズで走り回ってるだけのような気がしました。
投稿: アルパウエル | 2012年5月 8日 (火) 21時36分
ダイハード4.0がビートたけしの金髪座頭市だとすると、ダイハード3は勝新太郎の1989年の座頭市という印象です。1989年の座頭市は中途半端な印象でした。漫画チックな要素とリアルさがアンバランスに同居していて試行錯誤感あふれるどっちつかずな印象。
ビートたけしの座頭市は、「おいらは勝新の座頭市じゃないもん別物だっての」とはなから割りきって好き放題やってる感じがただただ爽快でした。ダイハード4.0もそんな感じで伸び伸びやってます。
投稿: アルパウエル | 2012年5月 8日 (火) 21時00分
お返事ありがとうございます。個人的には4より3の方が好きですが、人気としては4の方に軍配があがるのは納得できます。ダイハード3はエイリアン3ほどではないけれど、試行錯誤の煮え切らない感じが出てます(ちなみにエイリアン3も好きです)。
個人的にはジョンマクレーンらしさは4.0より3の方が出てると思いましたし(4.0はまるでシュワちゃんみたいです)、全米サイバーテロに進んで乗り出す様が、もはやマクレーンじゃなくてジャックバウアーかと思っちゃいました。3はニューヨーク限定という形だけの枠はありましたし、サイモンのご指名という巻き込まれ感を出そうという工夫はありました。
にもかかわらず、スカッとできるのは3より4.0なんですねえ不思議です。3は煮え切らないです。ゼウスという相棒以外にもニューヨーク市警の面々がいるので孤立無援がありません。ニューヨークはマクレーンのホームグラウンドでしから。全然孤立無援な感じではないです
それから、ちまたでは、ダイハードは限定空間でなければならない、と言われていますが、僕も限定空間は必ずしも絶対条件じゃないんだという気がしました。「何でヒーローじゃないオレが独りで戦わねばならんねんチクショー」という普通のおっさんの孤立無援感こそが肝要なのかなと
4.0ではマクレーンがボヤいてるけど、自分を英雄と認識しながらボヤいているので、常にクールな超人がたまにボヤく、でもあくまで超人みたいな感じになっていて、ジョンマクレーンぽくなかったです。
だけど、問答無用のスカッと感はダイハード4.0なんですね。変に新味を出そうとした3より超人的な無茶苦茶になったスキンヘッドマクレーンの方が爽快だから不思議です。5も6も7も続けてほしい奥の深いシリーズだと思いました。
投稿: アルパウエル | 2012年5月 8日 (火) 20時39分
アル・パウエルさん、こんにちは!
僕はシリーズの中では一番「3」が合わなかったです。
ジョンでなくても成立してしまうような物語に感じて染ましました。
おっしゃるように4.0は「ダイ・ハード」らしい物語に回帰できたかなと思います。
投稿: はらやん(管理人) | 2011年6月29日 (水) 05時20分
しばしば駄作と言われてるダイハード3は個人的には好きなんです
冒頭のマクレーンの二日酔いシーン、エレベーターでのソナチネ的銃撃シーン、ミッキーオブライエンと名乗りながらテロリストを銃殺するシーン…こう言ったシーンはまさにダイハードだと言う気がします
ただ沈黙の戦艦に先を越され、シナリオ試行錯誤による不完全燃焼さやためらいがにじみ出ているのは否めません。その意味では、荒唐無稽に開き直って力業で堂々と押しきったダイハード4.0の方がかえってダイハードぽさが出ていたののかも
投稿: アル・パウエル | 2011年6月27日 (月) 15時04分
コブタさん、こんばんは!
続編というのは作るのが難しいですよね。
何がそのシリーズのエッセンスなのか、それを見極めなくてはなりません。
そのエッセンスを外してしまうとファンの期待を裏切ってしまい、あまりに同じだとそれはそれでつまらないと言われてしまう。
「ダイ・ハード」シリーズも「4.0」では見事にそのエッセンスをつかんで見事に復活しましたね。
「3」はそのあたりを見誤った感じがします。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年5月17日 (土) 18時44分
私も決してこれは駄作だとは思いませんでした。
ダイ・ハードシリーズとすると、あら?と思ってしまうんですよね。
ただ、観客の多くがダイ・ハード求めているものを、あえて裏切ってみた部分があり、そこに不満が集中してしまったのでしょうね~。
おっしゃるとおり、敵を翻弄させるテロリストの常識を越えた存在マクレーン、そして閉ざされた空間の中でアナログに戦う。その2点を楽しめないだけだったのですが、そこがないとダイハードじゃない!!となってしまう、シリーズ物って何処を新しくして、何処を踏襲するかって制作する側にとっては難しい問題ともいえますよね。
投稿: コブタです! | 2008年5月14日 (水) 08時35分
風情♪さん、こんばんは!
そうですか「リーサル・ウェポン」シリーズの脚本だったんですか。
確かに他の「ダイ・ハード」シリーズとは相方の役割・比重が違いますよね。
「3」以外は相方はどちらかというとサポートですからね、あくまで主役はマクレーン刑事。
本作だけ相方のゼウスの役割は大きいですよね。
確かにマータフっぽいかも。
投稿: はらやん | 2008年5月13日 (火) 20時54分
こんにちは♪
真偽のほどは定かじゃないですが、この「3」は
何でも元々は「リーサル~」シリーズの脚本だっ
たと言う話を聞いたことがあります。
言われてみれば確かにゼウスが最初は渋々だった
のに後半になるにつれてノリノリになっていくあ
たりはまるっきりマータフぽいんですよ。
飽きが来るかも知れないし、「4」での娘もヨカッタ
のですが、出来ればホリー&ソーンバーグにクリス
マスはずっと引き継いで欲しかった気がします♪
(゚▽゚)v
投稿: 風情♪ | 2008年5月12日 (月) 14時19分
SOARさん、こんばんは!
「3」のことがあったので、「4.0」はあまり期待していなかったのですが、いい意味で裏切ってもらって堪能できました。
やはり改めて「3」を観てみると、どうもマクレーンというキャラクターの良さが出ていない感じがするんですよね。
「1」「2」、そして「4.0」と比べて別人のような感じがします。
そのあたりどうも制作者サイドが見失ってしまったのかなと思いました。
でも「4.0」で復活してよかったです。
これなら「5」もいけるなと思いました。
投稿: はらやん | 2008年5月11日 (日) 18時58分
“限られた空間”というお約束が破綻した3作目は、私もつまらないと思いました。
ところがおもしろいもので大型トレーラーで疾走したり戦闘機に追われたりの「4.0」は、「3」と同じく“お約束”から逸脱しているにもかかわらずはらやんさんのおっしゃるように、ものすごく「ダイ・ハード」っぽい仕上がりなんですよね。
「4.0」劇場鑑賞時、「やっぱりこうじゃなくっちゃ!」と興奮した私です。
投稿: SOAR | 2008年5月11日 (日) 18時08分