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2008年4月 2日 (水)

「ブラブラバンバン」 一人だけで感じるな

基本的に青春ものは好きなのです。
特に「スウィングガールズ」「リンダ リンダ リンダ」や「フラガール」のように、みんなでがんばって何かをやり遂げるというストーリーはありがちなのかもしれませんが、やはり好きでジーンときてしまうのです。
ありがちということは、普遍的なテーマだといってもいいのじゃないかと思ったりもします。

で、本作「ブラブラバンバン」なのですが、高校のブラバンを題材にしているということで、そんなジーンとした気分になれるかと期待しながら観に行きました。
ですが・・・、まったくジーンとなれなかったのです・・・。

冒頭にあげたような僕の好きなこのタイプの青春映画(達成感共有青春映画)は同じような物語構造があります。
・ふとしたきっかけで始めたことがある(音楽、スポーツ、ダンスなどチームでやるもの)。
・ほかのメンバーもそれぞれのさまざま事情でそのことをいっしょに始める。
・やっていくなかで、そのことがだんだん好きになっていく。
・けれどメンバーのそれぞれの事情で、一度そのチームは崩壊の危機に。
・それでもそのことが好きだいう気持ちでメンバーがまとまり、最後にみんなで何かを成し遂げる。
この構成はものの見事に「起承転結」という物語の定番構造にしっかりとはまっているがゆえに、普遍的なものと言っていいかもしれません。
物語の中で感動が生まれるのは、転から結へ一度ばらばらになった気持ちが再び集まり、そして昇華するところだと思います。
再び気持ちが集まるところで、観ている自分もメンバーの一人になっているような感情移入をしていくので、最後に成し遂げるところで登場人物と同じような達成感を感じることができるのでしょう。
幾人かのメンバーがいるこのタイプの「達成感共有青春映画」は誰かしら自分を投影できる人がいるものなので、感情移入することがしやすいのかもしれません。
つまりはメンバーの誰でもいいから、感情移入できる人がいるということ、それがこの手の青春映画に必要なことなのです。

翻って本作なのですが、キャラクターの描き方がとても甘く、感情移入しやすい人がいないのが最大の欠点。
まずは主人公は芹流なのか、白波瀬なのかとはっきりしていない。
たぶん主人公である芹流は彼女自身の悩みを肌感で感じることができないというのが、とても苦しい。
演じた安良城紅さんの演技の拙さというのもありますが、そもそもが彼女がみんなとブラバンに参加したいというような熱意というものが感じられません。
彼女は音楽が好きというのはあるのかもしれないですが、みんなでいっしょに成し遂げたいという思いが感じられないのです。
結局、物語の最後に盛り上がるはずの大会予選でも、彼女はみんなの指揮をしているけれども、自分だけで音楽の桃源郷に行っているように見えてしまう。
一人で気持ちよくなっているように見えるのが、とても辛い。
「のだめカンタービレ」で千秋が峰に行った言葉が思い出されます(正確にはのだめを通じて峰に言ったのだが)。
「そういうのをオナニープレイって言うんだよ」
まさにそんな感じで、みんなで達成感を共有するといったようなカタルシスは感じられません。
一人だけで感じてしまい、どこかへいってしまっているような感じで、それを傍観者とした立場で観ているととても白けてしまいます。
これは演技者の責任というよりも、脚本・演出のまずさによるものだと思います。
最初と最後のモノローグをやって主人公かもしれない白波瀬も、その他のメンバーも何が楽しくてブラバンをやっているのかが伝わってきません。
自分がやっていて楽しくて、そしてみんなでやっていくとさらに楽しいというのが感じられなければ、葛藤も達成感も観ていて感じられるわけはありません。
だからこの映画を観ていて、僕はずっと置いてきぼりで、最後の大会もただの傍観者でした。
彼らの辛さも喜びも感じられませんでした。
観ている観客も思いが共有できないとこういうタイプの映画はちょっと辛い。

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