本 「サンディエゴの十二時間」
マイクル・クライトンがジョン・ラング名義で書いた作品です。
1972年の作品なので、30年以上も前に書かれていたんですね。
この作品が扱っているのは、毒ガスを使ったテロ事件。
ある思想家が大統領を狙って、手に入れた毒ガスを使い暗殺を企て、それを情報部員が防ごうとするという筋立て。
ハリウッド映画によくありそうなストーリーに思えますが、ここは書かれた年に注目したい。
今でこそ毒ガスを使ったテロというのは痛ましい地下鉄サリン事件などにより現実味を帯びているけれども、この作品が書かれた30年前というのは一般的にはそのような危機などを考えていた人はあまりいなかったのではないのでしょうか。
あまりに危険なガスのため、実行前に二つのガスを混ぜ合わせてるというのは、サリン事件を思い出させます(原題の「BINARY」というのは「二つの」という意味で、この二つの期待を混合するということを表している)。
マイクル・クライトンの凄さというのは、その題材を見つける嗅覚の鋭さであるように思います。
世間がまだそのことについて危機感を持っていない時に、それを題材にした小説を書く。
まるで予言者のように、先を見ているような気がします。
最近のマイクル・クライトンは、年をとったからか、やや説教臭かったりするのですが、本作はストレートにエンターテイメントしているので、読みやすい。
ハリウッド映画でよく使われるネタになってしまうので、もの足りない人もいるかもしれませんが、本作の方が全然前に作られているので、そのあたりに驚きを感じてもらってもいいでしょう。
マイクル・クライトン作品「NEXT -ネクスト-」の記事はこちら→
「サンディエゴの十二時間」マイクル・クライトン著 早川書房 文庫 ISBN4-15-040690-1
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