本 「チーム・バチスタの栄光」
原作の上巻を読んで、映画観て、それからまた原作の下巻を読んで、というとても変則的な読み方をしてしまいました。
あまりこういう読み方はしませんが、小説と映画の違いはよくわかりますね。
<ネタばれあり・犯人に触れます>
最も異なるところは主人公田口が男性か女性かというところですが、これは置いておきます。
小説も、映画も事件は二段階で解決するのは変わりません(仔細は異なりますが、大きくはその原因もトリックも同じ)。
一段階目は執刀医である桐生が緑内障を患っているのにも関わらず、鳴海の声を手がかりに手術を行ったということを明らかになるところ。
そして第二段階目は麻酔医氷室の犯罪だということがわかるところ。
けれども映画と小説ではその比重の置き方が異なる感じがしました。
映画では先日の記事で書いたように、一段階目の桐生、鳴海の行為の方に焦点が合っています。
意志としての義務感、使命をもちながらも、また自尊心、傲慢さというのを捨てられなかったエリートの医師の姿というのがテーマになっていたように感じました。
そのため二段階目の氷室の犯罪はどちらかというと付け足した感があったように思えました。
逆に小説では、桐生・鳴海の行為よりも、氷室の犯罪の方に比重があるような感じがしました。
氷室という医師を生んでしまった、大学病院という仕組みの問題、医師不足などの背景から、作者が医師ならではという問題点の意識が感じられます。
またパッシブ・フェーズ、アクティブ・フェーズという対照的な聞き取り方法の使い分けと、田口・白鳥コンビの対照性がわかりやすいのも小説の方だったと思います。
映画の方の白鳥はただの失礼なヤツに見えないこともない。
とはいえ映画で延々と方法論の説明をさせられても困るので、映画の白鳥はあれはあれで良かったのかもしれません。
映画と小説、どちらが優れているということではなく、同じネタを使いながらも表現方法で伝えること、伝わることが変わるのだなあと改めて思いました。
「チーム・バチスタの栄光<上>」海堂尊著 宝島社 文庫 ISBN978-4-7966-6161-4
「チーム・バチスタの栄光<下>」海堂尊著 宝島社 文庫 ISBN978-4-7966-6163-8
映画「チーム・バチスタの栄光」の記事はこちら→
小説「チーム・バチスタの栄光」に続く第二弾「ナイチンゲールの沈黙」の記事はこちら→
第三弾「ジェネラル・ルージュの凱旋」の記事はこちら→
第四弾「イノセント・ゲリラの祝祭」の記事はこちら→
第五弾「アリアドネの銃弾」の記事はこちら→
海堂尊氏の小説「螺鈿迷宮」の記事はこちら→
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» 【本】チーム・バチスタの栄光 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
『チーム・バチスタの栄光』 海堂 尊 宝島社 〜*第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品〜【comment】1ページ1ページを読み進めるのが勿体無くて、1行1行に信じられない程の愛着を覚えた。私は、筆者が著わすような文章―圧倒的な知性に裏打ちされているであろうユーモアに満ちた文章が、死・ぬ・ほ・ど好きである―多分それは、もうちょっと行き過ぎると嫌味に感じ、少々足りなければ退屈なのであろう微妙ぉ〜な加減。本作は、その微妙ぉ〜な加減が、私の感性(ま... [続きを読む]
受信: 2008年3月 2日 (日) 17時53分
» 海堂 尊 著「チーム・バチスタの栄光」感想 [Wilderlandwandar]
第4回「このミステリーが凄い」大賞受賞作だそうです、が、「こ [続きを読む]
受信: 2008年3月 2日 (日) 21時33分
» 【2008-33】チーム・バチスタの栄光 [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
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心臓手術のエリート
「チーム・バチスタ」
3件連続
原因不明の手術失敗
容疑者は7人の天才
究極の完全犯罪
犯行現場は半径10センチ
犯行現場は、半径10cm。この7人の中に、いる。
... [続きを読む]
受信: 2008年3月 2日 (日) 23時04分
» 本「チーム・バチスタの栄光」海堂尊 [日々のつぶやき]
長いこと積んであったのですが、間もなく映画が公開ということで慌てて読みました。
「神経内科で講師の田口は、高階病院長とバチスタ手術のトップ外科医桐生恭一に依頼されて、連続して三件起こった術死を調べることになった。単なる不運の連続なのか、医療ミスか、意... [続きを読む]
受信: 2008年3月 5日 (水) 12時27分
» 『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊 [【徒然なるままに・・・】]
アメリカ帰りの天才外科医・桐生が率いる<チーム・バチスタ>は、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門のエリート集団。難易度の高い手術にも関わらず成功率が高く、マスコミからも注目を集めている大学付属病院の花形的存在である。
ところが原因不明の術中死が立て続けに起ったことから、病院長は内部調査を決断。それは桐生自らの希望でもあったのだが、その任に当たるべく白羽の矢を立てられたのは、何故か万年講師の窓際族・田口医師だった。
不運だったのか、医療事故か、それとも殺人なのか。田口はチームのメンバーから聞... [続きを読む]
受信: 2008年3月 9日 (日) 14時35分
» チーム・バチスタの栄光 [Yuhiの読書日記+α]
海堂尊作「チーム・バチスタの栄光(上)(下)」(宝島社刊)を読みましたー!
以前に映画版は見ていたんですけどね。(感想はコチラから)
原作本は、第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品で、映画化・ドラマ化もされている超人気作品。映画を見る前から小説版をぜひ読んでみようと思っていたものの、図書館で予約しても半年以上待ち・・・。その間に映画版の方を先に見てしまい、犯人も分かっちゃったし、小説はもういいかなーなんて思っていたんですけどね。
でも、これだけ人気のある小説だし、原作があるものは、やはり... [続きを読む]
受信: 2008年11月 3日 (月) 20時05分
» 「チーム・バチスタの栄光」 文庫&ドラマ [the borderland ]
まずは原作。医療現場の事件なので、専門用語も多そうだし読みづらいのではないかという先入観は思いっきり覆されました。それどころか、先を読みたくて仕方なくなるほど面白かったです。普段は会社の昼休みにしか本は読まないのですが、家に帰ってきても読んでましたから。
後半に入って白鳥の登場。話も中盤からもう一人の主役が出てくるとは思ってもいなかったこともあり、白鳥のキャラクターに面食らってる暇も無く、物語にのめり込んでしまいましたよ。手術室内の完全犯罪、この方法は分る訳もない・・・ですが、チームバチスタの... [続きを読む]
受信: 2008年11月 3日 (月) 23時19分
» 【小説】チーム・バチスタの栄光(上)…文庫版 [ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画]
本日{/kaeru_fine/}から夜勤週のピロEKです。
夜勤は常勤と比べて通常業務が詰まりがち{/ase/}…なのに最近は何故か私しか出来ない特殊{/eq_1/}な業務が山積{/ase/}…夜勤の度に少し困っております{/face_hekomu/}
それにプラスして4月ってやる事が増えちゃうんだよね。更に…
この週末(4/3〜4/4)は本来二連休の予定だったのに、全体的な不手際で土曜日はお仕事になっちゃったしなぁ{/face_maji/}{/down/}…
…と愚痴ってばかりいても仕方ないので... [続きを読む]
受信: 2010年4月29日 (木) 00時17分
» チーム・バチスタの栄光 / 海堂尊 [ねこやま]
抜粋
東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、
桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。
彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術である
バチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、
成功率100%を誇り、その勇名...... [続きを読む]
受信: 2011年5月 4日 (水) 20時46分
» 『チーム・バチスタの栄光』 [観・読・聴・験 備忘録]
海堂尊 『チーム・バチスタの栄光』(宝島社文庫)、読了。
ようやく、この大ヒット作を読みました。
うん、面白かったです。納得。
まず、キャラクター作りが非常に上手いです。
強弱の付け方や、際...... [続きを読む]
受信: 2013年6月 2日 (日) 00時43分
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