« 本 「鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで」 | トップページ | 「包帯クラブ」 包帯一本で世界は変わる »

2008年3月23日 (日)

本 「源氏と日本国王」

室町幕府や江戸幕府で国政を行っていたのは「将軍」と言われる地位についていた人々です。
この「将軍」というのは、言うまでもなく「征夷大将軍」という地位のことです。
そもそも「征夷大将軍」というのは、「夷狄」を「征伐」するための軍隊の総司令官という意味で、蝦夷を征伐した坂上田村麻呂までさかのぼれます。
ではどうして一介の軍の総司令官が、国政を扱える立場になったのでしょうか。
著者は「征夷大将軍」だから日本の国家主権を掌握できる力を得たのではないのではないかと考えます。
そうではなくて彼らは「源氏長者」という立場につくことにより、国家主権を掌握したのではないかと。
源頼朝、足利尊氏、徳川家康もすべて源氏の系譜に属する者です。
尊氏や家康は、「源」ではなく「足利」「徳川」ではないかという方もいるかもしれません。
僕もこの本で初めて知ったのですが、「姓」と「苗字」というものは異なるものだということです。
詳しくはここでは書きませんが、「姓」は天皇から上位で与えられるものであり、また血縁原理によって継承されるものであるということです。
「苗字」は「家」という社会組織の名前であって、血族の名前ではありません。
つまり「足利」「徳川」は「家」の名前であり、彼らの「姓」は「源」であったわけです。
さきほど「源氏長者」という聞き慣れない言葉がでてきます。
源氏という言葉は特に歴史に詳しくなくても誰でも知っているでしょう。
でもそもそも源氏というのは、何なのかというを説明できる人は少ないと思います。
天皇の一族をそもそも起源としているのということは、歴史に詳しい人ならば清和源氏、村上源氏などという言葉を聞いたことがあるので知っているかもしれません。
そもそも「源」という姓が「祖先すなわち源を天皇と同じうする」ということからきているということです。
つまり「源」姓の者は「准皇族」としての地位にあった者たちなのです。
彼らの中には王氏で家系が絶えたときは皇族に復帰する者もありました。
時代が経るにつれ、彼らは全国に広がるつれ公家や武家として生きていきますが、天皇に近い血縁の者たちとして常に国政に関わる場所にいたのです。
「源氏長者」というのは、「源」一党の中で彼ら一族に属する人々の地位などを決める権限を持つ人のことです。
つまり「征夷大将軍」であることよりも、日本の政治を長年にわたり動かしている一族としての「源」姓のものたちの頂点に立つということの方が重要であったのではないかというのが、著者の考え方です。

歴史は好きな方ですが、時代劇などでは知ることができない知識・トリビアなどがこの本にはあり、興味深く読めました。
この本を読んでから、改めて時代劇などを見てみるとまたおもしろいかもしれません。

「源氏と日本国王」岡野友彦著 講談社 新書 ISBN4-06-149690-5

|

« 本 「鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで」 | トップページ | 「包帯クラブ」 包帯一本で世界は変わる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 本 「源氏と日本国王」:

« 本 「鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで」 | トップページ | 「包帯クラブ」 包帯一本で世界は変わる »