「包帯クラブ」 包帯一本で世界は変わる
自分の中から大切なものが毎日のように失われている。
それも敵にはとても思えない人とか、目に見えない何かによって少しずつ毎日のように失っている。
もっと残酷なことは私たちもは知らず知らずのうちに持ち去ってしまう側に回ってしまっているということだ。
これは冒頭のワラ(石原さとみさん)のモノローグ。
人というものは生きていくなかで、人によって傷つけられ、そして人を傷つけてしまうもの。
傷つけられるも、傷つけるのもイヤだ、だから人とは関わりたくない、とワラは思っています。
「ケンカするくらいだったら嘘をつく」と親友のシオにも言われるとおり、ワラは人との関わりを避ける。
強い絆があるはずの父親に捨てられ、親友たちの仲違いを止められなかったという思い出が、彼女を人と関係を築くことを恐れさせているのかもしれません。
けれども偶然に出会ったディノ(柳楽優弥さん)が、「心の血を止める」と包帯で彼女が飛び降りてしまおうかと思った場所を縛った時、何か気持ちが楽になったのです。
そこからワラ、ディノ、シオ、ギモ、リスキたちによる「包帯クラブ」が始まりました。
誰かが傷ついた場所を包帯で「手当て」をしてあげる。
彼らはただその場所を包帯で巻いているというパフォーマンスをしているのではありません。
依頼してきた人、その人たちの傷ついた気持ちを少しでもわかろう、そして何とか心の傷を手当てしたいと考えているのです。
「むずかしいよね、人の痛みを想像するのって」とリスキは呟いていました。
確かに人の気持ちを想像するのは難しい。
100%理解できると思うことは、劇中でテンポ(関めぐみさん)が言っていた通り、偽善であり、傲慢なことかもしれません。
けれど、大切なのは人の痛みを想像しようとしたということ。
人の痛みを理解しようと一生懸命考えようとした、その姿勢こそが大事。
それは傲慢なことではないと思います。
「手当て」という言葉は、傷ついた箇所に手を当てて直そうとした行為からきたと言われています。
たぶんその行為は治ってほしいと願う気持ちを人に伝えたいというところからきたのではないかと思います。
人の気持ちの少しでも理解できたとき、それは相手も救うことにもなるけれども、何よりも自分自身が救われる。
人と人との関わりは傷つき、傷つけてしまうもの。
そうであるに違いないけれど、その関わりは、癒し、癒されるものでもあるわけです。
すべてを救えるなんて思えない。
けれどもまったく救えないとも思えない。
皆があきらめてしまうのではなく、少しでもそういうふうに思えることができれば、
「包帯一本で世界は変わる」。
確かにそう思います。

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235「包帯クラブ」(日本)
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受信: 2008年3月24日 (月) 01時19分
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【映画的カリスマ指数】★★★★☆
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受信: 2008年3月25日 (火) 11時09分
» [映画]包帯クラブ [落とし穴には気をつけろ!]
「包帯クラブ」の試写会に行ってきました。
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へー、あの柳楽クンが出るのかあ、程度の興味だったん... [続きを読む]
受信: 2008年3月26日 (水) 21時41分
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人は人のために生きる。
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これもまるきり見る予定が無かったのに、巷(主に映画ブロガー) [続きを読む]
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現在、未来への不安、恐れ、
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その行為もまた誰かを知らぬ間に
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心の優しさを思い起こさせる
温もりのある映画に感じました。
白くて柔らかい包帯、
包帯の持つ清らかで
優しいイメージと相まって
人の心の傷を、
本当に癒すことができそうな
気持ちになってきました。
救いのない子供達を描いた
同じく天童荒太作(永遠の仔) と比較したら
心の傷の深さは... [続きを読む]
受信: 2010年3月20日 (土) 22時38分
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女子高生ワラは、大切なものが失われていく毎日に嫌気がさし、ある日病医の屋上のフェンスを乗り越える。 その時現れた入院患者の少年、ディノ。 手首に傷を負ったワラの心を見抜いたディノは、手首からほどけ落ちた包帯をフェンスに結びつける。 これが「包帯クラブ」の始まりだった…。 いまの社会を生き難いと感じている若い人たちに語りかける、傷ついた少年少女たちの青春ストーリー。... [続きを読む]
受信: 2010年3月21日 (日) 23時43分
» 包帯クラブ☆独り言 [黒猫のうたた寝]
なんとなく水色が印象に残る・・・『包帯クラブ』白・・・と水色なの・・・包帯と空のイメージなんだろうなぁ~~たぶん。柳楽くん でっかくなったなぁ~~~(笑)とはいえ、一番はまったのは・・・サントラかもしれません。包帯1本巻いて世界が変わったらめっけもんやん高校... [続きを読む]
受信: 2010年12月 5日 (日) 23時53分
コメント
睦月さん、こんばんはー!
公開は地味そうだったのと、話が重そうな感じがして、スルーしてしまいました。
けれど観てみたらずいぶん印象が違いました。
確かに彼らが背負っているものは重いのですけれど、観終わった後、救いと希望があってよかったです。
柳楽くんはほとんど初めて観ましたが、上手ですね。
ぶっ飛んだヤツに見えるのに、とても繊細なところがある難しい役どころを上手に演じていたと思います。
バトンありがとうございます。
初めてなんですよー、なんだか緊張・・・。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年3月29日 (土) 20時45分
こんにちわ。
私、結構この作品お気に入りなんです。
地味な印象で公開されましたけれど、
実際に観てみると心に染み入るものが
とても多くて・・・。
エセ関西人を演じたヤギラくんの
繊細な存在感にとても惹かれました。
豪快でひょうきんなのに、抱える闇は
深く悲しい・・・そんな青年。
素敵な1作だったと思います。
ところではらやんさん。
『愛しの映画館バトン』をお持ちしました。
気が向いた時にでもサクっと遊んでみて
くださいまし♪
よろしくです!
投稿: 睦月 | 2008年3月25日 (火) 11時06分