「きみにしか聞こえない」 動かなかったオルゴールが再び音を奏でるとき
リョウ(成海璃子さん)は今時には珍しいケータイも持っていない内気な女子高生。
彼女はとてもセンシティブな心の持ち主で、たった一言の言葉でも傷ついてしまう。
みんなが自分のことをいなくてもいい存在だと思っているのではないかと感じている。
臆病だから、もう傷つきたくないと思う。
だから人と交わらない。
けれども、誰かと話したい、誰かに話を聞いてもらいたいと思う気持ちはなくならなかったのでしょう。
そんなとき、公園で拾ったおもちゃのケータイが顔も知らない男の人と繋がる。
電話の相手シンヤ(小出恵介さん)とは、リョウは自然に自分のことを話していける。
彼女ははじめて自分がいていいと言ってくれる人に出会ったと思いました。
鎌倉の浜辺で、リョウが大きな声で自分の想いをテープに吹き込んだ時、彼女は変わりました。
今まで誰も彼女のことを否定していたわけではない。
彼女のことを見ていなかったわけではない。
お父さんもお母さんも妹も、先生も同級生も。
リョウ自身が周りの人に扉を閉ざしていただけ。
少しずつ自信を持って自分から声をかけていけば、みんなはやさしく迎えてくれる。
動かなかったオルゴールが再び音を奏でるように、リョウはピアノを弾く。
想いを口にする。
(ピアノを弾くとき、黙って聞いていたお母さんと妹のシーンは泣けました)。
リョウの心の扉を開いたのはシンヤ。
彼も人と話を聞いてもらいたい、聞きたいという気持ちをずっと持っていたのでしょう。
けれども彼にとってはそれはずっとままらないことだった。
シンヤにとって、リョウとの出合いは奇跡のようなものだったのでしょう。
彼は「修理した道具たちは自分のことを忘れない」と言っていました。
たぶんきっと、リョウも自分の心が再び言葉を発するようにしてくれたシンヤのことを一生忘れないでしょう。
時と場所が離れた二人のやり取りは「イルマーレ」を思い出させました。
「イルマーレ」は2年の差でやり取りは手紙、「きみにしか聞こえない」は1時間の差でケータイ。
「イルマーレ」も時間差と手紙という手段をうまく活かしたお話でしたが、本作でも負けずこのあたりの道具立ての使い方は上手でした。
最後の横浜駅の待ち合わせのシーンはドキドキと切なかったです。
リョウがシンヤを想う気持ち、シンヤがリョウを想う気持ちがひしひしと伝わってきました。
片瀬那奈さんの役もポイントで聞いていましたね。
成海璃子さんが出演する映画は初めて観るけれど(「TRICK」では仲間由紀恵さんの子供の頃を演じていたということ。まったく記憶がないが)、とても清楚な感じでかわいいですね。
1992年生まれということですが、大人っぽいのかな。
テレビで放送中の「ハチミツとクローバー」では大学生役ですからねー。
でもはぐちゃんは大学生に見えない役だからいいのか。
演技も上手だったのではないでしょうか。
はじめの臆病な頃は視線を誰とも合わせようとせず下ばかりうつむき、そしてシンヤと出合い変わり始めたリョウは前を向き表情がどんどん明るくなっていく。
そしてシンヤを失ったときの哀しさ、そして前向きに生きようとする様子が表情からも伝わってきました。
こんど「神童」も見てみようかな。
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コメント
kiraさん、こんにちは!
ほんとにあの二人はいじらしかったです。
なんとか二人にはうまく行って欲しかったのですが・・・。
思いっきり感情移入して観てしまいました。
だからこそ、リョウがシンヤの死をなげくところ、そして立ち直るところはジンときてしまいました。
投稿: はらやん(管理人) | 2008年3月18日 (火) 12時57分
こんにちは!
たしかに「イルマーレ」と似てると思って観てましたが
その1時間に向かう辺りの展開、スピード感は良かったです!
キャストのふたりもいじらしく、、
ラストは変えて欲しかったです!!
投稿: kira | 2008年3月18日 (火) 11時41分