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2008年1月 2日 (水)

「ペルセポリス」 まずは知ることから・・・

ちょっと前にNHKのニュースで紹介されていて観に行きたくなりました。

僕がイランという国について知っていること。
イラン革命でイスラム教シーア派ホメイニ師を中心に、王政を倒したこと。
それから厳格なイスラム原理主義に基づいた政治が行われていること。
アメリカからテロ国家と名指しされているということ。
驚くほど知らない。
この映画の中で主人公マルジの祖母が日本の映画のことを切腹してるか、怪獣が出てくるかしかないと言っていてその程度しか日本のこと知らないんだと思いましたが、考えてみたら僕も彼らのことをよく知らない。
映画も観たことあるのは「オフサイド・ガールズ」くらいですし。

この映画を観ると、近代のイラン史がよくわかる。
西洋の圧力を受け、近代化を目指していたシャーの時代。
富は王に近い人々ばかりに集まっていく。
王政に反対するコミュニスト等は容赦なく投獄されていた。
民衆の不満は高まり、そしてイラン革命が起こる。
民衆は自由になったと思ったが、次第にイスラム原理主義により、以前よりも自由が束縛されていく。
また革命に危機感を持ったイラクがイランに戦争を仕掛け、イラン・イラク戦争が勃発する。
イスラム革命の拡大を恐れ、当時アメリカはイラクを支援していたことはよく知られている。

こんなイラン史とその時代を生きるマルジとその家族を観ていたら、なんだか既視感を感じた。
ああ、日本の近代史に似ているなと。
イスラム革命後のイランは原理主義者によって国民生活がかなり束縛されている。
政府や宗教について反対意見を言うことは許されない。
西洋的なものも厳しく統制され、市民の楽しみですら背徳的だと規制される。
女性が女性らしくお洒落することすらできない、とても息苦しい状況。
これは日本の戦前、戦中の状況に似ている。
天皇を神と祀り、すべてお国のためと言われてる状況。
とても似ている。
日本は戦争に負けたため、曲がりなりにも今のような民主主義国家になっているけれども、もしかするとイランのような息苦しい生活を続けていたかもしれないのだなと思いました。
イランというとテロ国家というイメージでとても異質なもののように思いますが、まかり間違うと日本もそうなっていたかもしれないわけです。
そう考えると、彼らの国を異質なものと捉えるだけではいけないような気がしました。

もう一つ、当たり前のことですが、気づかされたことがあります。
あまり知らない国についてはどうしても情報が少ないためイメージが貧弱になります。
イランで言えば、テロ国家という単純な図式ですね。
さらに極端に言うとイラン人というとみんなテロリストみたいなイメージになってしまいます。
でも当たり前ですが、みんながテロリストっていうわけでは決してない。
日本人だってみんながエコノミックアニマルなわけではないわけです。
みんな着物を着てるわけじゃないんですよね。
いろんな人がいる。
よく考えれば当たり前のことなんですけれど、よく知らないと知っているだけの知識の中でわかりやすい単純な図式にはめ込んでしまう。
レッテルを貼ってしまうわけです。
この映画を観て、単純にイランに住んでいる人もいろいろな考え方をする人がいるんだなと気づいたことがとても大きかった。
自分がイランに住む人たちを、単純な図式にはめ込んでいたことに気づかされました。
知らないことが、イメージが貧弱であるということがそういう単純な図式を生んでしまう。
やはりお互いに知るということが大事なんですよね。
映画というものは知るということに関してはわかりやすく伝えられるのでとても有効な手段だと思う。
主人公マルジは原作者であり監督のマルジャンそのものなんですね。
イラン人である彼女が世界にこのようにイランという国を紹介することは互いに知るということで大変意味があること。
そしてこういう映画が少ないながらも日本で公開されるということもたいへん意義深いと思いました。
まずは知ることから・・・。

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コメント

真紅さん、こんばんは!

原作を読まれたんですね!
映画を観て原作に興味がでたんですけれど、なかなか本屋さんで見かけられなくて、読めてないんです。
アニメーションなので、見知らぬ国のことでもすっと入ってきますよね。
こういう映画を広くいろんな人に観てもらえるといいですよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年4月 3日 (木) 22時44分

はらやんさま、こんにちは。TBをいただきありがとうございました。
ここのところ拙ブログからココログさんへのTBが不調で、お返しができなくて申し訳ありません。
イランといえば「ダルビッシュくん」な私ですが、この映画は原作も読みました。
こういう映画を広く公開して、子どもたちにも観て欲しいなと思いました。
今後ともよろしくお願いいたします。ではでは!

投稿: 真紅 | 2008年3月31日 (月) 08時10分

HIROMIさん、こんにちは!

なかなか遠い国のこと、少ない情報でその国の人を勝手なイメージでとらえていることがあるかもしれないんですよね。
こういう映画を観ると同じように人生を悩みつつ生きているんだなと思って、ひとりの人間として共感できたりしますよね。
こういう映画をもっといろいろ公開してほしいです。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年2月16日 (土) 17時40分

TBありがとうございます。
描かれていたイラン、確かに戦前・戦中の日本に似てましたね。イランについて今までほとんど知らないことにも気づかされたし、息苦しい社会で、自分たちと変わらず悩み多い青春を生きた人の存在にも思いを馳せさせる作品だったと思います。確かに、まずは知ることから、ですね。

投稿: HIROMI | 2008年2月13日 (水) 21時57分

かえるさん、こんばんは!
今年もよろしくお願いします!

僕もイラン人というとかえるさんが書かれていたようなイメージしかありませんでした。
映画は、いろいろ知らないことを気づかせてくれますねー。
イラン映画とか中東の映画というのはあまり観たことがないのですが、最近興味がでてきました。
イスラエルの「迷子の警察音楽隊」もよかったです。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年1月13日 (日) 18時48分

はらやんさん、こんにちは。
今年もよろしくお願いします。
昨年はウタゲにおじゃまさせていただきありがとうございましたー。
イラン映画は大好きで結構観ていましたが、それこの30年の情勢なんて全然知らなかった自分に気づきました。
映画、それもアニメで学べるなんて嬉しいですよね。
日本に来ているイラン人といえば、ひと頃は上野で偽造テレカを売っている・・・ってのが代名詞のようでしたが、そういうのにしても特定の人なんですよね。
ハラキリ、怪獣映画の日本人っていうのも笑えました。

投稿: かえる | 2008年1月13日 (日) 11時40分

とらねこさん、こんにちは!

映画を観た後、パンフレットをみて監督の自叙伝みたいな映画だったのだなと知りました。
映画の中でも描かれていましたが、イラン人であることがヨーロッパで暮らす(多分日本でも)というときに、その人がどんな人であるか以前に色眼鏡で見られてしまうのでしょう。
それはお互いに知らないということから起こるのですよね。
監督がそういうことに怒るわけでなく、諦めるのでもなく、彼女として伝えたいという気持ちが伝わってくる作品でありました。
アニメのテイストも懐かしい感じもあるけれど、スタイリッシュというセンスの良さを感じました。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年1月 5日 (土) 14時00分

はらやんさん、あけましておめでとうございます!

はらやんさんの感想、まさにその通り、と思いながら読ませていただきました。
そうなんですよね、本当、知らない間にレッテルを貼ってる自分に気づきました。
そして、そのためにこの監督さんが、立ち上がったのであろうこともすごく伝わってきました・・・。
イランのこれまでの歴史がまる分かりするばかりでなく、アニメ的なアート作品としても、十分存在感のある作品に仕上がっていること、年もまだ若いこと、すごくマルジを応援したい気持ちでいっぱいになりました。

投稿: とらねこ | 2008年1月 4日 (金) 20時24分

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