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2008年1月27日 (日)

本 「ペンギンの憂鬱」

「天気がよければ気分が良くて、曇れば気分が悪いって誰が決めたんだ」
こういう台詞が「エヴァンゲリオン」にあったような気がします。
とはいえ、北欧でも太陽がでない期間では憂鬱症の人が増えるということを聞いたこともありますので、天気と気分というものは関係があるようなものなのでしょう。

この作品「ペンギンの憂鬱」はウクライナの作家、アンドレイ・クルコフの作品です。
主人公ヴィクトルはキエフに暮らす売れない短編小説家で、新聞の死亡記事を書く仕事もしています。
冒頭に「エヴァンゲリオン」の話を出したのには訳があります。
ヴィクトルがいっしょに暮らしているのが、動物園から譲り受けたペンギンのミーシャ。
「エヴァ」のミサトの家で暮らすペンペンを思い出しちゃったわけです。
そしてこのペンギンのミーシャは故郷や仲間たちと離れて暮らしているからか、憂鬱症を患っています。
舞台となるキエフの街は、冬はとても厳しく、ずっと天気が悪い。
そして世情はソ連が崩壊した後のため、先行きが見えず、街全体が陰鬱となり無気力になっています。
ヴィクトルは日々の仕事は順調に進み暮らすだけの収入があるけれど、なんだかずっと先行きの見えない陰鬱な気持ちが拭えません。
ふとした偶然によりいっしょに暮らすようになった少女ソーニャと、ベビーシッターのニーナがいますが、彼女らと暮らしてちょっと幸せを感じることもあり、また多少イライラすることもあります。
そんなちょっと鬱な気分のアップダウンがとてもよくわかる。
僕もちょっと鬱のようになったことがあるので、そのあたりのゆるやかな気分の上下がとても共感できます。

最近はずっと天気が悪かった。
そのためだかなんだかわからないけれど、ちょっと気分が重かった。
今日はとてもいい天気。
これからちょっと散歩にでも出てみようか。
やはりいい天気は気分がいい。
科学的な根拠があるかどうかは知らないけれど、それは確かだ。

「ペンギンの憂鬱」アンドレイ・クルコフ著 新潮社 ソフトカバー ISBN978-4-10-590041-0

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» アンドレイ・クルコフ「ペンギンの憂鬱」 [お花と読書と散歩、映画も好き]
訳・沼野恭子 ソ連から独立した直後、犯罪が横行しマフィアが暗躍する過渡期の都市キエフ 恋人が去り、独りぼっちになってしまったヴィクトルは、動物園で飼えなくなった皇帝ペンギンをもらってきた ペンギンの名前はミーシャ、憂鬱症らしい ヴィクトルは売れない小説家 ある日「首都報知」という新聞の編集長から仕事の依頼がきた まだ生きている人々の追悼記事「十字架」を書くという仕事 その人たちが死んだ時のためにストックしておくのだという 仕事は順調に進み生活にも落ち着きが見られたのもつかの間 身辺に怪しげな人物が... [続きを読む]

受信: 2010年3月23日 (火) 22時46分

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