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2008年1月19日 (土)

「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」 10代の死生観

10代。
あまり死というものにリアリティのある実感は持てない年頃。
平和を謳歌している日本においては、まだ養ってもらえる年齢なので毎日ダラダラとしていても生きていけるし、親もまだ若い。
死というものをつかみきれていない分、生きているということもリアリティを持って実感もできない。
僕も10代ではそうだった。
今でこそ、死というものに何度か接し、年相応に幾ばくかの死に対する意識や考えはあるけれど、10代で死というものに直面したらどう感じただろうか。

「あたしが悲しくなればなるほど、アイツは強くなるんだよ」
絵理の前に突然出現した謎のチェーンソー男。
エンジン音のうなりとともに攻撃してくるチェーンソー男と絵理は戦う。
絵理は突然の交通事故で両親と弟を失った。
先にあげた絵理の台詞からわかるように、チェンソー男は絵理の心の中の絶望のメタファーだ。
チェンソー男と絵理の戦いは、彼女の心の中での「死にたいと願う心」と「生きたいと願う心」の戦いである。
彼女の心の悲しみが大きくなればなるほど、死への願望が強くなる、それに絵理の生への願望が負けそうになったとき陽介に出会った。

陽介は無為に学生生活をおくっている高校生。
自分自身が生きているという実感がもてない、なんだか焦ったりもするが、だからといって行動を起こすほどこともない。
けれども親友の能登の死に直面する。
彼は何か生き急いでいるように見えた。
生き急いでバイクで事故って死んだ。
陽介には、なんだか能登が何かを達成したような感じがしてならなかった。
生きているのか死んでいるのかわからない、何もビジョンもなくダラダラ生活している自分より、能登の方がほんとに生きているような気がしたのだろう。
ダラダラ生きるより、死に花を咲かせたい。
それは彼の独白から感じられる。
「俺は、最高のエンディングを求めていた」

近しい人の死によって、自らも「死」の世界に行きそうになるのを、ギリギリで「生」の世界に踏みとどまっている絵理。
近しい人の死によって、ダラダラとした「生」の世界から、目的のある「死」の世界に憧れる陽介。
それぞれの「生」と「死」のエッヂに立っている二人が出合い、一緒に戦うことによって彼らは「生」というものを感じる。
陽介は絵理がチェーンソー男と繰り広げるギリギリの戦いを見ることにより、彼女が「生」というものに懸命にすがりつこうとしていることを感じる。
絵理は何もできないながらも自分を助けようとする陽介に「生」への希望を感じる。
「生」にはびっくりするようなハラハラするようなことはない。
けれども絶望ばかりがあるわけでもない。
だったらやはり「生き続ける」ということがカッコいいことなのだろう。
生を実感できず、安易に死を選ぶ若者が多いと言われたりもするが、この映画では今の10代の死生観みたいなものが描かれているような気がします。

市原隼人さん主演「神様のパズル」の記事はこちら→
市原隼人さん主演「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の記事はこちら→

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コメント

シムウナさん、こんにちは!

この記事を書いたとき、薬品を使った自殺が多かったんですよ。
僕自身10代の頃は「死」については正面から考えることもなかったのですが、最近の若い人は安易に「死」を選びすぎているような気がしたので、こんな内容になったのだと思います。
それが最近は自分だけにとどまらず、周りの人の「死」にも無頓着になっているのも気になりますね。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年10月18日 (土) 13時09分

こんばんは、はらやんさん
10代の死生観ですか・・・
10代なんて、はらやんさんの意見と同様に
全く死なんて考えたことないですね。
ただ、身内の不幸があってからは
死生観について考えてしまいました。

誰も若いときに、死について
教えてくれませんからね。

投稿: シムウナ | 2008年10月17日 (金) 20時25分

ノルウェーまだ〜むさん、こんにちは!

昔に比べていろいろな制約がなくなったり、情報も多くなった分、やる気があればなんでもできてしまうところで、かえって若い人はやりたいことが見つからないという悩みがあるのかもしれませんね。
主人公の友達がいろいろ手を出すけれど続かないというのはなんだかそういうのを表しているような気がしました。
でも考えて止まっているよりは動いてみた方が何か見つかりますよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2008年2月16日 (土) 14時20分

こんにちは!
自分の青春時代を考えたら充分、やりたいことやって生きているように見えるのに、そこで鬱々と考えてしまうのが若者なのでしょうかね。
今高校2年の娘を見ていると、そのまんま映画のとおりです。
彼女もチェーンソー男と戦っているのでしょう。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2008年2月13日 (水) 11時49分

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