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2007年12月27日 (木)

本 「TOKYO YEAR ZERO」

イギリス人デイビッド・ピース氏の戦後の東京を舞台にし、実在の連続殺人犯をモチーフにした小説です。
この作品は文藝春秋のプロジェクトで日本と英米が当時刊行されるということです。
今後帝銀事件や下山事件や題材にし、「東京三部作」として発表していくようです。
ピース氏は長く日本に滞在したことがあるということですが、それにしても日本の戦後の描写は外国人だとは思えないほどの丁寧さ。
日本人でもここまで書き込める人は早々いないんではないでしょうか。
もちろん僕もその時代は産まれていなかったわけですが、なまなましいほどのリアル感のある描写に思えました。
黒澤明の「天国と地獄」のスラム街のような猥雑さみたいなものを感じます。

戦後という時代を舞台にした小説には不思議に魅かれます。
そういえば京極夏彦さんの京極堂シリーズなどもそうですね。
戦後というのは明らかに価値観が根底からひっくり返ってしまった時代。
上手に自分の中で価値観を変えられた者、頑に価値観を守った者、さまざまだと思いますが、少なからず自分のアイデンティティを揺さぶられたのでしょう。
そういう不安定感みたいなものが戦後という時代に魅かれる理由かもしれません。
この本の登場人物もみな戦中、戦後の価値感のギャップに苦しみます。
章毎の冒頭にある独白みたいなものはギャップに苦しみ精神失調に陥った者のつぶやきです。
これが誰かであるということが、この小説の大きな謎になります。
重く沈鬱としていますし、独特な叙述の仕方がとても読みづらくもありますが、この読みづらさ自身もこの小説の謎に大きく関与しています。
我慢して最後まで読むと、謎がはっきりとし、作者の構成力の高さに感心してしまいます。
ミステリーファンにはお薦めです。

「TOKYO YEAR ZERO」デイヴィッド・ピース著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-326420-2

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