本 「百器徒然袋ー風」
京極堂シリーズの一作で、前作「百器徒然袋ー雨」に続き、いつの間にか榎木津探偵の”下僕”となってしまった本島の語りの中編集になります。
京極堂シリーズは何人も魅力的なキャラクターが登場しますが、僕の最も好きな登場人物は名探偵榎木津礼二郎ですね。
この人物の無茶苦茶さ、破天荒さが何ともいえず好きなのです。
破天荒なキャラクターというのは、いろいろな物語に登場するキャラクターの形容詞として使われますが、榎木津はちょっと次元が違う。
まさに次元が違うのだ。
突拍子もない、脈絡がない、つかみ所がない、人とまったく会話が噛み合ない。
馬鹿なわけではない、たぶん頭はいい。
榎木津探偵は事件を解決するわけではない、事件を壊滅させてしまうのだ。
その無茶苦茶振りに、榎木津の”下僕”となってしまった本島、益田、寅吉が彼に翻弄されるように、読んでる僕自身も翻弄される。
なんだかそれが心地よい。
たぶん著者の京極さんも好きなんではないかなあ、榎木津探偵が登場する場面は筆がノっているような気がします。
だんだん榎木津の破天荒さがどんどんエスカレートしている気がします(楽しいのだけれど)。
小説の榎木津に慣れてしまったから映画の「魍魎の匣」の榎木津はもの足りなく感じたのかなあ。
阿部寛さんはキャスティングはぴったりだと思うんですけどね。
「トリック」の上田教授以上に「変な人」だといいんですけれど。
「待たせたな!僕だ!榎木津礼二郎だ!」
と阿部さんに叫んで欲しい。
「百器徒然袋ー風」京極夏彦著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-275862-8
| 固定リンク
コメント