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2007年12月 2日 (日)

「ホワイトアウト」主人公の行動の動機付けが大切

先週「ミッドナイトイーグル」を観ましたが、とかく比較される「ホワイトアウト」を久しぶりに観賞しました。
やはり断然こちらの方がおもしろいです。

この二つの作品の共通点としては雪山でのアクション映画であること、主人公が軍人や警官ではなく民間人であることです。
日本を舞台にこのようなアクション映画(特に敵がテロ組織のような場合)で民間人を主人公にするのは難しい。
日本は他の国とは違い、普段の生活でほとんど危険もありませんし(最近はそうも言ってられないですが)、また兵役などもないわけで、命の危険にさらされるようなこともあるかもしれないなんてことは考えていない人ばかりでしょう(かくいう僕も)。
ですので、民間人がアクション映画のような危険なシチュエーションに放りこまれたとしてもおろおろするばかりというのが予想されるわけです。
そのため、日本を舞台にしたアクション映画で危険な事件にあえて民間人の主人公が踏み込んでいくには、物語上納得性の高い理由が用意されていないとリアリティがもてません。
このリアリティというのは、主人公がそのような行動をとる上での動機付けがなされているかどうかということです(日本国内でそんな簡単にテロなんてできるわけないじゃないというようなリアリティではありません)。
「ホワイトアウト」においてはそれがきちんと描かれています。
冒頭のシーン、遭難者の救出作業をしている時に、主人公富樫は親友である吉岡を不可抗力ながら助けを呼びにいくために置き去りにしてしまいます。
救難作業は及ばずに吉岡は死亡してしまい、富樫は親友を救いきれなかったという思いに苛まれます。
自分はあのとき逃げ出してしまったのではないかという思い。
そのような自分の中に背負い込んでしまった心の十字架のようなものが、彼が事件に巻き込まれた時に命をかけるほどの動機になります。
巧みに「ダイ・ハード」的な逃げ出したくても逃げ出せない状況というのを用意している物理的な設定も効いているかと思います。
けれどもいくつかあった逃げ出せる場面においても、先に書いたような動機付けにより富樫はあえて危険の中に踏み込んでいきます。
それは他者を救うという行為でもありますが、またそれは自分をも救う行為なのです。
この状況を逃げ出したとして命を拾ったとしても、彼にとってその先の人生はただ悔やむだけのものになってしまい、それはほぼ死んでいるというのと同じだということが、彼には直感的に分かっている。
このような富樫の感情というのはとてもリアリティがあるため、物語が描かれる状況がリアリティがなかったとしても、観ている側にとっては荒唐無稽な感じはしないのです。

翻って「ミッドナイトイーグル」をみてみると、主人公西崎があえてあのような危険なシチュエーションに自ら飛び込んでいくという感情の動きにリアリティがないように思えます。
功名のためでもないでしょうし、スクープを狙う後輩を助けるというのも弱すぎます。
また日本を守るためというのも一民間人にとっていうと荷が重いわけで、普通は自衛隊の方にお願いしますというのが自然でしょう。
シチュエーション的にもいつでも逃げ出せる状況であるわけなので、動機が薄弱だとますますリアリティ欠如に陥っていきます。
「ミッドナイトイーグル」の冒頭の中東らしき場所での爆撃シーンが、「ホワイトアウト」の富樫のトラウマと同じようなつもりなのかもしれませんが、これは全く違うと思います。
富樫の事件は自分が主体となっていますが、西崎の立場はあくまでも傍観者です。
このあたりが民間人があえて命をかけるほどのシチュエーションに入っていくことへの納得性の差になっているのでしょう。

二作品を観てみてこれらが同じ脚本家であるというのがとても不思議です。
これは原作の差かもしれません。
真保裕一さんの初期の作品群(小役人シリーズともいわれる)では一度自分自身が逃げ出したことによる後悔を背負っている主人公というのがよく出てきます。
これらは僕たちも生きていくなかで、多かれ少なかれ経験することであり、これが真保さんの小説が共感性が高い理由かも知れません。

「ミッドナイトイーグル」の記事はこちら→

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コメント

私は『ホワイトアウト』は未見なのです。でも両者の違いがよく分かりました。

映画でも、ありえない設定が許されるものとそうじゃないものがあります。この手のジャンルはあまり許されなさそうですよね^^;
なのでそれが続いちゃうとかなり うーん・・・・ って思っちゃう(笑
だって主人公達は映画が終わるまでに、雪山でも東京でも全員死んでてもいいくらいのシチュエーションですからね。。。 ^^;

投稿: rose_chocolat | 2007年12月 6日 (木) 08時16分

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