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2007年12月25日 (火)

本 「ラビリンス・ドール」

菊地秀行氏のライフワークとも言える「魔界都市」シリーズの一冊。
今まで他のキャラクターが主人公を務めるストーリーに登場していたサブキャラクター”人形娘”が初めて主人公となった作品です。
本作は”人形娘”が探偵役となり、魔界都市<新宿>で発生する事件を解決するというミステリー仕立てとなっています。
魔界都市<新宿>でミステリーというアイデアはおもしろい。
何せこの街に棲む怪しい住人たちは、液体人間、ガス人間、ドッペルゲンガー(二重存在)など特殊能力を持つ人間ばかり。
彼らに対しては”密室”というものは成立しない。
液体人間やガス人間はほんの少しの隙間から侵入することができるし、ドッペルゲンガーに対してはアリバイなどというものは役に立たないわけなのです。

そもそもミステリーのトリックはある種の制約があるからこそ、成立するもの。
密室であったり、時間的な制約だったりそういうものですね。
制約がなくて何でもありという状態では、不可能な犯罪というものが存在しなくなってしまう。
一見不可能な犯罪だからこそ、その謎を解くのがミステリーの醍醐味なのだから。
もちろん人間が隙間から部屋に侵入することができないとか、違う場所に存在することはできないといのは、人間である限りもっている制約なのでわざわざ説明する必要はないので、普通のミステリーはこういう常識の上に成り立っています。
時折そういう制約をとっぱらったミステリーも存在します。
アイザック・アシモフの「鋼鉄都市」などもその一つ。
けれどもこの作品でもある種の制約を作品の中で作っている。
有名なロボット三原則というのがそれですが、その原則を越えて犯罪がいかに起こったのかというのを解くのがこの作品の魅力であります。

さて本作「ラビリンス・ドール」では、人間を越えた人間が登場する<新宿>という街でどのようにミステリーを成立させているのか、それがポイントになります。
果たしてそれが成功しているかというと、あまりうまくいっているようには思えません。
「魔界都市」なりの制約を設定していればもうすこしミステリーの醍醐味が味わえるかと思うのですが、結局いつもの「魔界都市」のアクションものになっています。
それはそれで悪くはないのですが、狙い所はおもしろかったのでちょっと残念なところでありました。

「ラビリンス・ドール」菊地秀行著 祥伝社 新書 ISBN978-4-396-20837-0

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