本 「生物と無生物のあいだ」
こちらは新書としてかなり売れた本のようですが、確かに知的ワクワク感が楽しめる内容となっています。
この本で最初に提示される疑問が「生命とは何か?生物と無生物を分け隔てているものは何なのか?」というものです。
まず考えられるのが、「自己複製をするもの」。
これはこれでそうかもしれないという答えなのですが、これだとウィルスなども入ってきます。
最近流行っているインフルエンザなどもそうですが、これらのウィルスは他の生命に細胞に自らの遺伝子を注入し、細胞のシステムを利用して自分を増やす。
ただウィルスの模式図をご覧になったことある人はわかるかもしれませんが、これらは無機的でとても生物のようには見えない。
自己増殖をして増えるのですけれど、それは機械的な感じがする。
人間をはじめ生物は一見いつまでも同じように見えるけれども実は中身は変わっている。
食べ物をたべそれらを吸収して、それらは細胞となる。
古い細胞は分解される。
その繰り返しを行っているためで、数ヶ月前の自分とは原子レベルでは同じものではなくなっているのだ。
なんでこんなことが必要なのか。
わざわざ自分の細胞を壊さず、それを動かすためのエネルギーだけを取り入れた方が効率がいいのではないのか。
けれどもそうはなっていない。
いつまでも壊れず働く細胞などはありえない。
なぜならエントロピーの法則があるから。
これは秩序あるものは無秩序に向かうという法則です。
その法則を超えるために生命というのはとてもユニークなアプローチをとっています。
細胞が勝手に壊れる前に、計画的に壊し、計画的に新しい細胞を作る。
これがそのアプローチです。
そのため細胞自体はすべて数ヶ月で入れ替わりますが、生命しての個体は持続できる。
いくら堅牢な仕組みであってもエントロピーの法則がある限り必ず壊れる。
壊し作る。
これを動的均衡と呼ぶのです。
作者はこれが生物の生物たるゆえんではないかと言っています。
生命の仕組みというのはとても洗練されていて、なんだかとてもワクワクしてしまいました。
自分の身体がそんなすばらしい仕組みで動いているというのはなんとも不思議です。
こういう仕組みを生み出した自然というのはなんともすばらしいと思ってしまいました。
知的ワクワク感がお望みの方にはお薦めの本です。
「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著 講談社 新書 ISBN978-4-06-149891-4
| 固定リンク
コメント