「逃亡者おりん」 制作者の心意気、天晴れ
2006年にテレビ東京系でオンエアされていた時代劇です。
ゴールデンタイムで放送されるテレビ東京としては6年振りだったようです。
オンエア時どこかでポスターを見たり、また話題になっているという記事を読んで気にはなっていたのですが、今年の夏にCSで放送されたのを録画してやっと見終えました。
時は江戸時代9代将軍家重の時代、主人公おりんは手鎖人(てぐさりにん)という将軍家を守る暗殺集団に属していたが、手鎖人の首魁である植村道悦に自分が騙され暗殺をしていたことに気づき、また死んだと聞いた娘おさきが生きていることを知り、手鎖人を抜け「逃亡者(のがれもの)」となり、追っ手を振り切りつつ、娘に会うために旅を続けるというストーリー。
話題になっていたのは、おりん役の主演のクールビューティーな面持ちの青山倫子さんが、追っ手との立ち回りのときにレオタード風の忍者装束になるところでしたね。
まさにB級の忍者ムービーのくノ一忍者のイメージそのまま。
時代劇なのにレオタード?と思ったりすると、もうこのドラマは見れません。
この作品には今までの時代劇のフォーマットがいくつもつぎ込まれています。
まさにてんこ盛り。
旅をしながらその地で事件に巻き込まれるという展開は「水戸黄門」だし、闇の暗殺集団、そして抜け人というのは「影の軍団」、毎回出てくる追っ手の手鎖人は幾多の忍者時代劇を彷彿とさせます。
毎回のエピソードも昔ながらの人情ものですし、おりんが出会う人が彼女を助けて手鎖人に殺され、おりんが復讐するというのも時代劇の典型的なフォーマット。
見方を変えると今までの時代劇の要素をパクっているようにも見えますが、これは確信犯でしょう。
たぶん時代劇好きなファンが「見たい」という要素をすべてつぎ込んだという感じがしました。
けれども22回に及ぶ放送回数なので、シリーズ全体を貫く謎なども用意されていて、これらが後半にいくにつれ次第に明らかになっていき毎回観ようとするヒキになっています。
この謎がまたベタな伏線だったりするのですが、やはりほんとにベタかどうか確かめてみたくて気になって観てしまいます。
全体的には大味な作りで安っぽいところもたくさんあるので途中で観るのを何度もやめようかと思ったのですが、全体を貫く仕掛けが気になって結局最後まで観てしまいました。
このあたりのシリーズ構成などがしっかりできていたのではないでしょうか。
ラストはけっこうひねっていましたけれどね。
また、テレビ東京と侮るなかれ、けっこう毎回出てくるゲストがもの凄いメンバーです。
小林稔侍、長門裕之、田村亮、遠藤憲一など、「おお、こんな人まで出ているのか!」と思う錚々たる方がたくさん出ています。
テレビ東京の気合いの入れ方が伝わります。
アクションもJACが入っているためか、東映の特撮番組のようなスピーディで立体的な立ち回り。
主演の青山倫子さんは当初はまったく動きがぎこちなかったですが、最後の方はけっこう殺陣も決まってきたように思えました。
総じてベタで大味な作品ではありますが、ここまで時代劇の様々な要素を突っ込んで、時代劇ファンが観てみたいという理想の時代劇に仕上げたという制作者の心意気はなかなか天晴かと思います。
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