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2007年12月24日 (月)

本 「情報と国家 -収集・分析・評価の落とし穴-」

戦争や紛争などが起こるとニュースなどでお見かけする軍事評論家江畑謙介氏の本です。
軍事において情報戦略が大事だというのは言わずもがなのこと。
そして軍事面だけではなく、民間のマーケティング活動においても、情報戦略は大切なことになります。
この本では軍事の話をしていますが、普段の企業活動においても参考になることがあります。
そもそもマーケティングの世界で使われる戦略・戦術などという言葉も元々軍事用語ですし、軍事からマーケティングにおける洞察を得ることもあるわけです。

現代において軍事においても、マーケティングにおいても情報戦略が雌雄を決するというのは誰も否定しないでしょう。
では情報戦略とは何なのか?
江畑氏が指摘するのが、「情報」という言葉の意味。
まず英語の「データ」という意味合い。
これは細かく分かれた個々の現象や定量的な特性のことになります。
また「インフォーメーション」という言葉もありますが、こちらは事実情報に加え概念も含む場合があります。
日本語で「情報」というとこれらの意味合いで使われることが多い。
つまり情報戦略というと、データをいかに集めるかということに終始してしまうことが多いのです。
けれども英語では「インテリジェンス」という言葉も使う。
これらはただの「インフォーメーション」を分析、評価された上での情報になります。
その際に「インフォーメーション」から洞察(インサイト)する能力というのが大事になります。
マーケティングにおいて、まだ慣れないマーケターはデータを収集することで満足してしまうことが多い。
ただデータは集めただけはだめで、それらを何かしらの評価をしなくてはいけない。
そうでないと「使えない情報」になってしまうわけです。
最近は消費者分析においても、ただのデモグラフィックな数字の分析だけではなく、消費者の購買心理に踏み込んだ「消費者インサイト」の分析なども行うこともありますが、これらは「インテリジェンス」化がマーケティングの世界にも進んできたということでしょう。
ただし評価する上での危険性もこの本では指摘しています。
とりあげているのはイラク戦争や北朝鮮の軍事活動の評価について。
ご存知の通り、イラク戦争では大量破壊兵器をイラクが保有しているとしてアメリカが攻撃を始めたことが発端です。
けれども戦争終結後も大量破壊兵器は発見されませんでした。
これはアメリカが情報評価の落とし穴に落ちてしまったために起こったことです。
ただのインフォーメーションを分析する際は、ただ闇雲に行うわけにはいかない。
ある種の仮説を元に分析しなくてはいけません。
イラク戦争でいえば「イラクは大量破壊兵器を持っている」という仮説です。
ただこれは仮説であって事実ではない。
情報評価をするにあたっては、もともとの仮説を固めるために行うものですが、これらが違うとなった場合には仮説を考え直す柔軟性が必要になります。
そうでないと事実ではない仮説を固めるだけの情報収集になってしまうからです。
アメリカは諸処の事情に因り「イラクは大量破壊兵器を持っている」と思い込んでしまった。
そのために情報評価の落とし穴に落ちてしまったのです。
これはマーケティング活動においても同様です。
少し慣れたマーケターが陥るのは、自分がやりたいことそのためだけのデータ収集を行い、分析を行いがちなこと。
思い込みが深くなり、広い視野で冷静に客観的に評価ができなくなってしまう。
これはアメリカがイラク戦争の際に落ちた穴といっしょです。

「情報」とは集めるだけではだめであり、また硬直した視点だけで評価してもいけない。
仮説を持ちつつも柔軟な目線で俯瞰的に情報を評価する。
戦争においても、マーケティングにおいてもこの姿勢こそが大事なのだと思います。

「情報と国家 -収集・分析・評価の落とし穴-」江畑謙介著 講談社 新書 ISBN4-06-149739-1

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