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2007年11月10日 (土)

「EX MACHINA エクスマキナ」 不気味の谷 

「不気味の谷」という言葉がある。
これはロボット工学で言われている概念で、ロボットなどの対象に対して人間の感情的反応を表す言葉です。
機械的なロボット(例えば産業ロボット、例えばガンダムみたいなロボットでもいい)に対する人間の感情的反応(親近感)は低い。
それがしだいに人間らしい外見であったり、仕草をもつロボットになると、人間は親近感を持ちます(HONDAのASIMOなんかはそうだと思う)。
けれどもある程度以上人間に近すぎると、人は親近感ではなく奇妙さを感じ、嫌悪感を抱くようになります。
これは「ブレードランナー」のレプリカントとか、「エイリアン」のアンドロイドなんかをイメージするとわかりやすいでしょう。
この親近感から一転して嫌悪感につながる感情的反応を「不気味の谷」というのです。

前に「ベクシル」の記事のとき3Dライブアニメーションが、実写とアニメーションの狭間にあり、何故あの映画があのような手法をとらなくてはいけないのかという疑問を書きました。
今回「EX MACINA」を観て思ったのは、そういうことを書いた背景には、「アップルシード」の時よりもさらにリアルになった「ベクシル」の3Dアニメーションの質感に対して、自分の中に嫌悪感があったのではないかと思いいたりました。
「EX MACINA」は観ていて「ベクシル」を観たときほどの奇妙さは感じなかったのです。
「ベクシル」は「アップルシード」のプロデューサーである曽利文彦氏が監督、本作は「アップルシード」の監督である荒牧伸志氏が監督しています。
いわば同じ母親を持つ兄弟みたいな作品であるわけで、キャラクターデザインもそれぞれ「アップルシード」を受け継いでいます(「EX MACINA」は受け継いでいてあたりまえだが)。
それぞれ進化した技術を使っているわけで、改めて3作のパンフを見比べると、今年の2作は当然のことながら「アップルシード」の時よりも映像のクオリティはあがっています。
けれども僕にとっては「ベクシル」は奇妙さがあり、「EX MACINA」はそれほどの違和感は感じなかったのです。
何故なんでしょう?
「EX MACINA」と「ベクシル」の間に先に書いたような(僕の感覚においての)「不気味の谷」があったのではないかと思います。
「EX MACINA」はあくまでアニメーションの範疇にあるように思えました。
これは3Dになっていてアクションはモーションキャプチャーでリアルだったとしても、キャラクター造形が眼がぱっちりと大きく、足もすらりと長いデフォルメされたものだったためだと思います。
けれども「ベクシル」はリアルさを追いかけた(顔の造形はなるべくリアルな人に近づけようとしているように思える)故かアニメーションなのか実写なのかどうも位置づけしにくい、まさに「不気味の谷」に陥っていたように思えます。

ここまで書いてきて。これはまさに「アップルシード」から「EX MACINA」、「ベクシル」に至るまでのテーマなような気がしてきました。
「アップルシード」「EX MACINA」では、人間のDNAから作り感情を抑制したバイオロイド、人間と機械を融合したサイボーグが登場します。
「ベクシル」においても、あの世界の日本人は人間であり機械であるようなものになっています。
見た目はまるで人間であっても、いやそれゆえにバイオロイドに対しては人間は奇妙な感じを受けてしまう。
そこに「不気味の谷」はある。
外見はまるで機械であるブリアレオスは人間らしく感じてしまう。
それはなんなのだろうか。
「不気味の谷」について考えるということは、人間というのは何なのかということを考えることなのかもしれない。

「ベクシル」のような違和感を感じなかったためか、本作の方がストーリーには楽しめました。
映像技術的には「EX MACINA」の方が粗があったように思えましたが、リアルさというのをどこまで追うかというのはこの分野においてはとても微妙で難しい点ですね。

本作はジョン・ウーがプロデュース。
2丁拳銃、鳩、スローモーションとアニメーションになってもジョン・ウー印は刻まれていましたね。

「ベクシル -2077 日本鎖国-」の記事はこちら→

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コメント

ノラネコさん、こんばんは!

そうなんですよね、3Dアニメというのは、リアルさをどの程度まで表現するかという塩梅がむずかしいですよね。
僕はこの作品はギリギリOKで、「ベクシル」だとちょっとダメという感じでした。
この感覚は人によっても違うでしょうね。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年11月18日 (日) 17時43分

たいむさん、こんばんは!

そうなんですよねー。
「ベクシル」の時に書いたのですが、どうもテクノロジーありきのような感じも受けてしまって。
実写となると予算のことがでてきてしまうと思うのですが、それなら普通のアニメでもいいのではと思ってしまいます。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年11月18日 (日) 16時58分

kenkoさん、こんにちは!

「ベクシル」と[EX MACHINA」はほんとに微妙な差ですよね。
この分野は今後はこの匙加減がポイントになってくる気がします。
「不気味の谷」は前に瀬名秀明さんの小説で読んだことがあったのですが、ふとこの映画を観ていてそれを思い出しだしました。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年11月17日 (土) 08時49分

相変わらず気持ち悪かったですね。
日本製セルアニメをそのまま3D化するというコンセプトは別に悪くないのですが、どうもこの手のキャラと3Dは相性が悪いとしか思えず、ちょっと苦手です。
まあ二次元をよくあれだけ上手く3D造形したと、その点は感心しますが・・・

投稿: ノラネコ | 2007年11月13日 (火) 00時14分

はらやんさん、こんばんは。
まだ『不気味の谷』問題を解決できる段階にに至っていませんね。
アニメなのに、なぜそこまで3D制作こだわるのか、私にはちょっと疑問です。
今のCGやVFXの技術なら、実写でいいじゃん、って思うのは私だけでしょうか?

投稿: たいむ | 2007年11月12日 (月) 23時31分

こんばんは~はらやんさん☆

私もベクシルでは不気味さを感じてしまったのですが
エクスマキナはOKでした。
この3Dライブアニメという分野ではまだ今の段階では
いわゆるアニメキャラ的な表現をする方が
合ってるのかもなと思いました。
ほんとにものすごく僅かな差なんですけどねー(笑)
しかしそこで「不気味の谷」について考え、
さらに「人間とは何か」まで考えていくはらやんさんは
哲学的でステキです♪

ところで毎度のことではありますが、ココログ同士なのに
TBなかなか反映されないみたいっす(泣)
はらやんさんのはちゃんと届いてるんですが…

投稿: kenko | 2007年11月12日 (月) 00時13分

メビウスさん、こんばんは!

僕も「ベクシル」は違和感を感じたのですが、「EX MACHINA 」はOKでした。
ほんのちょっとの差なんですけど。
この3Dアニメは、リアルさの加減が難しいですね。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年11月11日 (日) 18時51分

くまんちゅうさん、こんにちは!

なるべく人間と同じようにとリアルさを追いかけたCGは、現状の技術では表情に人間じゃない違和感というのが感じられるますよね。
その違和感が「不気味の谷」のように思えました。
「イノセンス」などはそのあたりをうまく回避していますよね。

投稿: はらやん(管理人) | 2007年11月11日 (日) 16時45分

はらやんさんこんばんわ♪TB有難うございました♪

『エクスマキナ』はまだアニメとして楽しめましたが、『べクシル』はリアルの追求を求めたのか、アニメとして観るにもちょっとした違和感を感じたのは否めませんでした。べクシルを観ると映像技術の目覚しい発展に驚く反面、近い将来映画に生身の人間がいらなくなるんじゃ・・・という変な危機感も感じてしまいますねぇ~。

投稿: メビウス | 2007年11月11日 (日) 14時19分

TB有難うございました。

不気味の谷ですか、なるほどその通りですね、この作品見てても人間キャラの表情とか違和感有ったのもその所為でしょうか?(意味が違う?)
終始ブリのサイボーグに親近感を覚えてました。
「ベクシル」でもそうでしたが、人間キャラと非人間キャラの見分けがつかないのも難点でした、CGで作られると人間に見えないのが問題でしょうか?「イノセンス」のような手書き風のキャラの方が感情移入しやすかったです。

投稿: くまんちゅう | 2007年11月11日 (日) 12時44分

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