「キャプテン」 「キャプテン」で描かれるリーダーシップとは
ちばあきおさんの漫画「キャプテン」の映画化作品です。
僕は原作漫画というより、アニメの記憶の方が強いですね。
確か最初はスペシャル版(それからシリーズ化)だったと思いますが、これをテレビで観て、感動してとても泣いたことを覚えています。
今回の映画は、アニメのスペシャル版と同じく、谷口キャプテン篇の内容でした。
驚くほどアニメと同じ内容でした。
これは良い意味でです。
昔の漫画やアニメを、現在映画化(特に実写映画化)する場合、どうしても現代的にアレンジします。
当然、風俗や環境、ライフスタイルが変わっているので、そうしないと観る側が物語世界に入っていきにくくなるためでしょう。
この映画「キャプテン」は今現在という設定になっていますが、そこで描かれいているテーマ自体は、僕が中学生の頃観て泣いたものと全く変わっていません。
正直観る前は、今の時代、一般的に「スポ根もの」に分類されるこの作品をどのように映画化し、それが作品としてどう見えるのかというのはわかりませんでした。
「根性」とか「努力」とかいうものが、ドライな現代にどう見えるのだろうかという危惧がありました。
とても古くさいものに見えるのではないかと。
先日会社で、リーダーシップ研修なるものがありました。
そこでは部下を育て、組織目標を達成するために求められるリーダーシップ論的なものを学ぶのですが、学者がまとめている理論みたいなものは、すべてこの「キャプテン」という映画の中に入っているなと思いました。
いくつか目指すべきリーダーシップがあったのですが例をあげるとこんなのがあります。
・リーダーは自らチャレンジングな目標・ビジョンを提示し、部下に納得させ、自分も率先垂範して行動をひきださなくてはいけない。
他の選手が二回戦突破を目標にしている中、谷口くんは青葉学院に勝つという目標(弱小野球部にとっては十分すぎるぐらいチャレンジング)を提示し、それだけでなく自分の行動を見せながら、結果的に部員を自発的に動かすということを行っていました。
「自分でできないことをみんなにやらせるわけにはいかないんだ!」
と言い、谷口くんは雨の中猛特訓をします。
口だけでチャレンジングな目標を立て、自分ではなにもしない上司というのは世の中にいます。
目標を達成させるには、それを部下の腹に入れさせ(そのために説明もし、自分で率先垂範をする)、動かなさなくてはいけません。
それをどうやったら人が動くかということを、谷口くんはたぶん頭でなくて心でわかっていたのでしょう。
あと重要なのは、この谷口くんの姿を後輩たちが観ていたこと。
特に次のキャプテンとなる丸井、イガラシ(原作では丸井のあとのキャプテン)にとって、彼らの理想のキャプテン像が谷口くんという具体的な人物としてイメージできたことが大きい。
彼らはこれからそのイメージをベースにし、自分の個性を加えたリーダーとなっていくのでしょう(原作ではそうなっている)。
組織論的にもその組織のDNAをいかにつないでいくのかというは重要な問題で、当然マニュアル化などの方法もありますが、やはり影響力が大きいのは人の関係でつないでいく、文章にできないエッセンスみたいなものです。
それを谷口くんは丸井、イガラシにつないでいっているように思えます。
こうみると「キャプテン」という作品は、単なる「スポ根もの」に分類されるべきものではないとわかります。
「巨人の星」などの「スポ根」で求められていることは「勝利」。
「キャプテン」はもちろん「勝利」もテーマのうちでしょうが、それにいたるまでの「過程」や「成長」がより強いテーマになっていると思います。
高度成長期やバブル時などイケイケのときは「勝利」が一番の優先目標だったでしょうが、今の時代は違います。
一人勝ちでは、世の中も地球全体(ちょっと大げさですが)もうまくいかない。
みんながそれぞれ、自分たちらしく「成長」することができないといけない。
そう考えると、この作品はテーマとしては観る前に懸念していたような古くささはまったくなく、それどころか今現代において、タイムリーなテーマでがあるなと思いました。
原作の内容と変更されていないのは、それだけ普遍的なテーマを描いているということでしょうね。
念のために。
今までつらつらと書いてきたことだけ読むと堅苦しい映画に思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
これらは僕があとで深読みした感想です。
映画自体は朴訥な印象(若い出演者の演技は上手ではなかったですがそれはそれでいい意味効いている)で、登場人物たちの物事への一生懸命さ、マジメさに、素直に心を動かされます。
ストーリーはほぼ知っていましたが、ほぼ最初の方から泣きっぱなしでした。
もしかすると厳しい社会の中でもまれている社会人のほうが、この映画を観て泣けるかもしれません。
イガラシ役をやっていた子が、すごくアニメのイメージに近くて驚きました。
ちょっと斜に構えているところとか、顔とか声も似ていたような感じがします。
ぴったりのキャスティングでした。
最後にアニメ版の主題歌が挿入曲で使われていたのがとても嬉しかったですね。
アニメを観て感動した時の気持ちが甦りました。
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コメント
夕さん、こんばんは!
リーダーもいろいろなタイプがあるかと思います。
本作の谷口は自分がまずやって、それをみなに見せるというタイプですね。
その姿に心を動かされチームがまとまっていく。
「キャプテン」という作品は谷口、丸井、イガラシと違ったタイプの人間がキャプテンという立場になるというのを描いていますが、それぞれやはり個性があって違ったキャプテン像なんですよね。
自分らしいというをどこに見つけるかというのが、まずはリーダーのすべきことなのかもしれません。
投稿: はらやん | 2012年4月 5日 (木) 20時25分
古い記事に通りすがりですみません
私にもこの日記のような出来事があり、ふと「キャプテン」を思い出しました。
誰よりも嫌われ役で、誰よりも努力して、信念を決して曲げてはいけない
そう思うとアニメのエンディングが頭の中で流れて来て、上司の背中を見ては泣けてきます(笑)
失礼しました
投稿: 夕 | 2012年4月 5日 (木) 19時18分
通りすがりさん>
ご指摘ありがとうございました。
お恥ずかしい限りです。
修正させていただきました。
投稿: はらやん(管理人) | 2007年9月 5日 (水) 18時59分
>いがらしみきおさんの漫画「キャプテン」
ちばあきお ですね。
投稿: 通りすがり | 2007年9月 5日 (水) 14時00分