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2007年7月28日 (土)

本 「剣闘士スパルタクス」

好きな作家の一人、佐藤賢一さんの作品です。
題名通り、ローマ時代、剣闘士であったスパルタクスの反乱を題材にした作品です。
佐藤さんはフランス史の題材を扱ったものが多かったですが、最近は本作とか「カポネ」とか別の時代のものをよく書かれていますね。

剣闘士はご存知の通り、闘技場でローマ人の観客の前で闘わされる戦士です。
彼らはローマが征服した地域から連れてきた身体能力が高い若者で、闘うために鍛え上げられた戦士です。
けれども彼らは奴隷の身分であり、自由は与えられませんでした。
スパルタクスらは剣闘士養成所から脱走し、各地から集まった奴隷たちを吸収して膨れ上がり、イタリア国中を席巻しました。
結局彼らはクラッススらに討たれてしまい、反乱は潰えます。

この小説のスパルタクスは類いまれなる戦闘力と美貌を持つ戦士として描かれます。
闘えばローマ人に剣闘士として賞賛されるものの、その身分は奴隷であり、ローマ人は彼を人としては扱いません。
そのような不満は剣闘士たちの間でも膨れ、結果反乱につながり、その頭目としてスパルタクスは担ぎだされます。
スパルタクス自身も奴隷の身分に不満はもっていた。
けれどもリーダーとなると自ずと皆に対する責任が生じます。
反乱したはいいが、どうするのか。
故郷に戻るのか、ローマを征服するのか。
さまざまな出自を含む反乱軍はまとまりません。
皆はまとまろうともせず、その役割をスパルタクスのみに求めます。
スパルタクスは、何かが違うと思います。
自由を求めて戦いはじめたのに、不自由になっている。
ただ闘うことだけを考えてよければよかった剣闘士の時の方が自由ではなかったかと。

けっこうこういうことは会社などではありますよね。
僕もデザインが好きでそういう仕事につきましたが、経験も積んでそれなりにキャリアもあがっていくと好きなことだけしていればいいというものではなくなります。
リーダーみたいな役割を与えられ、いわゆるマネージメントをしなくてはいけないのですよね。
それはそれでおもしろかったりもするのですが、会社員としてのマネージメント(面倒くさいことも多い)をやらずに自分がやりたいことだけやっている人もいる。
リーダーだからと僕はやりますが、同じようなステージなのにやらない人を苛立たしくも思ったりしますし、そんな風に気にしないのもうらやましくも思ったりもします。
やるべきことはわかってる。
でも自分のやりたいことはなんだろうなあと思ったりもします。

スパルタクスは、結局闘うというところに自分自身を見つけます。
ローマという巨人と戦い果てるとしても、闘い抜くと決心をします。
ローマ人に闘ってみせろと叫ぶスパルタクスは迷いがなくなったようで、うらやましいとも思えました。

「剣闘士スパルタクス」 佐藤賢一著 中央公論新社 文庫 ISBN978-4-12-204852-2

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