「アビエイター」 自分だけの遊び場を荒らされた子供
最近の「ディパーテッド」、「ブラッド・ダイヤモンド」で、なかなか侮りがたい演技力を見せてくれて、僕の中では一気に評価があがったレオナルド・ディカプリオ。
「ディパーテッド」と同様マーチン・スコセッシ監督と組んだ本作もなかなかいいという評判だったのでDVDで観賞しました。
ディカプリオが演じているのは、実在の人物ハワード・ヒューズ。
アメリカの富豪であり、映画関係、航空関係で名を馳せた人物ということは知っていましたが、それ以外はほとんど知識がありませんでした。
評判通りディカプリオの演技は良かったです。
凄みがあったというか。
特に後半のヒューズが精神的に追い込まれ強迫性障害の症状が出て苦しんでいるところはかなりの迫真の演技だったと思います。
公聴会のシーンは、昔写真で観たことがあるハワード・ヒューズその人のような印象すら持ちました。
すばらしいです。
本作で描かれているハワード・ヒューズは、世界には自分というものしかないと思っている人物という印象を受けました。
自分以外は、人でさえも周囲の環境と同じ、自分ではない異物という感覚。
世間で人と接し、そこで何かイヤなことがあると、彼は汚いものを洗い流すように遮二無二手を洗う。
自分の思う通りにいっている間はいいですが、そうでなくなったとき周りのものは汚らわしいものになってしまう。
自分のやりたいこと自由にやる環境が、彼にはあった。
まずはお金。
両親の莫大な遺産のおかげで、彼は映画や飛行機など自分のやりたいことにお金をそれこそ無尽蔵につぎ込むことができました。
普通はやりたいことがあっても、制約(お金や環境など)があり、あきらめたり工夫をしたりしなくてはいけなくなり、そこで世間や自分と他者との関係性を理解するのだと思いますが、彼にはそういう状況はなかった。
もうひとつは両親がいなかったこと。
子供が成長していき大人になる時、少なからず自分らしい生き方が親の希望とそぐわないことは多かれ少なかれあるかと思います。
そこの軋轢を経て、人はいろいろ学ぶと思うのですが、彼はそれも経験することがなかったんですよね。
いわば子供の感覚で、そのまま大人になってしまった人物。
対するパンナム社の社長トリップは、大人になってしまった人物でした。
社の利益のためになら、えげつないこともわかった上で平気でできる男です。
夢見がちで利益を度外視して費用をつぎ込んでしまうヒューズが、パンナムにかなわなかったのはいたしかたないというところはあるかもしれません。
そのパンナムも今は姿を消してしまっているのは、歴史の皮肉でしょうか。
恋人に去られ、手段を選ばぬ大人に遊び場を蹂躙されたヒューズにとって、世の中すべてのものは自分を害そうとしているものだらけに見えたのでしょうか。
映画としては、長過ぎますね。
中盤のヒューズが壊れてしまうところはディカプリオの迫真の演技もあり引き込まれましたが、前半の映画がらみのエピソードは冗長で退屈してしまいましたし、最後の公聴会もだらだらと長い感じを受けました。
もう少しメリハリをつけたすっきりとテンポよく観れるのではと思いました。
レオナルド・ディカプリオ主演、マーチン・スコセッシ監督作品「ディパーテッド」の記事はこちら→
マーティン・スコセッシ監督作品「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」の記事はこちら→| 固定リンク
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コメント
なつおさん、おはようございます。
精神的には孤独なヒューズが追い込まれて壊れていく様を描きたいのか、稀代の成功者ヒューズを描きたいのかがちょっとあいまいでボリュームが多かった気がしますね。
公聴会でのヒューズに関しての偏見は、最近のIT長者への手のひら返しの非難と同じようなものを感じました。出過ぎる杭は打たれるということでしょうか。
映像に関しては十分見応えありましたねー。
投稿: はらやん(管理人) | 2007年7月 7日 (土) 06時38分
はじめまして。
「アビエイター」随分前に観たのですが。
>前半の映画がらみのエピソードは冗長で退屈してしまいましたし、最後の公聴会もだらだらと長い感じを受けました。
これ、僕はまったく逆でした。
ヒューズが壊れて、同じセリフを延々と繰り返すシーンはうつってしまいそうで「はやく、やめてくんないかなー」と思ってみてました。
一方、ラストの公聴会ですが、僕はこの映画はハワード・ヒューズという人に対する偏見がベースに作られているのではないかと思いました。製作者が偏見を持って作っているという意味ではなく
ハワード・ヒューズという労せずして大金持ちになったぼんぼん(それも男前の)に対する世間の人間の偏見というのがベースになっていた気がします。
それが、この公聴会のシーンで、僕もまあ「有罪になるんだろうなあ」と、思って観ていたのですが
ヒューズの「あのさあ、俺べつに悪いことやって無いんだけど?なんか、悪いことやったみたいな雰囲気に皆なってるけどさあ、その悪いことっていうのを1つでも証拠をあげて言ってみろよ」というようなセリフで、ハッとなりました。「たしかに、こいつ何も悪いことしてねーわ。なんか、悪いことしたみたいな雰囲気になってたけど」と、気付いたのです。そう気付いた時の、もしこれが現実だったら、と思い、「あぶねー、俺、冤罪じゃん」という驚きは今でも覚えています。
ヒューズは悪いことやってそう。でもやってない(かもしれない)。僕にとっては「アビエイター」は、そういう映画です。
あとは飛行機で飛ぶシーンは最高でした。
金も名声も女も、何もかも持っているはずなのに、なんで命をかけてテストパイロットなんてやってんだ、この男は。というつっこみどころ満載の限界飛行がおもしろかったです。
そして迫真の墜落シーン。
コックピットが火を吹いて、「早く逃げろ!」という、観客の心の声援を背にうけたディカプリオが、ガラスを手で押すと炎で熱せられていて「あっちっち!」みたいな、コントチックなシーンも含めて迫真のパニック・シーンでした。走ってきて助けてくれる、通りすがりの人も良かった。
投稿: なつお | 2007年7月 2日 (月) 04時15分